2021 Fiscal Year Annual Research Report
異相界面における疲労破壊のエンブリオ形成メカニズムの解明
Project/Area Number |
20H02024
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
下川 智嗣 金沢大学, 機械工学系, 教授 (40361977)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新山 友暁 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (00583858)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 粒界 / 疲労強度 / 分子動力学 / 繰返し変形 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は原子シミュレーションを用いて世界最大規模の繰返し荷重下における「異相界面」と「固執すべり帯(PSB) を構成する転位」 の相互作用シミュ レーションを実施し,異相界面での転位の侵入・分解・通過の重畳現象により生じる疲労破壊のエンブリオ (核形成の起点) の形成機構を解明することである. 2021年度は,まず2021年度に引き続きナノ組織材料の疲労現象メカニズムを検討するために,原子シミュレーションを用いて予め転位組織を導入した双結晶モデルに対して繰返し変形を実施し,転位組織の発展に対する粒界の影響を調査し,また転位組織の発展がナノ組織材の力学特性に与える影響について調査を行った. まず,粒界が転位の吸収サイトとして機能することで粒内転位密度を減少させることが明らかとなった.さらに,結晶粒径の大きさに伴い繰り返し変形中の転位組織は変化していき,粒径が大きいほど大きな張り出し長さが実現できる転位組織へと構造が遷移して小さな繰り返し荷重においても転位組織が大きく変化できることを示した. この繰り返し変形中の転位と粒界の相互作用に起因して粒界の自由体積が大きくなり,繰り返し変形後の引張変形において粒界から転位が放出されやすくなり,降伏応力が減少することが確認できた.更には,異相界面に侵入した転位の反応を調べるために,フェライトとセメンタイト相の積層組織に対して界面領域に非晶質相を導入した.非晶質相が存在すると侵入した転位芯構造が緩和され,転位が異相界面を通過する抵抗が上昇することを見出した.このことは,異相界面構造と侵入した転位芯構造の相互作用が繰り返し変形下における転位蓄積に影響を与えていることを示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
異相界面と転位の相互作用に対する界面構造依存性が明らかになりつつあり,異相界面における転位組織構築のシミュレーションが実施できる状況になりつつある.
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Strategy for Future Research Activity |
異相界面と転位集団における繰返し変形を実施し,界面近傍で生じる転位の反応を詳細に調べる.このとき,界面転位密度を変化させたり,界面に非晶質相を導入することで,繰り返し変形下における異相界面と転位の相互作用に対する界面構造依存性を調べる.このときの界面構造変化や転位蓄積が界面破壊に及ぼす影響を明らかにする.
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