2021 Fiscal Year Annual Research Report
粒子試料支持体への応用に向けたカーボンナノチューブヤモリテープ強力接着機構の実現
Project/Area Number |
20H02029
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
平原 佳織 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (40422795)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / 接着 / ヤモリテープ / 衝撃吸収特性 / 高速接触 / 粒子捕集 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに、配向カーボンナノチューブ(CNT)の衝撃吸収特性が高速衝突するステンレス(SUS)球の接着(捕捉)可否を決める支配的要素であることを示してきた。今年度は衝突時の配向CNTの変形に着目し、引き続き衝突時の接着特性評価を行った。結果として、衝突速度3~5m/s、直径1mmのSUS球が配向CNTに捕捉された(接着した)ときには、衝突痕周囲に形成される円周状亀裂の形状に特徴があることがわかった。配向CNT中では隣接CNT同士が互いに接触しネットワーク構造をなすが、配向CNTにおける亀裂進展ではこのCNT-CNT接点が順に外れていく。形態制御した配向CNTを作製し、配向CNTの衝撃吸収が亀裂(CNT-CNT接点の脱離)によるエネルギー散逸に由来することを裏付けた。また、この円周状亀裂は、同程度の衝突速度であれば捕集・反発時で径はほぼ同じだが、反発時には衝突痕周囲に等方的に形成され、捕集時には非対称な形状になった。配向CNTへSUS棒を押し込みながら変形過程を電子顕微鏡観察した結果、亀裂の発生位置と発生時の押し込み深さに相関があり、非対称な亀裂進展が生じたときには、等方的な亀裂発生時に比べて配向CNT全体がより大きく圧縮されてから亀裂が生じることが分かった。このような亀裂発生直前までの配向CNTの変形量の違いも衝突エネルギー散逸の程度に影響することが示唆され、より効率的に高速衝突粒子を接着させられる配向CNT構造をデザインする指針となり得る知見を得た。 また、配向CNTの形態の影響をマイクロ・ナノスケールで調べるために、マイクロ球試料を電子顕微鏡内でCNTに高速衝突させ、被着体-CNT間の接着界面を観察しながら接着力を計測する実験系を構築した。 さらに、本課題で開発した配向CNTを、はやぶさ2Phase2高知において粒子状固体の固定に用い、地球外試料高精度解析に寄与した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
配向CNTに対して、SUS球を衝突させたり、ピエゾアクチュエータで被着体を高速変位させることによる接着試験に対しては、順調に進展している。小さな粒子を接着させる際には配向CNTの接着面に局所的に荷重が負荷され、負荷-無負荷領域の界面近傍での亀裂発生の仕方が接着特性に影響することが示された。これは、従来の、大きな平板による一様な圧縮負荷がかかる系から得られた知見を元に研究計画を立案した段階では予測していなかったが、これを詳細に調べていくことが粒子を効率よく接着させられる方法の確立に繋がると考え、従来計画していたパラメータ(埋め込み量の大きさやひずみ速度)に加えてこれについて詳細な検討を行った。 また、配向CNTの動体接着メカニズムをより詳細に理解するために、今年度には電子顕微鏡内で衝突試験と同等の条件で被着体を高速移動させる機構を有したマニピュレータの製作を計画していたが、電子顕微鏡装置本体の故障のため、高額の修理費が生じたことから、マニピュレータを新しく製作する代わりに、既有のマニピュレータを改造して用いることを検討した。試料ステージ部の配置などの改良、外部電源を増設するなどした結果、走査プローブ顕微鏡用カンチレバー探針を高速で変形させ、その先端に取り付けた粒子1個を衝突させられる機構を構築することができた。これにより当初計画していた通りの仕様ではなく、観察条件に制約は生じるものの、目標とする観察は最低限のレベルで行える状態とした。実際に、電子顕微鏡中で配向CNTに対して高速でプローブ先端を衝突させて引き剥がした過程を観察できることを確認し、ゆっくり押しつけたときと接着力が大きく異なる結果を得ている。この機構を用いて、最終年度である次年度には、高速での接触におけるマイクロ・ナノスケールの接着機構の理解に資する研究を発展させていくことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では、CNTヤモリテープを粒子状固体に対して効率よく強固な接着を実現するために高速での接触による接着機構を提案してきたが、これまでの研究でこれが有用である実証されつつある。配向CNTを用いたマクロな系での経験則的知見は十分得られつつあるが、この接着機構およびそれに対するCNTの構造との関係を十分に理解するための実験・解析を今後行い、本研究課題を総括する。昨年度までに手法を検討してきた電子顕微鏡内での高速接着過程の動的観察を実際に行うことにより、マイクロ・ナノスケール界面での現象を詳細に理解する。また、配向CNT中のCNT凝集形態、接着時のCNTの圧縮変形やひずみ速度が衝突エネルギー散逸に及ぼす影響などについても、引き続き調べていく。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] Multiscale characterization of the Asuka 12169 meteorite; rehearsal of Hayabusa2 returned sample analysis2021
Author(s)
M. Uesugi, M. Ito, N. Tomioka, N. Imae, A. Yamaguchi, M. Kimura, N. Shirai, T. Ohigashi, M-C. Liu, R.C Greenwood, K. Uesugi, A. Nakato, K. Yogata, H. Yuzawa, Y. Kodama, M. Yasutake, K. Hirahara, A. Takeuchi, I. Sakurai, I. Okada, Y. Karouji, T. Yada, M. Abe
Organizer
The 12th Symposium on Polar Science
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[Presentation] Hayabusa2 Returned Samples: Unique and Pristine Record of Solar System Materials from Asteroid Ryugu2021
Author(s)
M. Ito, N. Tomioka, M. Uesugi, A. Yamaguchi, N. Imae, N. Shirai, T. Ohigashi, M. Kimura, M-C, Liu, R.C. Greenwood, K. Uesugi, A. Nakato, K. Yogata, H. Yuzawa, Y. Kodama, A. Tsuchiyama, M. Yasutake, R. Findlay, I.A. Franchi, J.A. Malley, K.A. McCain, N. Matsuda, K.D. McKeegan, K. Hirahara, A. Takeuchi, et al.
Organizer
The 53rd Lunar and Planetary Science Conference (LPSC 2022)
Int'l Joint Research
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[Presentation] The C-type asteroid Ryugu: A first detailed look by Phase2 Curation Kochi (Ph2K)2021
Author(s)
M. Ito, N. Tomioka, M. Uesugi, A. Yamaguchi, N. Imae, N. Shirai, T. Ohigashi, M. Kimura, M-C. Liu, R.C Greenwood, K. Uesugi, A. Nakato, K. Yogata, H. Yuzawa, Y. Kodama, M. Yasutake, R. Findlay, I.A. Franchi, Malley J., K. Hirahara, A. Tsuchiyama et al.
Organizer
Hayabusa symposium 2021
Int'l Joint Research
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