2020 Fiscal Year Annual Research Report
金属組織制御の新学理に基づく短パルスレーザ誘起圧力波支援高速レーザ溶接法の開発
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20H02048
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐野 智一 大阪大学, 工学研究科, 教授 (30314371)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | レーザ溶接 / 短パルスレーザ誘起圧力波 / 結晶粒微細化 / 力学特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、金属組織を作り込むときに通常考慮される「温度場」だけでなく、これまで無視出来るほど小さかった「圧力場」を新たに取り入れることによって、これまでに無い新しい金属組織制御法の基盤となる新しい学理を構築する。具体的には、液相から凝固が開始する際に圧力を印加し微細な凝固組織を形成する学理(新学理A)と、固相に衝撃波を印加し通常の塑性変形では考慮されない転位生成を陽に考慮し効率的に塑性変形を誘起する学理(新学理B)である。本研究の目的は、この新しい学理を基に、ナノ秒レーザ誘起圧力波とフェムト秒レーザ誘起衝撃波を「圧力場」として利用することによって、割れの無い高強度な溶接継手を実現する新しい高速レーザ溶接法を開発することである。 2020年度は新学理Aに基づき、レーザ溶接中に溶接部近傍にナノ秒レーザを照射し、ナノ秒レーザ誘起圧力波によって溶接金属の組織を微細化することによって高強度化するプロセスを実施した。溶接用レーザとして波長1070 nm、最大出力1.0 kW、M^2 1.1のシングルモードファイバーレーザを、圧力波を誘起するために波長1064 nm、パルス幅10 ns、最大パルスエネルギー420 mJのナノ秒レーザを用いた。材料として、A2024アルミニウム合金(T3処理、板厚3.175 mm)を用いた。パルスレーザを溶融池中央に照射した条件で結晶粒微細化効果が最も顕著に表れた。結晶粒微細化領域は固液界面に沿って半円状に生成され、A2024のビード縦断面観察結果では微細化領域は固液界面に沿って深さ1 mm程度まで存在していた。またその結果、硬さが4 HV程度増加し、引張試験において0.2%耐力が増加することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、レーザ溶接中に溶融池近傍に短パルスレーザを照射することによって凝固組織の結晶粒微細化と力学特性向上を達成することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、2020年度に実施したプロセスの高度化を図るため、短パルスレーザ照射条件の最適化を試みる。溶接用レーザとして波長1070 nm、最大出力1.0 kW、M^2 1.1のシングルモードファイバーレーザを、圧力波を誘起するために波長1064 nm、パルス幅10 ns、最大パルスエネルギー420 mJのナノ秒レーザを用いる。ナノ秒レーザのパルスエネルギーを変化させ、パルスエネルギーが結晶粒微細化とそれに起因する力学特性変化に及ぼす影響を調べる。材料として、A2024アルミニウム合金(T3処理、板厚3.175 mm)と、結晶粒微細化の機構回目のため工業用純アルミニウムA1050の2種類を用いる。金属組織観察(光学顕微鏡、走査電子顕微鏡、透過電子顕微鏡)、力学特性(硬さ、残留応力、引張強さ)を調べる。
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Research Products
(7 results)