2021 Fiscal Year Annual Research Report
nanostructuring on semiconductor surface for optical management by high-pressure hydrogen plasma
Project/Area Number |
20H02049
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大参 宏昌 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (00335382)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | シリコン / プラズマ / 水素 / ナノ構造 / 太陽電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は、省Si資源/高効率な薄型c-Si太陽電池の製造・普及に向け、廉価・無毒な水素ガスからなる高圧プラズマを用い、波長200~1100 nmの入射光に対して無反射と光閉じ込めを実現する機能性ナノ構造を廉価・低環境負荷に創成する加工プロセスの学理を構築することにある。本年度は、昨年度得られた成果に基づき、ナノコーン形成メカニズムの解明に向け、シリコン結晶面方位依存性、圧力、ならびに雰囲気中に混入させる不純物が、シリコン表面形態に与える影響を明らかにした。とりわけ、ナノコーン形成のトリガーとなる要因を探るため、プロセス雰囲気に酸素、水、ならびに酸素をごく微量添加し、ナノコーン形成挙動との相関を調べた。その結果、不純物供給量が、水素に対して1万分の1以下の場合、ナノコーンは形成されず、樹状の多孔体が得られることが分かった。また、添加不純物を窒素のみとした場合には、いずれの不純物濃度においてもナノコーンは出現しないものの、窒素不純物混入量が500分の1を超えると柱状(直径<高さ)のナノ構造体が顕著に出現することが分かった。一方、水蒸気、および酸素のみを加えた場合、先端が先鋭化された比較的広い裾をもつ構造体(直径>高さ)が多数得られたが、アスペクト比の高い構造(直径<高さ)を得ることができないことが明らかとなった。そこで、水の供給量を一定として窒素不純物の供給量を変化させ、ナノ構造の形成を試みたところ、窒素+水を同時供給することで、ナノコーン構造の形成が可能になることを見出した。また、ナノ構造が形成されたシリコン試料を、不純物を含まない水素雰囲気に暴露すると、一旦形成されたナノ構造体は消失することを確認した。このことから、ナノコーン形成機構では、窒化酸化物がマスクとして作用することで、シリコンナノコーン構造体の形成が可能となっていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、ナノコーン創成メカニズムに関わる重要な因子として、数百分の一レベルで混在する不純物が表面構造に大きな影響を与えることを見出すことができた。また、研究により明らかになった事実として、単一の不純物ではなく、酸化種と窒化種を同時に供給する必要があることを明らかにできた点は、ナノコーン形成を極めて再現性良く実現する上で重要な情報を取得したこととなり、今後の研究進捗と普遍的なメカニズムの構築に向けた貢献が期待できる。 また、本年度実施した結晶方位依存性の解明から、ナノコーン形成挙動に面方位依存性は少なからず存在し、得られるナノコーン構造の高さに影響を与えることが明らかになったものの、加工時間を長時間化することで、ナノコーン構造の高さが飽和することを利用して、種々の面方位を有する多結晶シリコンに対しても本手法を適用することが可能であることを実証した。この得られた多結晶シリコン基板において1%未満の拡散反射率が得られており、概ね当初の予定通り成果を挙げることに成功している。また、プロセス圧力が200Torrと、プラズマ中粒子の平均自由行程を短縮化してしまう極めて高い圧力であっても、ナノコーン形状が出現することを新たに発見している。以上、他のブラックシリコンに関する先行研究と比べても極めてユニークなメカニズム、かつ特性に優れる表面構造が得られていることが明らかになりつつあり、以上の観点から本研究の進捗状況は、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の実績から、ナノコーン構造の創成には、加工雰囲気中に窒化種と酸化種の同時供給が必要であることが明らかとなった。この同時必要性の理由を探るべく、シリコン窒化膜、ならびにシリコン酸化膜の水素プラズマによるエッチング特性を明らかにする。また、本高密度水素プラズマプロセスでは、表面に入射するイオンエネルギーの効果により、中性の水素ラジカルだけでは加工されにくい酸化膜、窒化膜が、エッチングされるプロセスを想定しており、入射エネルギーがエッチング特性に与える効果を明らかにする。このため、これまで作製した微小ラングミュアプローブを用いて、電子密度、電子温度、ならびにプラズマポテンシャルを明らかにする。 また、太陽電池への応用のため、加工対象とするSi基板のドーパントタイプ、Si試料表面の曲率がナノ構造創成挙動に与える影響を解明する。ここでは、近赤外域における表面反射率の低減を狙い、面方位に依存した異方性エッチングによりマイクロピラミッドを形成した後、その表面へのナノコーン形成を試みる。このハイブリッド構造を実現することで、200nmから1100nmに亘る波長域において、反射率が1%以下となる表面を実現する。 さらには、太陽電池デバイス作製工程での高温プロセスを想定したナノコーン形状の耐熱性を明らかにする。ここでは、ドーパントの活性化プロセス等を想定し、700℃以上のアニールに対して、形成したナノコーン構造の挙動を観察する。ナノコーン構造中には、少なからず水素誘起欠陥が含まれることが想定されるが、これら欠陥の熱アニールによる挙動についてもTEM観察等で明らかにする。 得られたハイブリッド構造表面をもつシリコン太陽電池を作製し、その発電特性に与える影響を明らかにする。
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