2021 Fiscal Year Annual Research Report
流動が誘起する液晶圧電効果のメカニズム解明と発電デバイスの開発
Project/Area Number |
20H02059
|
Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
蝶野 成臣 高知工科大学, システム工学群, 教授 (20155328)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻 知宏 高知工科大学, システム工学群, 教授 (60309721)
西脇 永敏 高知工科大学, 環境理工学群, 教授 (30237763)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 液晶 / 圧電特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ひずみを与えると電気が発生する圧電効果は固体特有の現象として広く知られており、既に着火装置等に実用化されている。一方、液晶は棒状または円盤状の分子からなり、弾性率が低い柔らかい物質「ソフトマター」である。液晶は巨視的には通常の液体のように振る舞うが、微視的には結晶の異方性を有しているので、結晶と同様、圧電効果を発現する可能性がある。もしそうであるなら、潤滑しながら発電する軸受け、発電床のように踏圧を電気に変換するデバイス、さらには如何様な間隙にも形状適合して発電する無定形デバイスを開発できる。しかしながら液晶の圧電効果については未知の部分が多い。 本研究は数値計算と実験によって液晶の圧電効果の発現メカニズムを解明し、それに基づいて効果的な圧電条件を見出すこと、さらに、ひずみを高い効率で電荷に変換できる新規な液晶を化学合成することで、高電荷量の発電現象に資する基盤技術の創出を目指す。 2021年度は、二重円筒装置を製作した。二重円筒は、外径5mmの内筒と内径6mmの外筒(石英ガラス管)を同心状に組み合わせた構成で、外筒を固定して内筒をモータで回転させて、円筒間の液晶にせん断を印加する仕組みとなっている。円筒の広範囲を同時観察できるよう、広視野角レンズを備えたカメラを設置した。電位差測定のために、両円筒の表面にはスパッタリング装置で電極(ITOターゲット)を蒸着した。 また、XYステージで外筒を水平方向に微小変位させ内筒に対して偏心させることで、せん断ひずみと伸長ひずみを同時に印加できる工夫を施した。これにより、せん断と伸長の印加割合をコントロールできる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二重円筒実験装置を完成した。モータ回転数を変えることで、液晶に印加するせん断速度を広範に変化させることができた。また、せん断印加時の分子配向の様子を詳細に観察できることを確認した。 従って、ほぼ研究計画通りに進捗している。
|
Strategy for Future Research Activity |
壁面の分子の配向が系全体の配向状態を決定するので、この配向角を変化させながら実験を行う。具体的には、配向膜ポリイミドをスピンコータで塗膜し焼成した後、その膜面を布で擦るラビング処理を施して分子を所定の方向に配向させる。ポリイミドの種類によって分子の傾き角が変わり、とくに界面活性剤の一種を用いれば垂直配向(壁面に対して分子が立った状態)となる。 回転速度を広範囲に変化させて、欠陥発生を偏光観察し、同時に円筒間に発生する電位差をナノボルトメータで測定する。とりわけ、欠陥発生と電位差との同時性について詳細に調査し、動的圧電効果を最大化する回転速度と壁面の分子の配向角を提案する。 連続体理論(Leslie-Ericksen理論)を用いて、粘弾性係数と発生せん断力の関係を数値計算によって調べる。L-E理論には、液晶分子の姿勢に依存する粘弾性係数が9個(粘性係数6個と弾性定数3個)ある。これらの中で、圧電特性に支配的なものを見出すことにより、圧電特性に優れた新規液晶の合成を行う。
|
Research Products
(6 results)