2020 Fiscal Year Annual Research Report
高Oh液滴の固体面衝突直後に発生するsplashの相似則構築とメカニズム解明
Project/Area Number |
20H02061
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡部 正夫 北海道大学, 工学研究院, 教授 (30274484)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 一道 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (80453140)
藤井 宏之 北海道大学, 工学研究院, 助教 (00632580)
真田 俊之 静岡大学, 工学部, 准教授 (50403978)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 液滴衝突 / 液膜流れ / 接触線移動 / 不安定製現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,「高Oh液滴の固体面衝突直後に発生するcorona splashとprompt splashの発生条件を明らかにし,二つのsplashの発生メカニズムを説明する理論モデルを構築すること」である.研究代表者は「高Oh液滴のsplash発生メカニズムは低Oh液滴とは大きく異なる」ことを学術的創造性の高い仮説として設定した.研究代表者らが開発した,低圧力環境下の高速液滴衝突 (50m/s程度) の実現が可能な,他に類を見ない独自性の高い高速液滴衝突実験装置を活用して高Oh液滴の衝突実験を行い,力学的作用を明らかにし,上記仮説を検討し,corona splashとprompt splashの発生メカニズムについて考察する.この目的を達成するために,本年度は以下の2項目について研究を行った. 1.液滴が個体面への衝突直後に発生するwetting failureを観察した.異なる接触角を有する固体表面を用いて,液滴衝突直後の高速液膜流れの不安定性を観察した.衝突直後の液膜速度が衝突速度の関数として記述されることを見出し,液膜速度と接触角によって液膜流れの不安定性が記述されることを明らかにし,wetting failureが発生することを確認した. 2.減圧チャンバ内で粗い固体表面への高速液滴衝突を観察した.固体表面粗さの効果を検討するために,減圧チャンバ内での固体表面への高速液滴衝突を観察した.減圧チャンバ内で高速で上方に射出された衝突板を,自由落下する液滴に衝突させることにより,平滑表面および粗い固体表面において,corona splashとprompt splashの発生閾値を検討し,速度と周囲気体圧力をパラメータとして発生閾値マップを作成し,splash発生に及ぼす表面粗さの効果を検討した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症対策のため,北海道大学の行動指針レベル3の期間(約40日間)は実験室を完全に閉鎖し,レベル2の期間(約120日間)は週に1~2日程度,レベル3の期間(約120日間)は週に3~4日程度のみ,本事業推進のため実験室を使用することが可能であり,非常に大きな時間的制約の中で,実験と解析を行った.しかしながら,実験室使用時間が限られていたため,本年度の到達目標としていた高Oh液滴衝突におけるsplash発生条件を決定するための計測システムを構築するまでには到達できなかった.そのため,次年度に事業を継続し,時間的制約のために未達であった課題を解決する. 本年度は,以下の2項目について研究を行った.それぞれの研究項目について得られた本年の重要な成果を以下に示す. 1.液滴が個体面への衝突直後に発生するwetting failureを観察した.異なる濡れ性を有する固体表面を用いて,液滴衝突直後に発生するejecta sheetの不安定性とその後のsplash発生を検討し,Coxらの理論解析と実験結果とを比較した.splash発生条件はこれまでの提示されたK値で整理することが可能であることを発見した.また,これまでに観察されたことのなかった液滴衝突直後に発生するwetting failureを確認した. 2.減圧チャンバ内で粗い固体表面への高速液滴衝突を観察した.固体表面粗さの効果を検討するために,減圧チャンバ内での固体表面への高速液滴衝突を観察した.滑らかな表面ではcorona splashとprompt splashが同時に観察されることがあるのに対し,粗い表面では,どちらか一方のsplashのみが観察されることを見出した.減圧するに従って閾値衝突速度は単調に減少することを確認した.
|
Strategy for Future Research Activity |
前述した目的を達成するために今年度に引き続いてcorona splashとprompt splashの発生メカニズムについて考察する. 1.減圧雰囲気中で固体表面に高速滴衝する高Oh液滴の観察:今年度未達であった高Oh液滴衝突実験を行うために,高速corona splash観察実験装置を改良する.高Oh液滴衝突におけるsplash発生条件を決定するために,シリコンオイルを用いて実験を行う.シリンジポンプにより高粘性液体を送液し,高Oh液滴の高速衝突過程を超高速度カメラを用いて観察し,高Oh液滴のsplash発生条件を探索する. 2.液滴が個体面への衝突直後に発生するwetting failureの観察:昨年度から引き続いて光学系・光源を抜本的に再検討することにより,十分なコントラストを有する接触線近傍の気液界面画像を得る.さらに,衝突板の表面化学組成をプラズマを用いて変化させるとともに.ガラスより表面組成が単純であるシリコンラバー等の高分子を用いて衝突実験を行い,固体表面の表面エネルギー・液膜進展速度・接触角等とsplash発生との関係を考察する. 3.高速度カラー光干渉計による気液界面計測システムによる観察:大気中で自由落下し固体表面に衝突する液滴の固体面衝突直前に,固体表面と液滴との間に形成される薄空気膜はsplash発生に大きな影響を与える.この薄空気膜厚さの空間分布の時間変化がOh数にどのように依存するかを検討する. 4.分子気体論による高速液膜先端近傍の気体流れ場の解析とcorona splash 発生機構の解明:数値解析手法を用いて,気液界面に働く気体による応力分布,流れ場に及ぼす気液界面および気固界面でのすべりの寄与を定量的に評価する.さらに,液膜進展の不安定現象に及ぼす気液間相互作用を考察し,高Oh液滴のcorona splash発生メカニズムを検討する.
|
Research Products
(3 results)