2021 Fiscal Year Annual Research Report
Toward Lab-in-a-drop: Contactless droplet manipulation by acoustic field
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20H02070
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
長谷川 浩司 工学院大学, 工学部, 准教授 (90647918)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 非接触流体マニピュレーション / 音場浮遊法 / 液滴 / Lab-in-a-drop / 混相流 / 非線形ダイナミクス / 混合 / 蒸発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、音場浮遊液滴に生じる流動、熱・物質輸送現象ならびに浮遊液滴の安定制御条件の解明のために現象の支配的パラメータを同定し、複数プロセスの連続的操作を可能とすることを目指す。すなわち、Lab-in-a-dropの実現に向けた音響場による非接触流体マニピュレーションの概念実証を行うことを目的とする。 本年度は、非接触マニピュレーションの核心的操作となる液滴の浮遊から蒸発に至るプロセスを統合に取り組んだ。特に、「浮遊~混合」プロセスの詳細可視化計測を通じてその詳細を明らかにした。「浮遊~混合」プロセスの時間スケールが~十秒程度の時間スケールの減少である一方、混合後の「反応~蒸発」プロセスは~千秒程度となる時間スケールの現象となる。そこで、液滴の長時間に及ぶ浮遊安定性を担保するよう実験装置を改良するとともに、単成分液滴、多成分液滴、懸濁液滴などを対象に実験を行った。具体的には液滴の初期サイズ、印可音圧、周囲温度などをパラメータに系統的に調査した。同時に、既存の拡散律速の液滴蒸発モデルの予測結果と実験結果を比較することで現象理解を図った。単成分液滴、多成分液滴に対する実験結果はモデルで良好に予測することができた一方、懸濁液滴の場合には、既存モデルの限界が明らかとなった。そこで、懸濁液滴界面付近での拡散過程を考慮し、既存モデルの修正を行った。その結果、修正モデルを用いることで懸濁液滴の蒸発過程を良好に予測可能であることを実証した。 得られた成果については、2021年度は9件の学会発表を行い、2報の原著論文が出版もしくは出版決定となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で対象とする、①「各種プロセスの安定制御条件の検証」、②「同種液滴を用いた「浮遊~蒸発」のプロセス統合」、③「異種液滴を用いた「浮遊~蒸発」とのプロセス実証と統合」、④「非接触流体マニピュレーションの数値解析」について、これまでに当初計画通りに①および②を遂行している。 ①については、これまでに単成分や多成分系液滴のみならず、塩化ナトリウム水溶液のような水分の蒸発後に析出した溶質試料の浮遊および安定保持条件を特定した。特に大粒径液滴の場合には最大1時間程度の液滴の安定保持に成功している。さらに、2021年度には、液滴の長時間に及ぶ浮遊安定性を更に向上させるために実験装置を改良した結果、多岐に渡るサンプルを対象に長時間安定浮遊を達成した。 ②については、上述のように非接触マニピュレーションの核心的操作となる液滴の浮遊から蒸発に至るプロセスも同種液滴に対しては統合できることを確認した。特に、「浮遊~混合」プロセスについては、新規可視化手法によって液滴の合体から混合に至る過程を高時空間分解能で計測することに成功している。また蒸発プロセスに対しては、懸濁液滴界面付近での拡散過程を考慮することで蒸発モデルの修正を行った。その結果、懸濁液滴の蒸発過程を良好に予測可能であることを実証した。 以上より、本研究課題の現在までの達成度は、「おおむね順調に進展している」に該当すると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
Lab-in-a-dropの実現には、複数の液滴の浮遊・輸送・合体・混合・反応・蒸発といった、液滴の動的な現象を精緻に制御する必要がある。そのため本研究では、①「各種プロセスの安定制御条件の検証」、②「同種液滴を用いた「浮遊~蒸発」のプロセス統合」、③「異種液滴を用いた「浮遊~蒸発」とのプロセス実証と統合」、④「非接触流体マニピュレーションの数値解析」の4点を対象として、非接触流体マニピュレーション実現のための概念実証および浮遊液滴に生じる現象の統合的な物理解明に取り組んでいく。 2022度以降は、上記③に相当する異種液滴の浮遊から蒸発に至るプロセス統合に着手する。課題は同種液滴の場合と同様に、「浮遊~混合」までの時間スケールが~数十秒程度であるのに対して、「蒸発」は~千秒程度となる時間スケールの差である。加えて、異種流体の組み合わせに起因する表面張力の分布が生じることに代表されるような時空間的ダイナミクスが現象をより複雑に、液滴制御をより難化させる一方で、より応用を見据えた現実的なケースを取り扱うことになる。 既に着手している、実験では特定が極めて困難な物理量を推定するための数値解析(上述の④に相当)も継続および発展させる。具体的には連成する物理現象を数値解析可能なCOMSOL Multiphysicsを駆使することで音響場と流動場の時空間発展を明らかにする。数値解析を通じて液滴界面に生じる圧力分布などの情報を基に実験へフィードバックを試みる。実験と数値解析のいずれも駆使した相補的なアプローチによって、効果的かつ系統的にプロセス全般における液滴の安定浮遊条件を明らかにする。
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