2020 Fiscal Year Annual Research Report
革新的再生医療のための細胞の動力学モデルに基づく力学環境の制御
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20H02099
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
白石 俊彦 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (30361877)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 機械力学・制御 / 振動学 / 細胞のダイナミクス / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨芽細胞に対する機械的振動の影響において,増殖では12.5 Hz,分化では50 Hzが促進効果最大であること,それらの波形を重ね合わせたものが増殖および分化を両立しうることを確認し,その適応的応答現象をモデル化したが,さらにこの振動数依存的な機械的振動刺激の感知メカニズムについて,細胞の力学センサとして細胞をばね・質量系でモデル化しうるかを検証した.これらの振動数で細胞が共振状態にあるかを検証するために,細胞核に注目し,機械的振動下で蛍光標識した細胞核の挙動を蛍光顕微鏡用の高速度・高感度カメラで観察した.観察実験では,測定精度向上のために,加振器の振動絶縁や実験装置部品の軽量高剛性化などの実験装置の工夫を施した.細胞核を弾性体とすれば,弾性モードが現れ,細胞核が弾性変形することで内部のDNAの空間的位置関係が変化し,増殖や分化に影響を及ぼす可能性がある.また,細胞核を剛体としばね要素としてのF-actinなどに支持されているとすれば,剛体モードが現れ,細胞核が剛体変位することで細胞核に直接的および間接的に結合しているF-actinやLINC複合体,焦点接着斑のタンパク質群に変動する力が作用することになり,増殖や分化に影響を及ぼす可能性がある.振動数12.5~100 Hz,加速度振幅0.25~2 Gにおける観察実験の結果,細胞核に弾性変形および剛体変位がともに生じることを示した.一方で,細胞核の弾性変形および剛体変位の加速度振幅および振動数の依存性は明確に示されなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に計画していた,機械的振動に対する骨芽細胞の適応的応答現象のモデル化を検討し,さらに機械的振動刺激の感知メカニズムについて,細胞の力学センサとして細胞をばね・質量系でモデル化しうるかの検証を達成できたため.
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Strategy for Future Research Activity |
振動数12.5~100 Hz,加速度振幅0.25~2 Gにおける観察実験の結果,細胞核に弾性変形および剛体変位がともに生じることを示したが,細胞核の弾性変形および剛体変位の加速度振幅および振動数の依存性は明確に示されなかった.これらをさらに検討するために,さらなる実験装置の改善を行う,試行回数を増やして統計的有意差を明確にする,他の細胞内小器官にも注目するなどを今後予定している.その他については,当初の研究実施計画どおり,再生医療による治療が強く望まれている軟骨などについて,動的力学環境による細胞の増殖および分化の制御が可能であるか実証する.
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