2021 Fiscal Year Annual Research Report
革新的再生医療のための細胞の動力学モデルに基づく力学環境の制御
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20H02099
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
白石 俊彦 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (30361877)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 機械力学・制御 / 振動学 / 細胞のダイナミクス / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず,骨芽細胞において,動力学環境による細胞の増殖および分化の制御が可能で,特定の条件でそれらが促進されることについて,細胞のメカノセンシングのメカニズムを検討するために,細胞内小器官のうちの細胞核に注目し,機械的振動下で蛍光標識した細胞核の挙動を蛍光顕微鏡用の高速度・高感度カメラで観察した.観察実験では,測定精度向上のために,実験装置の振動絶縁および軽量・高剛性化を行うとともに,蛍光試薬の使用条件の最適化を図ってSN比を向上させ,また統計解析のためにサンプル数もできる限り多くした.振動数12.5~100 Hz,加速度振幅0.25~2 Gにおける観察実験の結果,細胞核に弾性変形および剛体変位がともに生じることを示した.また,一部の振動条件において,加速度振幅の増大とともに細胞核の剛体変位が増大する振幅依存性がみられた. 次に,再生医療による治療が強く望まれている軟骨において,動力学環境による細胞の増殖および分化の制御が可能であるか検討するために,骨芽細胞で効果的であった12.5 Hz,0.5 Gの機械的振動の軟骨細胞への影響を実験的に検証した.その結果,12.5 Hz,0.5 Gの機械的振動は増殖については影響がないものの,軟骨組織の厚さが振動なしの約1.8倍に有意に増大することを示した. さらに,再生軟骨組織の作製時に,軟骨の層構造の各層に適切な動力学環境を実現するために,音響ホログラフィと呼ばれる手法を利用して,超音波振動子を多数アレイ状に並べて各振動子の位相を制御することにより,空間に所望の変動する圧力分布を形成可能か検討した.その結果,反復角スペクトル法とAdamによる最適化法を組み合わせることにより,2次元空間では所望の動力学環境を与えられることを数値シミュレーションにより示した.また,超音波振動子を多数アレイ状に並べた装置の設計・試作・実験的評価の一部を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に計画していた,機械的振動に対する骨芽細胞のメカノセンシングのメカニズムの検討,再生医療による治療が強く望まれている軟骨細胞に対する機械的振動の影響の検討,音響ホログラフィによる所望の変動する圧力分布の形成の検討が達成できたため.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,機械的振動に対する骨芽細胞のメカノセンシングのメカニズムの検討の結果,細胞核に弾性変形および剛体変位がともに生じ,一部の振動条件では細胞核の剛体変位の加速度振幅依存性が確認されたが,振動数依存性は明確に示されなかった.これらをさらに検討するために,さらなる実験装置・解析手法の改善を行う,試行回数を増やして統計的有意差を明確にする,他の細胞内小器官にも注目するなどを今後予定している. 次に,再生医療による治療が強く望まれている軟骨細胞に対する機械的振動の影響の検討の結果,12.5 Hz,0.5 Gの機械的振動において軟骨組織の厚さが振動なしの約1.8倍に有意に増大することが確認されたが,軟骨細胞に最適な振動数の特定や軟骨基質産生量の定量は示されなかった.これらを検討するために,他の振動条件で実験を行う,軟骨基質産生量の定量を行うなどを今後予定している. さらに,音響ホログラフィによる所望の変動する圧力分布の形成の検討の結果,2次元空間では所望の動力学環境を与えられることが数値シミュレーションで確認されたが,3次元空間での検討や実験的検討は示されなかった.これらを検討するために,3次元空間での検討やアルゴリズムの改良,実験的検討などを今後予定している.
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