2021 Fiscal Year Annual Research Report
歯舌実測運動特性に基づく咀嚼ロボットシミュレーション
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20H02116
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
東森 充 大阪大学, 工学研究科, 教授 (30346522)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 一浩 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (70379080)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 柔軟物マニピュレーション / テクスチャーセンシング / ソフトロボティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,ヒトの食塊形成およびテクスチャー(食感)評価といった咀嚼機能の工学的理解と再現に向け,咀嚼ロボットシミュレーション手法を確立することを目指している.このために,①口腔内用モーションキャプチャを用いて,咀嚼過程におけるヒトの歯および舌の運動特性を実測,解析し,ロボットの機構・動作設計のための歯・舌運動モデルを作成する.②歯舌両有型ロボットシミュレータを設計開発し,人工咀嚼,すなわち歯・舌-食品といった柔剛複合系の相互作用を介した食塊形成マニピュレーションを実現する.③深層学習を用いて食塊形成過程の時空間力覚情報に基づくテクスチャー推定モデルを構築する.本年度は,②の事前検証バージョンの位置づけとして,歯と舌の機構や運動の複雑さを考慮し,歯の機能を中心とした咀嚼システムと舌単体の機能に特化したシステムとに分離して,プロトタイプの設計・開発を行った.歯の機能を中心としたシステムにおいては,人工の歯による咬断・臼磨動作で食品を粉砕するのみでなく,食品断片群をまとめるための包囲・圧縮機構の基本アイディアを提案した.ロボットアームによる咬断・臼磨動作および撹拌動作に,提案機構による包囲・圧縮動作を組み合わせ,ヒトのような一連の食塊形成操作を実現できる可能性を実験的に示した.舌単体の機能に特化したシステムにおいては,舌型空圧ソフトアクチュエータと舌圧分布センサ付き硬質口蓋から成るロボットシミュレータを提案した.基礎実験により,試作ロボットシミュレータが舌圧分布の制御に必要な応答独立性や繰り返し精度を有することを確認した.また,ヒトの舌圧分布から抽出した代表波形2種について,主要な特徴が再現可能なことを確認した.なお,このようなソフトロボット技術の非把持物体操作への応用についても検討した.また,③について深層学習モデルを用いた食感推定手法の検討や予備実験を実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に引き続き,コロナ渦の影響で,新潟大学―大阪大学の共同実験が不可能となり,当初計画していた咀嚼計測を取り止めた.しかしながら,大阪大学単体で模擬的な舌圧計測実験を実施し,この実験データに基づき,舌型空圧ソフトアクチュエータと舌圧分布センサ付き硬質口蓋から成るロボットシミュレータの開発を進めることができた.また,歯による咬断・臼磨動作を実現するロボット部については試作と予備実験が順調に進んでおり,次年度実施予定のヒト咀嚼実験との比較および再設計に向けた準備は整っているものと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き,歯の機能を中心とした咀嚼の理解・再現のためのシステムと舌単体の機能の理解・再現に特化したシステムとに分離してロボット化する方針を取る.歯の機能を中心としたシステムについては,はじめに,口腔内用モーションキャプチャを用いて,ゲル状食品の咀嚼を実測し,舌表面および上下歯列の代表点の時間軌道データから,歯による咬断・臼磨といったゲル状食品の粉砕挙動,舌による砕片群の混合挙動,さらには砕片群を歯の上に再配置するまとめ挙動の解析を行う.これらは,前年度に定義した咀嚼ロボットの3つのプリミティブ[粉砕],[混合],[まとめ]に対応し,これらを実現するための具体的なエンドエフェクタの運動パターンを,ヒトの実測データに基づいて生成することを試みる.ここでは,多点時間軌道データに対して主成分分析とクラスタリングを実施し,各プリミティブに対応した代表運動パターンを抽出する.次に,前年度に構築した咀嚼ロボットシミュレータのプロトタイプを用いてゲル状食品の咀嚼実験を行う.ロボットの咀嚼による食塊を撮影して視覚画像を取得し,畳み込みニューラルネットワークを用いて,ヒトの咀嚼による食塊との類似度を評価する.このような評価の下,3つのプリミティブ[粉砕],[混合],[まとめ]のエンドエフェクタの運動パターンおよびプリミティブの実行順列の最適化を図る.また,圧力分布センサを咀嚼ロボットシミュレータのエンドエフェクタに装着し,食塊を押し潰す際の圧力分布画像を用いて食塊状態を評価する手法を検討する.一方,舌単体のシステムについては,前年度に構築した舌型空圧ソフトアクチュエータと舌圧分布センサ付き硬質口蓋から構成される舌式咀嚼シミュレータの改良を行う.実測舌圧分布の再現性向上に向けて,アクチュエータ構造の再設計や制御入力波形の生成手法の検討を行った上で,ゲルの押し潰し実験に取り掛かる.
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