2021 Fiscal Year Annual Research Report
Control of gliding microtubules using surface roughness structure and its application to nano transportation system
Project/Area Number |
20H02117
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
中原 佐 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (00756968)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | MEMS / MicroTAS / キネシン / 微小管 / 表面粗さ |
Outline of Annual Research Achievements |
生体分子モータのキネシンと、細胞骨格の微小管による運動系(微小管運動)を体の外で再構築し、ナノスケールの輸送体として応用する研究が行われている。微小管の移動速度を制御する方法については、これまでに多くの方法が提案されてきたが、構造によって受動的に制御する方法は極めて少ない。本研究では新たな速度制御方法として、ナノメートルオーダーの表面粗さ構造に着目した。表面粗さ構造に対する微小管運動の特性変化のメカニズムを明らかにするとともに、その特性を利用したナノ輸送システムを開発することが本研究の目的である。 2021年度においては、表面粗さが徐々に増大する階段状表面粗さ構造を製作し、製作した構造上での微小管運動の速度および挙動変化を評価した。加工プロセスには反応性イオンエッチングおよび保護膜となる粘着性フィルムを使用し、表面粗さを徐々に増大させる階段状表面粗さ構造を製作した。加工したポリイミドフィルムの各段差を評価した結果、微小管運動が継続できる高さ(286nm未満)であることを確認し、最大算術平均粗さは目標値の80nmに近い約75nmであることを確認した。加工したフィルム上に微小管運動を構築し、粗さの異なる各段での運動の様子を観察した結果、粗さの増大に伴い移動速度は減少し、停止している微小管の割合が増加する傾向を確認した。当該年度では、デバイス製作方法および微小管運動の挙動変化に関する基礎的知見を得ることができた。今後は、粗さ構造における微小管運動の特性変化のメカニズムを明らかにするとともに、その特性を用いたナノ輸送システムの開発をおこなう計画である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度においては、表面粗さに対する微小管運動の特性変化を評価するために、表面粗さが徐々に増大する階段状表面粗さ構造を製作するとともに、製作した構造上での微小管運動を観察した。階段状表面粗さ構造の加工プロセスには反応性イオンエッチングを使用し、エッチング時間によってポリイミドフィルム上に形成される表面粗さの大きさを制御した。また、加工プロセスの過程でエッチング保護膜となる粘着性フィルムの貼り付け位置をずらすことで、表面粗さを徐々に増大させる階段状表面粗さ構造を製作した。加工したフィルムの各段差を評価した結果、微小管運動が継続できる高さ(286nm未満)であることを確認し、各段の算術平均粗さは最小6nmから最大75nm(目標値80nm)となり、粗さが徐々に増大していることを確認した。製作した構造上に簡易流路を製作し、必要な試薬を順次導入することで微小管運動を構築した結果、構造上で微小管が移動する様子を確認した。また、粗さの異なる各段での運動の様子を観察した結果、粗さの増大に伴い移動速度は減少し、停止している微小管の割合が増加する傾向を確認した。以上より、階段状表面粗さ構造の製作プロセスを確立し、粗さ構造における微小管運動の特性変化に関する基礎的知見が得られていることから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度においては、表面粗さ構造における微小管運動の特性変化を明らかにするとともに、その特性を用いたナノ輸送システムの開発をおこなう計画である。表面粗さ構造おける微小管運動の特性評価については、各段の境界部分における変化を評価することに加えて、粗さ構造における凹凸の平均間隔や最大高さとの関係性を評価する。また、長さが1~3μm程度の短い微小管を調製し、粗さ構造における微小管運動を観察する。微小管の長さがキネシンの付着間隔よりも小さい場合、微小管は移動先のキネシンと結合できず剥離する割合が増加すると考えられる。本研究では微小管運動の挙動変化を統計的に処理することで、粗さ構造や微小管長さに起因した運動特性の変化を考察するとともに、微小管運動の新たな制御技術としての有用性を検証する計画である。また、微小管への分子結合系を取り入れ、分子の捕捉から輸送、濃縮までをおこなうナノ輸送システムの開発に取り組む。分子結合系にはアビジン-ビオチン結合を使用し、輸送対象としては量子ドット(Qdot)を採用する計画である。表面粗さ構造によって微小管の移動速度を低下させることができれば、時間経過に伴い粗さ構造上のQdotの密度が増加し、その蛍光強度が大きくなると考えられる。蛍光強度の変化から濃縮率を評価するが、従来研究の値を参考に20分で2倍程度の濃縮を目標値とし、提案するシステムの有用性を実証する計画である。
|