2020 Fiscal Year Annual Research Report
Objective and Quantitative Assessment of Reproduction of Tactile Feeling
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20H02121
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
三木 則尚 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (70383982)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石塚 裕己 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (40784418)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 触覚 / 触覚ディスプレイ / 事象関連電位 / 皮膚変形 / アクチュエータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、触覚ディスプレイ―触感の順問題・逆問題を高確度かつ効率的に達成するために、特に、触覚ディスプレイによる触感の再現を定量的に、客観的に評価する手法を確立することである。特に、被験者の主観に依存せず簡易に評価を行う方法として、(1)脳波事象関連電位による触感再現評価手法の確立ならびに(2)皮膚変形シミュレーションによる触感再現評価手法の確立とともに、最終的に(3)触覚における順・逆問題のコンプリートによる触感の90%以上の人工的再現を目指す。 2020年度は、まず脳波事象関連電位による触感再現評価を目指した。脳波事象関連電位(ERP)は、認知レベルでの刺激の逸脱、違和感を反映する。触覚サンプルを標準刺激、触覚ディスプレイを逸脱刺激としたオドボール課題において、再現性が高いとき、すなわち標準刺激と逸脱刺激に差がないとき、ERPの差が小さくなるはずであり、すなわち再現性が評価できる。オドボール課題におけるERP検出では、ノイズ除去、トリガータイミングのずれのために加算平均を行うことでERPを抽出する。特に触覚刺激においては、トリガー検出の精確さに問題が生じると考えられる。そこで、逸脱刺激時の脳波の相関により、トリガータイミングのずれを補正する手法を提案し、解析を行っている(投稿準備中)。皮膚変形シミュレーションについて、モデルを構築し、解析を行っている。また新しい触覚ディスプレイとして、低沸点液体を封入したパウチ型アクチュエータを提案した。従来課題であった乏しい伸縮性や、サイズの大きさを、ラテックスゴムの微細コーティングプロセスを開発することで、これまでにない小さいサイズのアクチュエータを実現した(Hirai et al., RAL 2021)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
触覚研究分野での評価は、被験者へのアンケートによる主観的な調査に留まり、本研究のように定量的、客観評価を目指す研究は世界に類を見ない。また、その手法も、脳波による触感認知レベルによる評価と、皮膚の物理的変形による評価と、申請者グループの強みを活かしたものになっており、極めて独自性が高い。本研究の最終目標は、順・逆問題の解法を世界に先駆けて確立し、再現性90%達成を目指す極めて野心的なものである。2020年度は、触感の脳波を用いた客観評価に向けて、まず事象関連電位に関する問いについて、すなわち、加算平均における、トリガーとなる触覚刺激のタイミングのずれとデータ数の少なさについて新たな知見を得た。まず前者については相関係数を評価項目としたタイミングのずれの自動補正が有効なことを示した。そして後者に関しては、少数のデータを加算平均したものを新たなデータとすることで、その組み合わせによりデータ数を爆発的に増やせることを示した。これは機械学習に用いられるデータオーギュメンテーション手法と同じコンセプトである。本手法により、少ない事象関連電位からでも、良好な、すなわち特徴的なMMNやP300が明確に見ることができる事象関連電位を抽出することができた。これらの結果は、2021年度以降の研究において強力なツールとなるだけでなく、事象関連電位に関する研究にも新たな手法として大きな波及効果を有する。以上のことから、研究の進捗は順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
触覚刺激による事象関連電位に関して得られた新しい知見を、速やかに論文化し発表することにより、事象関連電位研究への大きな波及効果が期待される。次に、触覚サンプルをヒトが触った時の触感と、事象関連電位を評価することで、ヒト触感の特性、閾値を知ることができる。すなわち、弁別できない場合は、事象関連電位が発生せず、弁別できた場合は事象関連電位が発生する。ヒトが触感を区別できない場合でも、事象関連電位が発生していた場合などは、ヒトの触感認知研究において新しいテーマとなるであろう。皮膚変形のシミュレーション結果と合わせて、触覚ディスプレイが呈示可能な触感の定量化を行うとともに、得られたデータを機械学習することにより、触覚呈示の逆問題を解く。触覚ディスプレイとして、新しいアクチュエータを用いた触覚ディスプレイや、スマートフォンの内臓モータを用いたディスプレイを用い、順・逆問題を統一的に解き、触感の90%以上の人工的再現を目指す。
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Research Products
(6 results)