2021 Fiscal Year Annual Research Report
Basic Study on Plasma Nitriding Process and NH radical
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20H02133
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
市來 龍大 大分大学, 理工学部, 准教授 (00454439)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立花 孝介 大分大学, 理工学部, 助教 (10827314)
金澤 誠司 大分大学, 理工学部, 教授 (70224574)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | プラズマ窒化反応 / NHラジカル / 大気圧プラズマ / レーザー誘起蛍光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
○ NHラジカル蛍光のプラズマパラメータ依存性の調査 紫外線パルスレーザーをジェットプルームに照射することにより,N2/H2パルスアーク型プラズマジェット中に存在するNHラジカルについて以下のことが明らかとなった.1.305nm付近のレーザー照射により,約336nmおよび337nmの2つの顕著な波長ピークを有した蛍光が見られることが分かった.これらはA-X(0,0)およびA-X(1,1)バンドに相当すると考えられる.2.ジェットプルーム中におけるNH蛍光強度分布を取得した.その結果,ノズル先端から少なくとも72mmの距離まで明確なNH蛍光が見られ,NH基底種が比較的遠方まで輸送されていることが明らかとなった.3.動作ガス中のH2流量比の増加に伴い,流量比0~1%ではNH蛍光強度は単調に増加することが分かった.一方,1%を超える流量比においては,その増加に伴いNH蛍光強度が急激に減少することが明確になった.これはプルーム中のNHラジカル密度がH2添加に伴い減少することを明示している. ○ NH密度と窒素ドーピングの相関の調査 鉄鋼表面にドーピングされる窒素濃度は,H2流量比1%以上ではその増加に伴い急激に減少することが分かった.また,ジェットノズルから少なくとも63mmの位置におけるプルームにも窒化能があることが明らかとなった.前者の結果は,上述のNH基底種密度のH2流量比依存性と定性的に一致しており,また後者の結果は,NH基底種のプルーム内の存在範囲と矛盾しない結果である.この事実は,NHが窒素ドーピングの素過程に影響している証拠であると考えている. ○ 質量分析系の構築 大気圧雰囲気から微量ガスをサンプリングし,各粒子を差動排気系を介して高真空領域へと誘導し,最終的に四重極質量分析器によって特定の粒子種のみを検出する系を設計・構築し,大気中に存在する安定粒子種の検出に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基底状態のNHラジカルをレーザー誘起蛍光法で観測する計画は,プラズマ科学の領域では非常にめずらしい試みである.ただただ検出したというような前例は2,3件あるものの,詳細な研究は申請者が知る限りでは行われたことがない.このような中,令和3年度までの研究により,窒素・水素混合ガスにより大気圧下に生成したパルスアーク型プラズマジェット中に存在する基底状態NHラジカルの検出に成功した.また,NH密度の動作ガス組成依存性が明らかとなり,さらにジェットプルーム中のNHラジカル密度分布を2次元マッピングすることにも成功した.前者は今後展開されるプラズマ窒化反応素過程の調査のために必須のデータとなり,後者についてはNHラジカルの反応プロセスおよび寿命を調査するうえで基礎となるデータである.これまで低圧プラズマを用いた従来型の窒化処理装置においてはNHの重要性は議論されてきた事実を考えると,今回計測したプラズマが「大気圧プラズマ」であることが研究の新規性・独創性を高めている. これに加えて,定性的ではあるものの,プラズマ中NHラジカル密度とそのプラズマを用いた鉄鋼試料の窒素ドーピング特性に強い相関があることがはじめて明らかとなった.この結果により,10年にわたり申請者らが国内外の学会においてアピールしてきた「プラズマ窒化反応におけるNHラジカルの重要性」がまた一歩信憑性を増したといえる.これはまさに,本プロジェクトを含むプラズマ窒化反応に対する基礎研究の最終目標に一段階近づいたことを意味しており,本プロジェクトが適切な方向に推進されていることを示している.
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Strategy for Future Research Activity |
○ NH2ラジカル蛍光の調査 プラズマジェットに照射するパルスレーザー波長を調節することで,プルームに存在するNH2ラジカルを600nm付近で蛍光させ,NH2密度の諸特性を調査する実験系を構築する.この実験系により,NH2を含む粒子種の生成・消滅の素過程を考察するうえで重要な基礎特性を調査する. ○質量分析法によるN原子検出 昨年度導入した質量分析計により,パルスアーク型大気圧プラズマジェットを照射したオリフィスから検出されるN原子信号について調査する.窒素ガス-水素ガス混合比,およびプルーム位置(特にジェットノズル先端からの距離)について体系的に調査する.これにより,プラズマ中のN原子の生成・消滅の素過程を考察するうえでの重要な情報が得られる.これに加え,生成されたN原子の大気圧下における窒素ドーピングへの直接寄与についても考察する. ○ 平板型バリア放電専用LIF実験系の構築 平板型誘電体バリア放電に対してレーザー誘起蛍光法を適用するための,専用放電極・蛍光観測装置を完成させる.100mm四方の誘電体バリアおよび放電極系を内包できるサイズのステンレス製密閉容器を作製し,側面にレーザー照射用,蛍光観測用の石英窓を合計4つ設置する.ミラー,レンズ,フィルタ等の各種光学系を配置し,バリア放電極系のギャップ間にパルスレーザーを照射し,ICCDカメラによってラジカルの蛍光を観測できるよう装置全体を調整する.バリア放電中のフィラメント放電ひとつひとつの発生とレーザー照射および撮影のタイミングを同期させることは,技術的に困難だと考えられる.従ってここではバリア放電が発生している交流電圧の位相範囲を狙い,数-数10μsのゲート幅により蛍光を撮影し,ラジカル蛍光強度の強弱が定量的に比較できるような統計的条件を探索する.
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Remarks |
学会賞 ・薬師寺海斗:電気学会優秀論文発表賞(令和4年1月11日) ・矢川智健:プラズマ・核融合学会 九州・沖縄・山口支部講演奨励賞(令和4年3月24日)
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