2021 Fiscal Year Annual Research Report
ナノサイズ高感度磁気再生素子を実現するCPP-AMR単結晶薄膜材料の開発
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20H02177
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
角田 匡清 東北大学, 工学研究科, 准教授 (80250702)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古門 聡士 静岡大学, 工学部, 教授 (50377719)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 磁気抵抗効果 / スピントロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度検討を行ったNi-Co合金薄膜に引き続き、酸化マグネシウム単結晶基板上に、種々の組成をもつNi-Fe, Fe-Co合金薄膜をエピタキシャル成長させ、同薄膜の異方性磁気抵抗(AMR)効果の電流方位依存性について検討を行った。AMR効果の計測には、試料回転機構を有する超電導マグネット物理特性計測装置(PPMS)を用い、in-plane AMR、out-of-planeAMR、およびtransverse AMRの3種類について、室温から5Kの範囲で測定を行った。 得られたAMR効果の結果を用いて、現象論的表式(W. Doring)の磁気抵抗定数(AMR係数)を算出し、Ni-Fe, Fe-Co合金薄膜の同定数の組成ならびに温度依存性を決定した。磁気抵抗定数の算出には、付加的効果が重畳しやすいと考えられるin-plane AMRの実験結果を用いない表式を導出して用いた。 Ni-Fe合金薄膜では、インバー合金組成付近のNi30~40at%の試料でAMR効果が小さくなることが判った。これはfcc, bccの相境界付近でフェルミ準位のアップスピン電子、ダウンスピン電子のd軌道の状態密度の差が小さくなることと対応しており、Kokadoらが構築した電子散乱理論と定性的に一致する。また、Fe-Co合金では、電流方向//Fe-Co[100]と電流方向//Fe-Co[110]の場合で、AMR効果に差があることが判った。これはZengら(PRL125(2020)097201)の報告に一致しており、磁化方向変化によるバンド構造変化による効果である可能性があることが判った。 理論の側面からは、in-plane AMR, out-of-plane AMR, transverse AMRの測定結果に対応すべく、厳密対角化の手法を用いて各方位のAMR効果の数値解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験、理論研究の両面で概ね計画通りに進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
もっとも基本的な強磁性金属であるNi-Fe-Co合金についてCPP-AMRのポテンシャルを明らかにするために、これまでに検討してきた各合金系において、AMR効果の組成依存性の変化が大きい組成付近での補完実験を行う。 Kokadoらが構築した結晶場を採り入れた電子散乱理論、ならびにNi-Fe-Coの電子構造計算に基づいて、実験で得られたAMR効果の結晶方位依存性について、電子論的視点からの解釈を行い、同理論の適応性について検討を行う。特に昨年度の検討で判明している純Niでの実験と理論の乖離ならびに、本年度観測されたFe-Co合金におけるAMR効果の電流方位依存性が同理論の範疇で説明できるかについて主に検討する。 また、これまでに作成したエピタキシャル成長した試料を用いて、異常ホール効果についても測定を行い、その組成依存性ならびに異方性磁気抵抗効果との相関について調査・検討する。
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