2020 Fiscal Year Annual Research Report
Control of charge and strain of diamond crystal and elucidation of limiting factor of electron spin coherence time
Project/Area Number |
20H02187
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
寺地 徳之 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主席研究員 (50332747)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ダイヤモンド / 結晶成長 / 不純物制御 / 固体量子 / 発光センタ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、研究項目を「極微量不純物不純物ドーピング制御によるT2律速要因の解明」と「歪・転位制御によるT2律速要因の解明」の2つに分けて実施している。 前者については、R2年度は新規に設計した低マイクロ波出力型CVD装置を用いてダイヤモンド薄膜を成長し、結晶中のホウ素濃度を調べた。2次イオン質量分析測定(SIMS)の結果、残留ホウ素濃度は測定限界(5×1013cm-3)以下と少ないことが分かった。計画目標としていた1×1014cm-3のホウ素濃度を下回ることに成功した。この低ホウ素濃度成長条件で、1-100ppbの範囲で窒素ドーピングを行った。窒素ドーピングは、水素で1ppmに希釈した15N窒素を用い、マスフローコントローラでガス封止を行い、その前後のストップバルブを開けるようにして成長を行った。このように成長したダイヤモンドでは、高温熱処理後に単一スピンが観測された。このNVセンタの光励起発光(PL)評価を行ったところ、NVセンタの電荷状態は安定性に優れ、NV0(中性電荷状態のNVセンタ)に変化することは無かった。 後者については、R2年度は(100)結晶上へのダイヤモンド薄膜成長において、転位が存在する場所、あるいは基板の成長セクタが異なる領域上に堆積されたCVDダイヤモンド薄膜の転位評価をラマン分光イメージングにより実施した。その結果、成長条件が最適化されているためのCVD薄膜中のほぼすべての転位は下地基板からの貫通転位であること、また(001)方向へのCVD成長では下地基板中の転位の方向や種類にかかわらず転位の方向が[001]となることが分かり、転位構造は刃状転位あるいは混合転位であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で実施している2つの研究課題について、計画通りの成果が得られている。「極微量不純物不純物ドーピング制御によるT2律速要因の解明」については、NVセンタのブリンキング抑制が不可欠であるが、本研究で開発した高純度ダイヤモンド成長技術を用いることでブリンキングが著しく抑制された。「歪・転位制御によるT2律速要因の解明」については、当初は転位密度の変化を調べることが中心になると想定していたが、予想以上にCVDダイヤモンド薄膜の結晶性が良く、基板の転位密度に比べてCVDダイヤモンド薄膜の転位密度は増加しなかった。この高品質CVDダイヤモンド薄膜中の転位を調べることで、高圧成長されている下地基板とCVD法で成長した薄膜とで転位の構造が変わる場合があることを明らかにした。この成果は、当初の想定以上のものである。 これらの成果については、査読付き国際論文誌(オリジナル論文)として出版された。この論文については、Editorの推薦によりEditor's Pickとして選ばれた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に開発した高品質ダイヤモンド成長条件をベースにして、研究を遂行する。課題「極微量不純物不純物ドーピング制御によるT2律速要因の解明」に関しては、NVセンタの高品質化を行う。そのために極微量のNVセンタ形成層とフェルミ準位を高めるために窒素ドープした層を分離した構造を作製する。ドナー層には1ppm程度の窒素をドーピングし、NV-センタ層には1-10ppbの窒素ドーピングを行う。ドナー層の有無によりNVセンタのT2がどのように変化するかを調べる。課題「歪・転位制御によるT2律速要因の解明」に関しては、結晶転位や結晶歪がT2と発光ブリンキング特性に与える影響を調べる。
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Research Products
(10 results)