2021 Fiscal Year Annual Research Report
シリコンを含む磁性接合におけるスピン伝導物理の解明と制御
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20H02199
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中根 了昌 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任准教授 (50422332)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | スピントロニクス / 電子デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、極めて有望なデバイスであるスピン偏極電子を用いたシリコンベーススピントランジスタの開発を最終目標とする。その基盤となる「シリコン二次元反転チャネル中でのスピン伝導物理の解明と制御」「スピン伝導物理の定量的な解明とスピン注入・検出源の技術開発」を行う。 本年度は両研究項目について取り組んだが、様々な材料を用いた新規スピン注入検出源については条件出しなどを行ったため一連の成果としてまとまっていない。ここでは、同時に取り組んでいた「シリコンチャネル中でのスピン伝導物理の解明と制御」について記載する。スピン注入検出源にFe/Mg/MgO/n+-Si磁気トンネル接合を持つn+-Siチャネル4端子スピンデバイスを作製した。多端子の特性を活かし、様々な測定配置におけるスピン信号を取得して解析を行なった。特に磁気トンネル接合のバンドアライメントを基盤としたスピン注入効率のバイアス依存性について探究をした。 4端子中の左右2端子ずつを対として、一方に定電流を印加して他方の電圧を測定した。この時、電圧測定側の端子間に定電流バイアスを印加することでトンネル接合のバンド状態を変化させた。電圧測定端子のトンネル接合のスピン注入と検出がバイアスによってどのように変化するのかを、スピンバルブ信号の解析によっておこなった。解析のために、Feのスピンバンドを考慮したオリジナルな理論モデルを構築し、それにより導かれる解析式を実験結果にフィットした。広いバイアス領域において、理論と実験結果が整合し、モデルの妥当性を明らかとした。様々な解析を通して、磁気トンネル接合によるSiへのスピン注入物理の詳細を明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の核となる磁気トンネル接合を用いたSiへのスピン注入に関して詳細な物理を明らかとし、今後挑戦していく様々な材料を用いたスピン注入源の設計指針が明らかとなったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度明らかとなった指針に従って、高効率スピン注入を可能とする磁気トンネル接合の設計を進め、これを実現する接合の創製を行っていく。様々な材料を用いた接合を準備し、それらのすべてにおいてスピン信号の取得と解析を探究することで、研究目標を達成する。
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