2020 Fiscal Year Annual Research Report
Ultrafast response detection of photo-induced flexoelectric effect and its elucidation of molecular motion from mesoscopic viewpoint
Project/Area Number |
20H02202
|
Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
木村 宗弘 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (20242456)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
勝部 大樹 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (00831083)
鵜沼 毅也 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (20456693)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | フレクソエレクトリック効果 / 光異性化反応 / ネマティック液晶 / フェムト秒レーザ |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、高速応答性液晶デバイスを実現するために必要なフレクソエレクトリック分極の大きな液晶の選定に関する研究と、フェムト秒レーザを中心とした高速応答測定系の構築を進めた。 科研費によって購入したフェムト秒レーザ(スペクトラ・フィジックス社 XF-1、発光波長は710-910nm)を光源とし、ポンププローブ法の光学系を構成した。光異性化反応を示すゲスト液晶の吸光波長は380nm-400nmであるため、BBO結晶でSHGを発生させ、ポンプ光として液晶セルに照射する。光遅延器で位相を遅らせたプローブ光も液晶セルに斜め入射させる。1/4波長板及び偏光子も配置し、s/p偏光入射に対するs/p偏光出射の応答を測定する。ロックインアンプ及び光遅延器をPCによって自動制御するプログラムも作成しつつ、予備的な実験を行うところまで漕ぎ着けた。 本研究課題で重要な役割を果たすネマティック液晶を選定するために必要な、フレクソエレクトリック分極の大きさを正確に評価するための測定系の改良も並行して行った。過去に発表していた測定法および測定結果には、液晶サンプル中の不純物混入や、フレクソエレクトリック分極の符号が正確に決定できない問題があった。そこで、我々の研究グループが醸成してきた対称斜め入射透過偏光解析法に基づく測定手順に改良を施し、良好な再現性を確認出来たため、国際会議で報告した。 用いた液晶をグレーティング構造表面でローカルに垂直配向させるための条件探索も並行して行った。実験に用いる予定の液晶組成の一つについては、分子動力学シミュレーション(GROMACS)も実施し、ネマティック相の発現を確認出来たので、合わせて国際会議で報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ポンプ・プローブ法の光学系のアライメント調整は繊細な手作業となるため時間を要したが、年度内に当初の予定通りの測定系を構成できた。このため、予定を前倒ししての測定実験も検討したが、液晶セルの作製がそこまでは進捗出来なかった。 液晶材料の選定のために、いくつかのディスプレイ用ネマティック液晶ミクスチャの中からフレクソエレクトリック分極の大きい液晶を見つけ出す作業を行った。フレクソエレクトリック分極を測定する装置の改良および測定手順の見直しが令和2年末迄掛かってしまったことが原因ではあったが、最終的には、候補となる材料を選択することが出来た。 高速応答を発現させるためセルの構造にも工夫が必要であるが、グレーティング構造の作製実験は十分には試行錯誤が繰り返せなかった。グレーティング構造は汎用のフォトレジストを用いる予定であったが、垂直配向膜の塗布によってグレーティング構造が溶解してしまう問題が確認された。改善法として、ブチルセラソルブ以外の希釈剤を用いた垂直配向剤を今後検討する。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和3年度前半は、完成したポンプ・プローブ法光学系で、光誘起フレクソエレクトリック効果が発現することを確認する実験を実行する。ポンプ光で発生するゲスト液晶の光異性化反応によって、マクロスコピックには垂直配向しているホスト液晶の屈曲方向が揃い、光学的に2軸性となることをプローブ光から確認すると共に、横電界駆動Time-of-Flight法により、発生したフレクソ分極を電流として測定する。昨年に引き続き、本研究課題に最適な液晶は継続して探索していく。特に、光異性化に重要なアゾ色素骨格を持った液晶は複数種類を入手し、ホスト液晶との混合比を変えながら、μ秒台以下の高速応答実現のための最適条件を探索する。 実験と共に、オープンソースソフトウェアGromacsを用いた分子動力学(MD)シミュレーションを行い、ミクロとマクロの両方の視点(メゾスコピックな視点)から高速な光異性化応答のモデルを再構築し、準定量的に且つ過渡現象論的な説明を試みる。具体には、既知の液晶構造でのMDシミュレーションを分子2000個で実行し、分子場での光異性化によるオーダーパラメータの変化の有無を確認する。
|