2021 Fiscal Year Annual Research Report
シリコントランジスタのゲート制御による電子正孔系の形成と量子凝縮現象の発現
Project/Area Number |
20H02203
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
堀 匡寛 静岡大学, 電子工学研究所, 准教授 (50643269)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 行徳 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (80374073)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | シリコン / MOSFET / 電子正孔系 / 凝縮現象 / 再結合 / 励起子 / ゲートパルス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、電子正孔系の凝縮現象をエレクトロニクスに応用することを念頭に、シリコンにおいて凝縮体を観測し、これを制御する技術を確立することを目的としている。具体的には、パルス電圧によるトランジスタ・ゲート操作技術を用いることで、電子正孔密度を従来技術よりも広い範囲で精密に制御し、これにより、シリコンにおける電子正孔系の凝縮現象を体系的に調べることのできる技術を確立する。 これまでに、パルス電圧を用いたゲート操作により生じる再結合電流から、シリコンMOSトランジスタの界面近傍において、電子と正孔の共存系の形成を確認した。このことを踏まえ、2021年度は、ゲートパルスの振幅、および、ベース電圧(パルスの下端電圧)をパラメータとして再結合電流を系統的に調べ、そこから電子正孔間の距離を見積もった。また、パルスのオン時間をパラメータとして再結合電流を計測し、そこから再結合時定数を評価した。一方、MOS界面近傍の欠陥が電子正孔共存系の形成に与える影響を調べるために、界面欠陥の評価も並行して行った。ここでは特に、電流検出型の電子スピン共鳴法を用いることにより、界面欠陥、および、その近傍に存在するヒ素ドナー電子に由来する信号を検出することに成功した。また、これらの信号の詳細解析を行ったところ、ヒ素ドナーの電子はその近傍に存在する界面欠陥を介して再結合し、その再結合確率はヒ素ドナー電子のスピンに依存することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、再結合電流の解析を進めることができた。具体的には、ゲートパルスの振幅電圧とベース電圧をパラメータとして再結合電流を系統的に調べ、そこから電子と正孔の距離を見積もった。その結果、電子と正孔は数ナノメートル程度の近距離で共存していることが明らかとなった。 また、トランジスタの界面欠陥の評価も並行して実施することができた。界面欠陥とその近傍に存在するドーパント原子に由来する信号の検出に成功し、信号を解析することで再結合過程の詳細を明らかにした。この成果は学術論文(Applied Physics Letters)において注目論文に選定された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに本研究課題で測定した再結合電流は、時間平均した定常電流であったため、電圧変化に伴い時々刻々と変化する電子密度や正孔密度、再結合過程といった、電子正孔系形成の一連の素過程に関する有益な情報はすべて覆い隠されてしまっていた。このため、今後は電子電流と正孔電流の同時実時間測定を実施する。特に、極低温下でのキャリヤのフリーズアウト(凍結)現象が本研究課題の電子正孔系形成の鍵となるため、30ケルビン以下における実時間電流を詳細に調べる。
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Research Products
(11 results)