2020 Fiscal Year Annual Research Report
Uncertainty quantification considering global sensitivity for seismic risk analysis of existing bridge structural systems
Project/Area Number |
20H02229
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
西尾 真由子 筑波大学, システム情報系, 准教授 (00586795)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 不確定性定量化 / 事後分布 / スパース推定 / 非線形構造振動 / 構造信頼性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,構造モニタリングを活用する非線形地震応答解析のモデルパラメータ事後分布推定によるデータ同化法を構築し,既存橋梁の地震リスク解析への有効性を実証する. 具体的には,次の(A)-(C)の検証を進めていくこととしている:(A) 劣化損傷状態と地震動特性に依存する「不確定性感度」の高いパラメータを自動的に抽出し,非適切性を回避して事後分布を推定するデータ同化法を定式化する.(B) 構造振動模型や部材模型を用いる実験で構築した推定法の非適切性回避の効果を示し,不確定性感度を考慮することでパラメータ事後分布を高い精度と信頼性で推定できることを示す.(C) 実橋梁を対象として構築するデータ同化法を適用する地震リスク解析を実施し,既存構造状態をモニタリングデータで得る事後分布考慮する有効性を示す. 初年度であった2020年度では,(A)適切な事後分布推定のための不確定性感度抽出法に関する基礎検討,(B)で非線形構造振動解析のスパース応答回帰モデルの構築,(C)構築手法の実構造物への適用を見据えた実橋梁での地震応答モニタリング,を予定していたが,概ね予定通り検証を実施して一定の成果を得ることができた. (A)(B)については,基礎的な非線形構造振動系の時刻歴応答解析を対象として,特に関連度自動決定カーネルを用いるガウス過程回帰を入出力関係の確率モデル構築に用いることで,非線形性発現の度合いが入力に依存しても自動的に構造パラメータの「不確定性感度」を考慮できることを示せた.また部材模型による実験に着手し,推定問題での非適切性回避を念頭とした画像による構造物応答データ取得への検討を行った. (C)については,本研究で地震リスク性能解析の対象としている実構造物の免震道路高架橋で無線加速度モニタリングを継続しながら,その数値モデル構築に着手して基本的な振動特性を把握した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度では,(A)適切な事後分布推定のための不確定性感度抽出法に関する基礎検討,これに関連して,(B)非線形構造振動解析のスパース応答回帰モデルの構築と事後分布推定で非適切性を回避するためのデータ取得への検討,(C)本研究で構築する手法の実構造物への適用を見据えた実橋梁での地震応答モニタリングを予定していた. (A)(B)については,基礎的な非線形構造振動系の時刻歴応答解析を対象として,特に関連度自動決定カーネルを用いるガウス過程回帰を入出力関係の確率モデル構築に用いることで,非線形性発現の度合いが入力に依存しても自動的に構造パラメータの「不確定性感度」を考慮できることを示せた.また部材模型による実験に着手し,推定問題での非適切性回避を念頭とした画像による構造物応答データ取得への検討を行った. (C)についても,本研究で地震リスク性能解析の対象としている実構造物の免震道路高架橋で無線加速度モニタリングを継続しながら,数値モデル構築に着手して基本的な振動特性を把握し,地震応答解析の妥当性検証に着手した.新型コロナウイルスの影響により現場作業を充実して行うことができず,データ取得のセンサ不具合などに対応が難しいことがあり,取得できた中小規模地震への応答データが少なくなってしまった.一方で,この対象橋梁の地震応答解析モデルの構築と妥当性検証については予定よりも早く着手でき,進捗させることができた. 以上より「本研究はおおむね順調に進展している」とした.
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Strategy for Future Research Activity |
(A)-(C)各項目について2020年度に得られた結果を踏まえ,それらを継続・発展させる形で,以下の検証に取組む計画としている. (A)(B)について,関連度自動決定カーネルを用いるガウス過程回帰で「不確定性感度」を考慮できることを示せた結果を発展させ,構造パラメータの事後分布推定の中でこの回帰モデルを用いることで,不確定性感度の考慮による推定問題での非適切性回避の効果を検証する.特に,構造要素の非線形履歴特性パラメータや,構造物の劣化損傷に関する構造パラメータの事後分布推定の精度と信頼度を「不確定性感度」と対応させながら論じる.その上で,非線形構造振動の基礎実験を開始し,検証を進めていく予定としている. (C)については,実構造物の免震道路高架橋での無線加速度モニタリングを継続しながら,2020年度までに得られたいくつかの中小規模地震での構造物応答データの分析を実施する.地震イベントでのデータ取得を確実に行えるよう,データ取得システムの整理を行う.また,本年度に構築した数値モデルの地震時刻歴応答解析への妥当性検証を行い,項目(A)の検証と関連させて,構造フラジリティ解析におけるモデルパラメータ事後分布推定に適切な情報量について不確定性感度に基づく検討に着手して,モニタリングデータでもとめる推定量の信頼度に関する考察につなげることを考えている.地震リスク性能解析に関する国内外の直近の研究動向をみると,構造物のフラジリティ解析への不確定性感度の影響だけでなく,事後分布推定による不確定性低減の効果はまだ明らかになっていない.この点についても,本研究で検証に用いる高架橋システムを対象としながら,検証を進めていくことにしている.
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