2021 Fiscal Year Annual Research Report
炭酸カルシウム法地盤改良技術を使った地下水中の金属資源捕捉回収システムの開発
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20H02246
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Research Institution | Wakayama National College of Technology |
Principal Investigator |
林 和幸 和歌山工業高等専門学校, 環境都市工学科, 准教授 (30587853)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
角田 範義 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 理事・副学長 (30201411)
岡村 未対 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (50251624)
安原 英明 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (70432797)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 透過性地中壁 / 炭酸カルシウム / 重金属 |
Outline of Annual Research Achievements |
地中に炭酸カルシウムを沈殿させて築く透過性地中壁の「地下水中の金属固定集積機能」を明らかにするため,間隙の状態をフラスコ内で再現し,金属イオン濃度の経時変化を調べるバッチ試験を行った.対象とする金属は,事前に行った化学平衡計算で良好な結果が得られたマンガン,ニッケル,コバルト,亜鉛,および鉛の5種類とし,それぞれの塩化物を溶質とする水溶液に炭酸カルシウム粉末を投入し,試験期間中連続的に攪拌した.その結果,砂質量に対する炭酸カルシウム含有率0.5~2.0%の範囲を想定したバッチ試験において,いずれの炭酸カルシウム含有率においても95%以上の重金属が沈殿物として補足され,同時に炭酸カルシウム中のカルシウムイオンが放出されその濃度が上昇する結果が得られた.重金属およびカルシウムのイオン濃度と時間の関係を表す曲線には,ほとんどのケースで2つの凸(または凹)が現れたことから,重金属が2つの異なるメカニズムで捕捉されていると推察された.また,溶出したカルシウムイオンの濃度は,捕捉された重金属イオン濃度の1.20~2.8倍の範囲にあることから,想定された1:1のイオン交換とは異なるメカニズムが作用して沈殿物が生成されたと推察された. 次に,重金属水溶液が透過性地中壁に滞留する時間と地中壁の重金属補足性能の関係を明らかにするため,炭酸カルシウムを1%含有する砂のカラム(Φ50mm,H100mm)を作成し,マンガン,ニッケル,コバルトのそれぞれの水溶液を段階的に通水するカラム通水試験を実施した.その結果,間隙での滞留時間が1日程度と短い場合には,重金属捕捉が炭酸カルシウム結晶表面のみにとどまり,高い捕捉率を得るには重金属イオンが炭酸カルシウム結晶内部に侵入するために数日の時間が必要となることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調に進展している.一方,2021年度に実施したバッチ試験,カラム試験結果から,当初は想定していなかった事象,すなわち,イオン交換反応とは異なるメカニズムで重金属が固定されている可能性が生じた.したがって,2021年度末からそのメカニズムの解明を優先的に検討している.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きカラム通水試験を実施し,地中壁の金属固定率とカラムの砂の粒径,炭酸カルシウム含有率,およびカラムに通水する水溶液中の金属種とその通水速度の関係を調べる.2021年度に実施した実験では,カラムに固定された重金属と,排水と同時に排出されるカルシウムイオンの量の比率が,固定される金属種によって物質量ベースで様々に異なり,当初想定していたイオン交換反応とは異なるメカニズムで重金属が固定されている可能性が考えられた。また,固定濃度の経時変化を分析したところ,反応初期とそれ以降でそれぞれ異なるメカニズムで地下水中の重金属が固定される結果が得られた。そこで今年度研究では化学的視点に立った分析の比重を高め,固定メカニズムの解明を試みる。 固定された金属資源の分離・回収システム開発およびそれに資するデータ収集のため,カラム通水試験後の地盤試料の酸洗浄,ろ過を経て土と金属水溶液を分離する.金属イオンを含むろ液はその金属に応じ試薬を添加し,アルカリ化やイオン交換を経て金属を沈殿物として取り出す.金属資源回収後の残土に炭酸カルシウムを沈殿させて締固め試験を行い,その土の締固め特性を調べる.締固め作業により土粒子表面に沈殿した炭酸カルシウムは破壊されることが想定される.そこで,その締固め前後の砂に対し,電子顕微鏡による表面観察を行いその破壊状態を調べる.炭酸カルシウムを沈殿させた残土でカラム通水試験を実施し,その金属固定機能を調べる.
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