2020 Fiscal Year Annual Research Report
Blue carbon paradigm for contributing to environmental management in bays surrounded by big cities
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20H02250
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 淳 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (50292884)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 徹 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (00527773)
大谷 壮介 大阪府立大学工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60554219)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ブルーカーボン / 内湾 / 数値モデル / 現地観測 / 港湾 / 藻場 / 干潟 / 湿地 |
Outline of Annual Research Achievements |
都市内湾は高いCO2吸収機能を有することが知られており,水産等の生態系サービスの強化と相乗便益が期待できる,気候変動の緩和策として期待されている.一方,都市内湾は湧昇等のイベント的現象や河口湿地から干潟,藻場,港湾,沖合といった環境変化に富み,東京湾と大阪湾を具体の対象としてその全体像の把握に取り組むことに大きな意義がある. 東京湾においては富津干潟の海草藻場を対象にそのブルーカーボン機能の評価と藻場面積変動の低廉かつ効率的なモニタリング手法の確立を目指し,四季におけるドローン空撮およびFeature Pyramid Network等の深層学習を用いたマッピング手法を構築した.また,従来の調査では夜間の炭素収支に不明点が残されていることから,冬季から春季に一昼夜の連続観測と高頻度調査を行い,観測データセットの蓄積を図った.2020年度は当初夏季の青潮(無酸素水塊の沿岸湧昇)時の炭素収支を把握する観測を予定していたが,コロナ禍のため延期となり,2021年度に繰り越した.2021年度には9月初旬の青潮時における水質連続観測と高頻度の採水による炭酸系の測定に成功し,青潮時のCO2の大きな排出の実態を初めて明らかにした. 2020年度に予定していた現地観測がコロナ禍の影響により実施できなかったため,大阪湾で1970年代から観測されている水質データを用いて大阪湾全域におけるCO2分圧を推算した.大阪湾における長期間の変動特性から海域を類型化し,CO2分圧の時・空間的な分布特性と増加トレンドについて明らかにした.また,これまで研究分担者が大阪湾で実施してきたCO2フラックスのデータの整理を行うことで,特に沿岸域を中心に湾央,港湾・漁港,干潟,流入河川のデータについて,水質およびCO2フラックスの比較を行って,CO2分圧に寄与する要因解析を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東京湾においては,当初予定していた夏季の現地調査がコロナ禍のため実施できず次年度に繰り越すこととなったが,2021年度の夏季には予定した通り,東京湾における青潮時の現地観測に成功し,青潮時における高いCO2排出の実態を初めて明らかにすることができた.また,冬季から春季にかけては一昼夜の高頻度観測を実施することで,従来情報の不足していた夜間のデータを収集することができた.また,海草藻場を対象としたブルーカーボン評価の基本となる,海草藻場および砂浜に漂着した海草の分布を把握する手法を確立することができた. 大阪湾においてもコロナ禍のため当初予定していたヨシ原,干潟および港湾海域におけるCO2フラックスのモニタリング調査の制限を余儀なくされたため,大阪湾で観測されている水質の公共データとこれまで蓄積したCO2フラックスに関するデータ分析を実施し,大阪湾全域におけるCO2分圧の長期変動と空間分布特性を明らかにした.また,これまで大阪湾沿岸域におけるCO2フラックスのデータを整理することで,湾央,港湾・漁港,干潟,流入河川の水質特性と合わせて季節や地点間違いによるCO2フラックスの変動の大きさを明らかにすることができた.以上のことから,計画の変更はあったものの大阪湾の過去から現在におけるCO2吸収量,沿岸域におけるCO2フラックスを評価するために必要な基礎データを整備することができた.また,2020年度には実施できなかったモニタリング調査で必要な観測機器や分析装置,さらに対象水域の選定など調査準備ができ計画は順調に進捗していると考える. 以上のことから,(2)概ね順調に進展していると自己評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
炭素収支の把握に不可欠な水中におけるCO2分圧は時空間変動が大きく,連続観測が可能な水質項目に基づくCO2分圧の連続的な推定方法やCO2分圧の直接的な計測方法の開発が重要との認識を持っており,次年度はその手法の構築に重点的に取り組む予定である. 2020年度に実施がかなわなかった東京湾における夏季の青潮時の現地観測は繰り越した2021年度に実施することができ,コロナ禍においても現地調査は概ね問題なく実施できる状況となっていることから,研究遂行上における特段の問題はない. 2020年度に実施できなかった干潟,港湾海域,淡水域において季節ごとの連続モニタリング調査を実施し,環境特性の異なる水域のCO2変動特性を明らかにする.また,河口湿地帯におけるCO2フラックスの連続観測を実施する.
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Research Products
(2 results)