2022 Fiscal Year Annual Research Report
Advancing global river hydrodynamic simulations using satellite surface water observations
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20H02251
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山崎 大 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (70736040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木田 新一郎 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (50543229)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | グローバル水文学 / 全球河川モデル / 衛星観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、衛星観測などを用いて全球河川モデルのシミュレーション性能を包括的に評価する「全球河川モデルのベンチマーク枠組み」の開発に集中的に取り組んだ。現地観測の河川流量、衛星高度計による河川水位、可視光衛星観測による浸水面積のデータを収集し、モデル出力と比較可能なようにデータ形式変換や品質管理を行なった上で、全球河川モデルの出力結果を比較してシミュレーションスコアを自動的に算出する仕組みを開発した。また、複数地点の精度指標を統合する手法も開発し、河川モデルがリファレンスシミュレーションと比較して改善したかを判断するモデルベンチマークが可能になった。この仕組みを用いて、どの入力流出量データがもっとも精度が高いかを客観的に判断できるようになったほか、流下スキームやパラメータを変更した際に、それがモデル性能の改善に寄与したかを広域で包括的にベンチマークできるようになった。 また、衛星高度計の実際の観測データを全球河川モデルにデータ同化する手法を開発した。全球河川モデルには依然として水位にバイアスが存在するが、モデル水位と観測水位の両方を正規化することによって、データ同化によって河川流量の推定精度が向上することを確かめた。ただし、データ同化がうまくいく条件として、モデル計算流量の平均値や振幅にバイアスがないことが条件となっており、河川モデル自体のさらなる改善は必要である。この結果はHydrology and Earth System Science誌に発表した。
この他、次世代衛星高度計SWOTの日本チームが集まって2022年7月に福岡でワークショップを行い、衛星高度計を用いた河川モデルパラメータ推定・データ同化・河川沿岸海洋モデルの結合といった先端的な研究の可能性について議論を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全球河川モデルのシミュレーション精度ベンチマークシステムの開発が概ね完了し、本研究の主要プロダクトが完成する目処がたった。データ同化についても、これまでは双子実験による仮想的な衛星観測データの同化試験を行なっていたため、実観測データでの同化の実現は大きな進歩である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者が開発している全球河川モデルCaMa-Floodを基盤ツールとして、河川水動態シミュレーションを衛星地表水観測と妥当に比較検証する手法を検討する。衛星データとして、複数の浸水域プロダクトと衛星高度計プロダクトを用いて、それぞれの衛星観測プロダクトの制約や不確実性を精査した上で、河川モデルとの比較を地球上のあらゆる地域で行うための汎用的なワークフローを構築する。2021度までに、現地観測の河川流量・衛星高度計による河川水位・可視光衛星による浸水域の河川水動態データを収集し、全球河川モデルと比較可能にするために必要なデータ形式変換や品質管理を行う手法が確立された。また、これらの観測データを用いて、全球河川水動態モデルのシミュレーション結果を包括的に評価する「全球河川モデルのベンチマーク枠組み」の開発が進んできた。最終年度では、研究成果のとりまとめに重点を置く。全球河川水動態モデルのベンチマークシステムを完成させ、モデル性能比較のいくつかの実験を行って有用性を検証する。システムの詳細を学術論文にまとめるとともに、研究コミュニティとして利用できるようにソースコードとマニュアルの整理と公開を進める。またベンチマークシステムの改良は継続して行う。全球で統合した評価指標のほかに、河川サイズごとや気候帯ごとに性能指標を算出できるようにするなど、ベンチマークシステムのユーザーであるモデル開発者や利用者にとって、より有益な情報を提供できるようにする。
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