2020 Fiscal Year Annual Research Report
水災害適応型社会実現のためのリスク評価と都市変容シミュレーション手法の構築
Project/Area Number |
20H02255
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
谷口 健司 金沢大学, 地球社会基盤学系, 教授 (20422321)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渋尾 欣弘 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任准教授 (00573560)
高山 雄貴 金沢大学, 地球社会基盤学系, 准教授 (90612648)
山口 裕通 金沢大学, 地球社会基盤学系, 助教 (10786031)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 水災害リスク評価 / 氾濫シミュレーション / 氾濫制御 / 人口減少 / 応用都市経済モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度においては,石川県を流れる一級河川梯川流域での大雨事例に関する複数の数値気象シミュレーション結果を入力とした流出解析及び氾濫シミュレーションを実施し,大雨の発生頻度と氾濫シミュレーション結果に基づく期待浸水深の算定を行い,水災害リスクの高い地域の抽出を行った. また,既存道路を活用した氾濫制御施設を想定した氾濫シミュレーションを実施した.氾濫制御施設については,複数の設置パターンや施設高さを与え,ケースごとに浸水域や浸水深の変化を解析し,氾濫制御の有効性を評価した.さらに,氾濫シミュレーションより得られる最大浸水深分布を用いた経済損失の算定を行い,氾濫制御施設の設置に伴う洪水氾濫被害の軽減効果についても評価を行い,最大で約20%の被害軽減効果が期待されるとの結果を得た. 対象地域における将来の人口動態とそれに伴う都市構造変化が水災害リスクに与える影響を評価するために,人口減少下における人口分布と氾濫シミュレーション結果を用いて,水災害リスクの変化を検討した.人口減少を考慮するにあたっては,人口が一律に減少する場合と,対象地域である石川県小松市の都市マスタープラン及び氾濫シミュレーション結果より定めた居住規制区域と誘導区域間での人口移転が生じる場合を仮定し,各ケースでの経済損失の推定を行った.また,応用都市経済モデルを用いた都市変容シミュレーションにおいて,人口減少と高リスク地域に対する市街化区域面積の削減を反映し,都市構造変化時の経済損失の推定を行った.一律の人口減少を仮定した場合に比べて,応用都市経済モデルによる結果を用いた場合は経済損失の減少幅が小さいとの結果を得た. さらに,モバイル空間統計データに基づく平日・休日及び昼夜間における人口分布の違いを考慮し,洪水氾濫発生時の地域内における要避難者分布と避難所の負荷の違いについて評価を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
既存道路を活用した氾濫制御施設を想定した氾濫シミュレーションにおいては,制御施設の設置時の浸水域や浸水深の比較に加え,経済損失の算定と,経済損失の軽減効果の評価まで進めることができ,当初の計画以上の進捗が得られた.また,当初の対象地域として選定した梯川流域に加えて,隣接する一級河川である手取川流域についても,氾濫解析モデルの構築と氾濫制御施設を想定した氾濫シミュレーションを実施することができた.これにより,比較的地形勾配の緩い梯川流域と,地形勾配の大きい手取川流域における氾濫制御施設の有効性の比較を行うことができ,当初計画に比べて,より広範な検討を行うことができた. 人口減少と都市構造変化を想定した水災害リスクの評価については,当初計画では応用都市経済モデルを用いた都市変容シミュレーションのみを実施する予定であったが,対象地域内における一律な人口減少を想定した場合の都市構造変化と,それに基づく洪水氾濫発生時の経済損失の変化についても推定を行うことで,経済損失の潜在的な最大軽減効果と,経済原理を考慮した場合の結果について比較を行うことができた.また,応用都市経済モデルによるシミュレーションにおいては,2021年度に予定していた都市計画的施策(市街化区域面積の変更)の効果の検討に着手することができた. モバイル空間統計データを活用した洪水氾濫発生時の避難可能性の評価については,平日・休日及び昼夜間における人口分布の違いを考慮した地域ごとの要避難者数や避難所の収容人数に加えて,2021年度に予定していた人口減少下での人口分布の違いを考慮した避難可能性の評価を実施することができた. また,大雨の発生頻度と最大浸水深分布に基づく期待浸水深の算定については当初の計画通り進めることができた. 以上のことから,本研究は当初の計画以上に進展していると評価するものである.
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Strategy for Future Research Activity |
都市構造変化が水災害リスクへ与える影響の評価については,水災害対策としての都市計画的施策の検討と応用都市経済モデル(CUEモデル)への適用を行う.人口減少下においては,水災害リスクの低い地域における人口密度の低下と,それによる高リスク地域からの移転者の収容ポテンシャルの上昇を想定し,移転を促進する施策の検討とCUEモデルへの実装を行う.検討する施策は,高リスク地域における市街化区域率の変更や,低リスク地域への移転の際の財政補助などとする.また,これらの都市計画的施策による移転促進効果が小さい場合には,地域ごとの水災害リスクに応じた経済的負担(例えば水害保険料)を課すなどして,CUEモデルに実装する.これらによる都市変容シミュレーションを実施し,高リスク地域から低リスク地域への移転率や,洪水氾濫発生時の経済損失の軽減効果を評価する. 既存道路を活用した氾濫制御施設設置時の水災害リスク評価と,最適な対策の在り方の検討については,2020年度に実施した手取川流域での仮設洪水防止壁の設置を想定した氾濫シミュレーション結果に基づく浸水範囲や浸水深の詳細な評価を行う.また,土地利用と浸水深及び浸水継続時間に基づく経済損失評価を行い,仮設洪水防止壁による被害軽減効果を評価する.地形特性の違いによる氾濫制御施設の有効性についても評価を行い,仮設洪水防止壁の仕様変更や他の対策の検討を行う. 洪水氾濫発生時の避難可能性評価については,2020年度までに実施した氾濫制御施設を考慮した氾濫シミュレーション結果を用いて,対策実施前後における要避難者の分布や各避難所の負荷,及び避難猶予時間の変化について評価を行う.また,CUEモデルによる都市変容シミュレーションとも連携し,人口減少に伴う都市構造変化下における要避難者数の分布等の検討を行う.
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Research Products
(12 results)