2021 Fiscal Year Annual Research Report
水災害適応型社会実現のためのリスク評価と都市変容シミュレーション手法の構築
Project/Area Number |
20H02255
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
谷口 健司 金沢大学, 地球社会基盤学系, 教授 (20422321)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渋尾 欣弘 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任准教授 (00573560)
高山 雄貴 金沢大学, 地球社会基盤学系, 准教授 (90612648)
山口 裕通 金沢大学, 地球社会基盤学系, 助教 (10786031)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 水災害リスク評価 / 氾濫シミュレーション / 氾濫制御 / 人口減少 / 応用都市経済モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度においては,梯川周辺域を対象とした人口減少下での都市構造変化に関するシミュレーションの高度化のために,応用都市経済モデルの高解像度化を進めた.新たに入手したモバイル空間統計データを活用し,従来の2kmメッシュから500mメッシュへと高解像度化を行い,シミュレーションを実施した.当該結果に基づく洪水氾濫発生時の氾濫被害額算定の結果,2km解像度では移転に伴う都市構造変化後の方が,一律な人口減少時よりも氾濫被害額が大きくなるが,500m解像度では移転によって氾濫被害額の軽減が進むとの結果を得た.高解像化によって世帯及び企業の立地選択に関する地域ごとの違いがより明確に表現でき,浸水域からの移転の効果が適切に評価可能となったと考えられる. 洪水氾濫発生時の要避難者数の算定においても,500m解像度のモバイル空間統計データを活用し,平日・休日及び昼夜間と,多くの人の移動が想定される夏季休暇期間における人口分布の違いを考慮した評価を行った.夏季休暇期間に梯川周辺で氾濫が生じた場合,要避難者に有意な増加があることが認められた. 梯川を対象とした氾濫シミュレーションにおいては,本川よりも計画規模が小さい支川からの氾濫が評価できるように氾濫解析モデルの高度化を行った.梯川本川と,支川のひとつである八丁川の同時破堤を想定した場合,最大浸水深については梯川単独破堤の場合と明瞭な差はみられなかったが,浸水継続時間については9時間以上にわたって広範囲での浸水が長期化するとの結果を得た. また,梯川に隣接し,大規模洪水時には梯川右岸まで氾濫が広がる手取川を対象として,氾濫制御施設の設置を想定した氾濫シミュレーションを実施し,その効果を検討した.手取川は我が国有数の急流河川であり,河道周辺の地形勾配も大きいことから氾濫制御施設による貯留効果も小さく,浸水深分布にも顕著な変化はみられなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
応用都市経済モデルについては当初計画の通り人口減少下での都市構造変化シミュレーションを実施するとともに,計画には含めていなかった高解像度化を進めることができ,人口減少下における都市構造変化シミュレーションにおいて世帯と企業の増減のコントラストが明確に表現できることとなり,当初予定していなかったモデル解像度の影響の検討や,水災害リスクの軽減への有効性評価を行うことができた.2021年度に予定していた移転促進のための都市計画的施策(都市計画的施策)については,2020年度に既に検討し応用都市経済モデルへの実装を完了していたことから,そのシミュレーション結果に基づく要避難者数の変化についても評価を行うことができた. 要避難者数の算定については,新たなモバイル空間統計データを入手することで,人口分布の大きな変化が見込まれる夏季休暇期間を含むなどの拡張を行った. 既存道路を活用した氾濫制御施設を想定した氾濫シミュレーションについては,対象地域として選定した梯川流域に加えて,隣接する一級河川である手取川流域についても実施することができた.梯川・手取川両流域における氾濫流の貯留効果の定量的評価から,地形勾配の大きい流域においては貯留効果が小さく,貯留効果ではなく適切な氾濫流誘導を目的とした設計が不可欠であるとの知見を得るなど,当初の枠を超える成果を得ることができた. 梯川を対象とした氾濫シミュレーションについては,本川に比べて一般的に治水安全度が低い支川からの氾濫の影響を考慮するためのモデル化とそれに基づく氾濫解析を,当初計画に追加して行った.当該シミュレーションによって本川と支川の同時氾濫によって浸水継続時間が長期化するとの結果を得ることができ,当初の計画を超えて水災害リスク評価を行うことができた. 以上のことから,本研究は当初の計画以上に進展していると評価するものである.
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Strategy for Future Research Activity |
人口減少下において水災害リスクが低い地域に生じる余剰地への移転を促進する施策を検討し,応用都市経済モデルへの実装と都市構造変化シミュレーションを実施する.具体的には,これまでに実施した市街化区域率の効果について段階的に変更した際の感度分析や,低リスク地域への移転のための経済的補助などを促進策とする.また,地域ごとの水災害リスクに応じた経済的負担(例えば水害保険料)を課すことや,応用都市経済モデルにおける高リスク地域内での土地供給量の削減などを検討,実装し,移転促進効果の評価を行う.また,上記において構築したモデルによる都市構造変化シミュレーション結果に基づいて,洪水氾濫発生時の経済損失及び要避難者数の算定によって水災害リスクの軽減効果を評価する. 氾濫制御施設設置時の水災害リスク評価と,最適な氾濫制御施設の設置パターンの検討においては,これまでに実施した氾濫制御施設を考慮した氾濫シミュレーション結果を用いて,対策実施前後における要避難者の分布や各避難所の負荷,及び避難猶予時間の変化について評価を行う.また,梯川流域に隣接する急流河川である手取川流域を対象として,既存道路の活用に加えて霞提の延伸などの様々な氾濫制御施設設置パターンを想定した氾濫解析を行い,浸水範囲や浸水深の変化に関する詳細な比較を行う.また,土地利用と浸水深及び浸水継続時間に基づく経済損失を算定し,氾濫流の誘導による経済損失の軽減効果を評価する. 梯川支川からの氾濫を表現した氾濫解析については,入力とする洪水波形や本川と支川からの氾濫の時間差などを様々に変更して実施し,最大浸水深や浸水継続時間,経済損失の算定を行い,水災害リスクへの影響を検討する.また,2021年度にモデル化した八丁川以外の支川についてもモデル化を進める.
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Estimation of Potential Economic Losses Due to Flooding Considering Variations of Spatial Distribution of Houses and Firms in a City2021
Author(s)
Kotone Kaito、Taniguchi Kenji、Nakamura Koichi、Takayama Yuki、Division of Environmental Design, Kanazawa University Kakuma-Machi, Kanazawa, Ishikawa 920-1192, Japan、Faculty of Geosciences and Civil Engineering, Kanazawa University, Ishikawa, Japan、Nihonkai Consultant Co., Ltd., Ishikawa, Japan
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Journal Title
Journal of Disaster Research
Volume: 16
Pages: 329~342
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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