2021 Fiscal Year Annual Research Report
Characteristics of response of coastal morphological system in dynamic equilibrium to the change of sea level and wave direction
Project/Area Number |
20H02256
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
由比 政年 金沢大学, 地球社会基盤学系, 教授 (20262553)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
楳田 真也 金沢大学, 地球社会基盤学系, 教授 (30313688)
二宮 順一 金沢大学, 地球社会基盤学系, 助教 (20748892)
谷口 健司 金沢大学, 地球社会基盤学系, 教授 (20422321)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 海浜変形 / 多段砂州 / 漂砂循環系 / 海面上昇 / 波向き変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,地球温暖化に伴う海象変動として,海面上昇と波向き変化が海浜システムに及ぼす影響に着目して,海浜地形の応答特性の推定や将来の海岸保全に関わる基礎検討を実施する.2021年度は,以下に示す検討を行って一連の成果を得た. 石川海岸における海浜地形の相対海面変化に対する応答特性解明の一環として,土砂供給河川からの距離や相対位置(河口両岸において沿岸漂砂の上手側・下手側いずれに位置するか)に応じた適応変動の規模や速度の違いに着眼して,基準地形(時間平均地形)の等深線変動の特性を解析し,砂州地形変化と対照させることで,砂州システムが基準地形の水深変化にどのように応答したかの特性を把握することができた.また,相対海面変化の異なる2つの領域において波浪変形解析を実施し,両者の特性を比較することで,後背海浜への影響の違いを示した.この他,砂州地形変化と関連する漂砂移動の特性について成果発表を行い,併せて,対象海岸の特徴を模擬したモデル地形を対象に平面地形変化を解析して,漂砂循環系の特性と入射波向き変化の関係に関する基礎検討を行った. 並行して,将来予想される海象変動の特性解明の一環として,当該海岸を対象とした波浪に関する将来予測数値計算に基づいて,現在気候(2000-2010年)および将来気候(2060-2070年)の2つの年代における波高・周期・波向きの特性および気候変化に伴う将来変化の解析を行って,その特性を整理し,予想される波向き変化が漂砂輸送にどのような影響を及ぼしうるかの推定を行った.また,近年の観測値および長期海洋再解析データを活用して,対象海岸の海岸流の特性とその季節変化,年々変動の特性解析について成果発表を行った.この他,将来の海面上昇,波浪変化に伴って,海浜背後域への波浪遡上特性がどう変化するかを推定するためのモデル構築を進めた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,地球温暖化に伴う海象変動として,海面上昇と波向き変化が海浜システムに及ぼす影響に着目して,海浜地形の応答特性の推定や持続可能な保全に関わる基礎検討を段階的に進めている.これまでに,相対海面変化に対する多段砂州系の応答特性の解析および気象変動に伴う海象特性の変化やその影響について検討を行い以下の進捗状況にある. 過去の海岸侵食(海底面低下=相対海面変化)により多段砂州の形成・移動形態がどう変化したかに着目し,応答変化の開始・収斂のタイミング,緩和時間等について,長期広域現地観測データに基づく解析を行い,基本特性を把握することができた.また,土砂供給河川からの距離や相対位置に応じた適応変動の規模や速度の違いに着眼して,基準地形(時間平均地形)の等深線変動と砂州地形変化と対照させることで,基準地形の水深変化(相対海面変化)に対する砂州系の応答特性を把握できた.また,砂州システムが有するエネルギー減衰効果の変遷を波浪数値解析により推定し,応答前後において砂州系が有する減衰効果の違いや相対海面変化による相違を示すことができた.並行して,気象変動に伴う海象変化の特性解明の一環として,長期波浪再解析および推算解析結果に基づいて,過去(1980年代),現在(2000年代),将来(2060年代)の3つの年代における波浪(波高・周期・波向き)特性の変化を解析し,高波浪の入射方向について,長期変化特性や沿岸漂砂への影響を推定することができた.また,近年の観測値および長期海洋再解析データを活用して,石川海岸の海岸流の特性とその季節変化,年々変動の特性を示した.気象特性と波向き変化の関連に関しても,海上風の変化と波浪特性変化との相関解析に着手して初期成果を得ている.
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は,これまでに実施した研究結果を踏まえて,以下に示す検討を行う. <A> 相対海面変化に対する多段砂州系の応答特性の解明と将来応答予測:過去の相対海面変化に対する基本地形や砂州システムの応答履歴および波浪伝達特性の変化を比較対照し,将来予想される海面上昇への応答を推定する.また,予想される海象変化を想定した波浪変化,地形変化の予測解析を行い,アナロジー的に推定された応答特性と比較対照する. <B> 高波浪の入射方向変化が循環的漂砂場に及ぼす影響の解明と将来応答予測:長期波浪推算データを解析し,現在および将来気候下で予想される冬季高波浪の 波浪特性(波高,波向き)の変化や海上風特性との関連について解析を行い,将来変化特性を推定する.その結果に基づき,対象海岸の特徴を模擬したモデル地形を対象に,等深線変化モデル等を用いた波浪変形,地形変化解析を行い,予想される入射波向きの変化に動的平衡系がどう応答するかを推定する. <C> 将来の海浜応答が周辺地域へ及ぼす影響に関する試行検討:上記の検討に基づいて将来の海浜地形特性を設定し,後背域への波浪遡上,越波特性の変化に関する試行検討を行う.並行して,そのために必要な推定モデルの構築・拡張を実施する. また,一連の研究成果をとりまとめて,学術雑誌への投稿および学会発表を行う.
|
Research Products
(6 results)