2021 Fiscal Year Annual Research Report
都市気象LESモデルによるゲリラ豪雨の「種」の解明と気候変動下の将来変化予測
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20H02258
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山口 弘誠 京都大学, 防災研究所, 准教授 (90551383)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相馬 一義 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (40452320)
梶川 義幸 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 上級研究員 (20572431)
小川 まり子 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 助教 (00785719)
岩井 宏徳 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所電磁波伝搬研究センター, 主任研究員 (10359028)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | LES / ゲリラ豪雨 / ヒートアイランド / 気候変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,ゲリラ豪雨を引き起こす単独積乱雲発生のきっかけとなる熱的上昇流に焦点をあて,熱的上昇流の発生・発達についての支配的な要因やメカニズムを定量的に解明すること,並びに熱的上昇流自体への気候変動の影響を評価することを目的とした. この目的を達成するために,2 km解像度領域気候モデル出力から,現在気候と将来気候それぞれでゲリラ豪雨が発生し得るような環境場を多数作成し,自己組織化マップを用いて特徴的な環境場を抽出し,都市気象LESモデルを用いて神戸市と六甲山系を再現した夏季の積雲シミュレーションを多数行った.その際,雲による日射の遮蔽を考えるためのスキームを導入した. 熱的上昇流の発生に着目した解析を行った.まず,熱的上昇流の発生段階において,地表面付近からの暖かい空気を保持するというプロセスこそが重要であることを示した.そして,熱的上昇流は,標高の高い山の背後と建物が密集している場所で発生しやすいことを明らかにした.さらに,熱的上昇流の発生と環境場の関係を探り,流入風が弱いほど熱的上昇流が発生しやすいことを示した.ただし,高い建物が密集しているエリアでは流入風が局所的に弱まるため,どんな環境場においても熱的上昇流が発生しやすいことを確認し,熱的上昇流の発生には高い建物の密集が大きな要因であることを明らかにした. また,ドップラー観測解析から,地表面近くにおいて,渦管の正負ペア構造が存在することを発見した.鉛直方向の連続性があった事例も確認することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
都市の熱効果を雲の有無によって日射量の違いを表現するために,LESモデルに気象情報と陸面情報をリンクさせるスキームを導入できたことは,本研究に限らず都市気象モデル開発にとって大きな改良であったと言える. また,世紀末を想定した将来気候モデルから夏季のゲリラ豪雨が発生しうる特徴的な環境場を抽出できたこともこのデータの汎用性は高い. そしてなりより,都市で発生する熱的上昇流のメカニズム解明に貢献しており,順調な成果を上げたと判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
観測とさらに連携し、渦糸・渦管プロセスの表現を精緻化する。加えて、複数のLESモデル解析をベースとして、都市の効果を対象に、地表面状態の差異による上昇流の強さ・発生位置・発達過程などの違いを解析し、豪雨に繋がる上昇流に必要不可欠な物理プロセスを明らかにする。
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