2020 Fiscal Year Annual Research Report
イルーシブな低気圧による沿岸災害の予見性向上に関する研究
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20H02260
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
中條 壮大 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (20590871)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
二宮 順一 金沢大学, 地球社会基盤学系, 助教 (20748892)
金 洙列 熊本大学, くまもと水循環・減災研究教育センター, 准教授 (60508696)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 台風 / 高潮 / 気象津波 / 爆弾低気圧 / 微気圧波 / 確率台風モデル / リアルタイム予測 / 気候変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
(A)気象庁予報とJTWCが提供している台風予測情報は自動取得できている.日本近海においては経路予測に明瞭なバイアスがあることが明らかとなった.また,台風予測の不確実性を評価した防災教材の開発も開始し,100名以上の被験者から改善点についての意見を収集している. (B)2021年3月より高性能微気圧計による大阪,神戸,和歌山の3地点で連続計測を開始した.また,大阪南港においても同時期に水位モニタリングを行っている.この1年間で顕著な高潮事例は発生していないが,異常潮位は発生しており,気圧波との関係を分析している.また,2022年1月にトンガにおける海底火山が噴火し,それに伴う微気圧波が全球を移動し,日本国内の広範囲で気象津波・津波の複合現象が発生した.このような低頻度大災害事例の計測にも成功している.この期間の観測データは公開し,既に10件以上の国内外研究者に提供を行っている. (C)気候予測データセットであるd4PDFとMRI-AGCM150年予測の結果を用いた爆弾低気圧の発生数・強度・経路の変化について解析するとともに,沿岸波浪の将来変化について調査した.その結果,強い爆弾低気圧の増加,経路の北方へのシフトが見られ,日本沿岸の極端波浪における爆弾低気圧の寄与が大きくなることが示された. (D)全球確率台風モデルを用いた多数の台風データセットに対して回帰モデル型最大高潮偏差予測モデルを適用し,低頻度大災害イベントの確率評価を3大湾に対して行った.沿岸都心部における高潮・高波・潮汐・波の越波・高潮の越流・マンホールの逆流・降雨・地表面流・河川等の複合要因による浸水予測モデル (SuWAT-IFORM) の開発を行い, SuWAT-IFORMの現地と単純地形に適用して,適用性を検討した. これらの研究成果については,研究論文13編と口頭発表5件にて公表されている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(A)JTWCを含めた台風予測情報の自動取得と統計分析は予定通り進行し,台風予測トレンド分析と台風の特性値に関する回帰モデルの構築については基礎的な分析が終了した.ANN構築のための高潮解析データセットとして,3大湾を対象に数千ケースの計算結果を取得した.3大湾の代表地点を対象に,最大高潮偏差についての新たな回帰モデル式を提案した. (B)関西地方の3地点に微気圧計を設置し,約1年間の実測データを取得した.この間,大阪南港で異常潮位観測も行っている.大阪湾を対象に微気圧波で生起される気象津波の特性解析を行った.特に解析解像度が湾奥の水位変動や発生流速に及ぼす影響を検討し,港湾スケールの振動による増幅を考慮するために30 m程度と高解像度な解析が必要となることを示した.また,大阪湾奥の気象津波の事前予測に向けたANNモデルの検討を進めた.2022年1月に発生した海底火山噴火による気象津波の再現計算についても,広域・高解像度解析の影響評価の観点から研究を始めた. (C)気候予測データセットであるd4PDFとMRI-AGCM150年予測の結果を用いた爆弾低気圧の発生数・強度・経路の変化について解析した結果,強い爆弾低気圧の増加,経路の北方へのシフトが見られ,日本沿岸の極端波浪における爆弾低気圧の寄与が大きくなることが示された. (D)全球確率台風モデルのバイアス補正法の修正を行うとともに,近年の台風事例の極値評価への影響度を分析した.回帰モデルによる最大高潮偏差予測モデルの改良と,それを用いて極端高潮イベントの確率評価およびデータスクリーニングを行うことの妥当性を検証した.沿岸都心部における高潮・高波・潮汐・波の越波・高潮の越流・マンホールの逆流・降雨・地表面流・河川等の複合要因による浸水予測モデルを開発し,適用性を検討した.これにより,複合災害のリスク評価を行う下地が整った.
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Strategy for Future Research Activity |
(A)前年度までの結果を踏まえて,リアルタイム確率台風モデルの構築と検証,高潮予測に及ぼす影響評価が次年度の目標である.特に過去の顕著事例における予報の不確実性が及ぼす寄与についての分析・評価は重要と考えている.回帰モデルとともにANNモデルによる即時予測手法の構築にも取り組むが,その際には微気圧波による気象津波のANNモデルによる予測と共通点・相違点についても評価する. (B)コロナ禍で旅費支出が計画より大幅に減少したため,微気圧計の再設置で対応するとしていた計画を変更し,やや安価な微気圧計を追加で2台購入することとした.これを,熊本と金沢に設置を行い,微気圧データの連続取得を行い,より広域の実測データの整備を行う予定である.前年度までに大気・海洋・波浪結合モデルであるCOAWSTの導入を行った.過去事例についてこうした結合モデルによる高分解能解析を行い,前線や低気圧由来の微気圧波の発生メカニズムを解析し,これまでの微気圧波特性が気象津波に及ぼす影響の検討結果と関連させ,将来の事前予測や頻度評価へとつながる知見を取得することを目指す. (C)引き続き爆弾低気圧の発達ポテンシャルの評価や発災機構の詳細解明を行うとともに,その予見性についても検討する.また,爆弾低気圧による微気圧波発生の可能性についても過去の事例分析から評価する. (D)d4PDFデータセットによる精度向上を図った現モデルとともに,d2PDFデータセットを用いた低放射強制力場での将来影響評価を実施する.既に3大湾を対象とした回帰モデルによる評価も行っているが,九州・四国など南方の海域を中心とした高潮の将来影響評価を行うとともに,高波の簡易推定モデルを活用したスクリーニングを実施し,低頻度高波イベントの将来変化についても行う.
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[Journal Article] Development of a coupled coastal flood model of surge, wave, precipitation and sewer backflow for urban area2021
Author(s)
JO, J., Kim, S., Mase, H., Mori, N. and Tsujimoto, G.
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Journal Title
土木学会論文集B2(海岸工学)
Volume: Vol.77, No.1
Pages: I_253-I_258
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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