2021 Fiscal Year Annual Research Report
Optimal Management Strategy on Forested River Channels Considering the Interaction between Flood Control Security and Fluvial Ecosystem Conservation
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20H02261
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
宮本 仁志 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (50283867)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸田 祐嗣 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (60301173)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 河川樹林化 / 河川管理 / 環境水理学 / 水工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、河川の樹林化課題に対して、近年頻発する豪雨災害に鑑み、「早急に対処しなければならない樹林化」と「残しておいても大丈夫な樹林化」を合理的に判別する河川技術を検討している。中間年度の研究実績の概要は以下のようである。 1)現地観測・分析:今年度もコロナ禍で現地観測が計画どおりに行かなかったため、鬼怒川の一部区間に限定して秋期に樹林化河道の踏査とドローンによる空撮計測を実施した。あわせて、黒部川・加古川・高津川の既存データを検討に加えてドローン空撮結果の整理を行った。さらに、樹林化現象が顕在化する以前の河道状況を実証的に把握・分析するために、第2次世界大戦直後のモノクロ空中写真を対象とした地被分類の深層学習アルゴリズムの開発を行った。 2)解析モデル:土砂水理学ベースの決定論的モデルにおいて、洪水や人為的な植生伐採後の樹木再繁茂過程を組み込みデルを拡張した。植生再繁茂は地下部に残存した植生バイオマスから地上部へのバイオマス輸送によることから、それらのプロセスを取り入れた植生動態モデルを新しく開発した。一方、洪水インパクトや植生進入の不確実性を考慮した数理生態学ベースの確率論的モデルについては、解析対象断面への植生の侵入・成長・流失プロセスの精緻化を行うとともに、河川の複数断面間での並列計算処理の導入、流量・水理・植生の各サブモデルのモジュール化など計算効率化を実施した。 3)河川分析技術の高度化:昨年度までに国際共同研究として開発してきた河川地被状態の自動判別アルゴリズムを鬼怒川・黒部川の複数河道に適用させた。具体的には、鬼怒川・黒部川において本研究課題で計測したUAVデータに、CNNによる深層学習・RFとウェーブレット解析による機械学習アルゴリズムを用いた河川地被状態の自動判別アルゴリズムを適用させ、樹林化現象を規定する空間スケールを検出するための河川地被分析に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、(1)現地観測とデータ分析、(2)2つのモデル(決定論的モデルと確率論的モデル)の開発による解析を実施して、総合的に研究目的を達成する目論見である。中間年度は、初年度に引き続きコロナ禍の影響下においてできることを優先させることによって、結果として、おおむね順調に研究が進捗したと考えている。当初計画の中で、コロナ禍の影響を最も大きく受けたのは現地観測である。これは、観測計画を縮小させて秋季1回にし、対象地点も最小限に限定するとともに、観測項目を精緻化させて樹林化に直接関連する項目のみにするなど、初年度に引き続き当初計画の大きな変更が余儀なくされている。その一方で、新たに、黒部川・加古川・高津川を検討の対象に加えて、UAV空撮データの整理を行ったこと、河川地被分類の深層学習・機械学習アルゴリズムを新たに開発・精緻化したこと、地上部・地下部間のバイオマス交換を取り入れた植生動態モデルを開発したことなどは、コロナ禍で観測研究が困難ななかで、全体的に研究計画を遂行させていく積極的な改善点・推進点と考えている。さらに、解析モデルに関しては、数理生態学ベースの確率論的モデルおよび土砂水理学ベースの決定論的モデルの開発はともに、全般的に予定通りに推進することができている。以上のことより、中間年度においても、総合的に考えておおむね順調に研究が進捗したと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の全体的な推進方策としては、今後もコロナ禍の影響が続くことを念頭において、検討項目間の優先順位を柔軟に変更し、検討内容を精査・改善することによって当初目的の達成を目指すものとする。2022年度は最終年度であり、これまでの検討内容を精査し、以下の4つの内容を優先的に検討して研究課題を取りまとめる予定である。 1) 現地観測による樹林化消長過程の実証的把握: 鬼怒川でのモニタリング調査を継続する。また、これまでに蓄積された鬼怒川・黒部川・加古川・高津川などの現地観測のデータベースを用いて、樹林化消長過程の特徴を的確に捉える空間スケールを明らかにする。 2) 土砂水理学ベースの決定論的モデルによる樹林化維持機構の解明: これまでに開発してきた土砂水理学ベースの決定論的モデルに、樹木伐採など人為的樹木管理の効果を組み込み、洪水外力と人為的伐採の両面を考慮した再樹林化機構を解明する。開発したモデルを用い、洪水時に自然営力で流出する植生帯、人為的伐採による樹木管理が必要な植生帯を特定し、対象河川やセグメントごとに最適な樹木管理戦略を明らかにする。 3) 数理生態学ベースの確率論的モデルによる樹林化河道の確率評価: これまでに開発してきた数理生態学ベースの確率論的モデルを用いて、対象河道区間の標準横断面に対してモンテカルロシミュレーションを実施する。得られた植生繁茂状況と洪水水位の同時確率密度分布から治水安全性と樹林化傾向を確率評価し、「早急に対処しなければならない樹林化河道」と「残しておいても大丈夫な樹林化河道」を合理的に判別する。 4) 治水安全と生態系保全の相互影響関係を考慮した樹林化河道の最適管理戦略の提案: 上記1-3での知見をベースにして対象流域の各河道に管理上の優先順位をつけ、治水安全と生態系保全の相互影響関係を考慮した樹林化河道の最適管理手法を提案する。
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Research Products
(10 results)