2020 Fiscal Year Annual Research Report
Smart Urban Degeneration by Learning from Biomimetics
Project/Area Number |
20H02265
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
谷口 守 筑波大学, システム情報系, 教授 (00212043)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村木 美貴 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (00291352)
和田 健太郎 筑波大学, システム情報系, 准教授 (20706957)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 都市退化 / バイオミメティックス / エネルギー / モビリティ / アーバンフォーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、多くの都市は人口減少を通じて機能低下を続け、個々のカンフル的対策はむしろ逆効果にさえなっていることを問題視している。そもそも都市の成り立ちや機能は生命体に酷似しており、既に多くの都市が様々な成人病に罹患している状況(アーバン・フレイル)にあると考えられるが、その実態は不明である。都市の効果的な維持再生のためには、都市を生き物と見立て、予防措置・対症療法としての成人病対策を行う必要がある(バイオミメティックス)。特に避けられない人口減少や機能低下を都市政策の中で生き物から得られる知見をスマートに取り込む新たな「退化型マネジメント」を提案するための多面的な研究を展開している。 まず、幸いなことに初年度の成果としてバイオミメティックスの共著書籍をさっそく取りまとめることができた。バイオミメティックスは様々な学際領域に係る研究トピックであるが、その中で都市とのかかわりを明確化し、その位置づけと体系化を行うことができたのは大きな成果である。また、アーバン・フレイルの実態としてカスケード的に各都市の老化現象が進捗していることを全国の自治体を対象に明らかにした。あわせてその逆方向への若返り施策の在り方について言及を行っている。 退化型マネジメントを着実に実行するためには、下記の構成要素としての研究に取り組み、それぞれ審査付き論文としての研究実績をあげている。具体的には、購買環境をはじめとする都市細胞に相当する諸要素に対する評価の変遷、都市の循環機関といえる公共交通ネットワークの持続可能な維持体制、退化型政策である立地適正化計画導入の効果、およびこれら目標管理型の評価方法が生態系としての都市の持続可能性に対して親和性を有するかといった諸課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で記載したとおり、初年度において集中的に多くの研究業績をあげることができ、極めて順調な形で本研究は進捗している。特に当初設定していた研究の範囲にとどまることなく、今までには無かった新たな着眼点もこの1年間で複数見つかっている。その全体体系と位置づけに関しては、生物系、化学系、人文系など他分野の研究者との意見交換を元に、新たな研究ジャンルとしてエコミメティックスの視野が開けつつある。特に今まで非常に幅広いバイオミメティックス分野の中で、都市計画分野が初めて認知され、位置づけられたということの意義は極めて大きい。 個々の研究成果として、個人の老化が進捗する現象であるフレール化が統計的分析の結果、都市においても確認することができた。東京都内の特定の区部はその意味で指標的には老化が進みにくい状況にあるが、国内の多くの自治体において、不可逆的な老化が進行していることが示され、具体の都市や地域を対象にした対策の提案を行っている。都市や地域自体を生態系として捉えると、その症状や治癒方策において具体のメニューが浮かびやすく、またカンフル型ではない身の丈に応じた対応策が乱されやすい点は、本研究の進捗結果として得られた一つのポイントである。 また、経年的な分析を通じて、世代ごとに都市に対する向き合い方が異なっており、世代と年代に応じた対応策を示すことの必要性が明らかとなった。また、アーバン・フレイル解消のための都市ダイエットの手段として導入されたコンパクト化政策の一つである立地適正化計画は、地価への反映という点では必ずしも数字で見えるだけの効果を確認できないことも明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画申請時とは現在状況が異なっていることとして、Covid-19による感染拡大の影響があげられる。これに伴って個人の暮らし方や価値観も大きな影響を受けており、その実態を無視して本研究を続けるわけにはいかない状況となっている。また、この変化に乗じてDXやリモートワークの普及が進みつつあり、それに伴って実空間への人出が減少することで、生態系としての都市の存続が大きな試練にさらされている。 このような流れの中で課題に対処していくため、現在政府では「機動的(アジャイル)なまちづくり」の必要性が示唆されている。先述した、バイオミメティックスの観点を超えるエコミメティックスの観点から、イノベーションが進む中で果たして我々はどのような「退化型マネジメント」を執り行うことが望ましいのか、その本質的課題に切り込むべく、複数の観点から本課題に関するアプローチを継続する。 特に都市を構成する個人に着目し、その属性の違いによってどのような交通行動の違いが生じているのか、またそれを通じて、都市圏の生態圏としての状態がどのように推移しているのか、総合的な観点から検討を加えていく。全体の研究構成として、「予防診断」「体質改善」を通じて「未病」の状況にどう都市をリセットするのか、またその仕組みを自律的に回していけるようにするのはどうすればよいのか、昨年度の取り組みでは十分に得られなかった新たなデータ整備も含めて検討を進める。特に都市や地域の成熟環境に対応した構成者間の協調と相互扶助の関係を配慮し、症例に応じた対応策を示せるようにする(退化マネジメント)。
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Research Products
(15 results)