2020 Fiscal Year Annual Research Report
Modeling of Gait Induction Mechanism Based on Visually Induced Postural Reflexes as a Fundamental Technology for Human Flow Control
Project/Area Number |
20H02273
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
古川 正紘 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (40621652)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 人流制御 / 群衆流 / 人流モデル / 錯覚インタフェース |
Outline of Annual Research Achievements |
都心駅周辺では,急速な都市開発により,駅構内の混雑が問題となっている.混雑原因の分析は人流モデルによる解析や駅施設内の実態調査などが進められた上,都市開発の観点から提言がなされている. 一方で,交通インフラの再構築には莫大な資金と開発期間が必要となり,短中期的な観点からは,設備投資費と開発期間の圧縮に資する交通インフラ整備のあり方が切望されている.そこで本研究では,二方向対向流などで生じるスタッキング状態を研究対象とし,シート状の光学素子を敷設するだけで無電源に交通整理効果が期待できる歩行誘導技術を導入する.本手法はレーン形成に寄与し,交通量,密度,流速変動などの人流制御という観点から誘導効果を計測することで,人流制御の機序を理解するとともに人流制御基盤技術の設計法を確立する.
昨年度は,コロナ禍のため商業施設内での実証実験を見送っている.一方で,少人数での被験者実験を実施することで,歩行誘導効果の現象理解に資する成果を得ている.具体的には,人の歩行方位の誘導のための刺激設計論を確立させるために,歩行時の運動学的挙動解析から,誘導効果の最大化を図るための基礎研究を実施した.研究室実験としては実験条件の統制が取りやすいという観点で,本研究課題で採用している視覚提示手法ではなく,前庭電気刺激を採用し,群衆流ではなく単独歩行状態を想定した.さらに閉眼条件とすることで,前庭感覚・体性感覚を視覚刺激と要因分離をした上で挙動解析を進めることができた.
興味深い成果としては,前庭電気刺激の刺激開始前後において,人の歩行位相と身体応答との間に強い相関が観察されたことにある.また下肢・上肢という二重倒立振子制御系として理解可能な応答が観察されただけでなく,歩行中の前庭電気刺激に対する身体反射として運動学的に詳細知見を得ることができた点は有意義であった.本知見は,現在投稿準備中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
群衆流としての解析が遅れている.本研究課題の主軸を単独歩行から群衆流へと移したにもかかわらず,肝心の群衆流としての挙動解析が進んでいないために,上記の自己評価としている.
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Strategy for Future Research Activity |
単独歩行条件ではあるが,前庭電気刺激を用いた歩行誘導現象の機序解明という観点からは,当初の計画にはない成果を得た.この解析をさらに進めるとともに,誌上発表を行う.
群衆流に関しては引き続き,群集を対象とした人流密度や流速という観点から,既往研究で明らかにされている視覚誘導性姿勢反射(OKR)を人流の粒子モデリングに組み込むことで,歩様誘導モデルの構築を行うという,人間情報工学的な設計論を交通工学へ合流させている点で学術的独自性の高い成果の創出を狙う.コロナ禍の解消が見込めないことから,原則的に数理モデル化を研究手段の主軸と考えている.一方で,コロナ禍を脱却し次第,歩行誘導シートを用いた実証実験を再開することで,効果検証を継続して実施していきたい.
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