2021 Fiscal Year Annual Research Report
中小都市における検索履歴データを用いた動学的バス需要予測手法の開発
Project/Area Number |
20H02277
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
桑野 将司 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (70432680)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷本 圭志 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (20304199)
森山 卓 鳥取大学, 工学研究科, 助教 (30823190)
伊藤 昌毅 東京大学, 生産技術研究所, 特任講師 (50530086)
宮崎 耕輔 香川高等専門学校, 建設環境工学科, 教授 (60469591)
細江 美欧 鳥取大学, 工学研究科, 助教 (00907777)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 経路検索履歴データ / 交通系ICカード / ビッグデータ / 公共交通計画 / 交通需要予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,交通行動を直接捕捉するデータが不足している地方中小都市を対象に,経路検索サービスの検索履歴データを用いた交通需要予測の可能性を検証するとともに,移動希望に応じたバス運行計画の立案方法を提案することを目的とする. 初年度の成果から地方中小都市を対象とした検索履歴データを利用しようとすると,経路検索数が発着地の組み合わせや日によっては0件となる0サンプル問題,中心部などの一部の駅を起終点とした経路検索数が多く,郊外部を起終点とした検索数が少ないというデータ偏在性の問題が発生することがわかった.これら検索履歴データの特徴を踏まえたうえで,経路検索行動と駅周辺環境との関連性をBayesian Adaptive Lasso Tobit分位点回帰モデルによって記述し,経路検索数が多くなる都市構成要因を明らかにし,交通系ICカード利用数の多寡に影響する要因との比較をおこなった.その結果,経路検索システムと交通系ICカードでは利用されやすい状況が異なるため,両者を単純に関連づけるようなモデル化では,経路検索数の増減で交通系ICカード利用数の増減は予測できないことがわかった.そこで,(1)2変量状態空間モデルによって経路検索数と交通系ICカード利用数の突発的需要を抽出し,(2)重み付き回帰モデルによって突発的需要変動間の関係性を定量化するという2段階分析方法を構築した.分析の結果,従前モデルとの予測精度の比較から,提案手法の有用性が確認できた.すなわち,経路検索数と交通系ICカード利用数に包含される突発的事象に起因する需要部分を関連づければ,経路検索数を用いることで交通系ICカード利用数の予測精度は高まることを示すことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は,経路検索サービスの経路検索数によって,交通系ICカード利用者数を予測することを目的としている.初年度にあたる2020年度は,曜日や時間帯,起終点の組み合わせなどの観点から経路検索数の多少の特徴を把握した.2年目の2021年度は,初年度の結果を踏まえ,経路検索数の多少に影響を及ぼす要因を統計モデルによって明らかにし,交通系ICカード利用数との関係性を分析した.その結果,経路検索数と交通系ICカード利用数には突発的な需要変動にのみ関連性があるという仮説を得ることができ,その仮説を2段階分析方法によって検証することができた.モデルの安定性に関する検証が今後の課題として残されているが,2年度目までに全体の目的の概ね70%程度の達成率であり,「おおむね順調に進展している」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに,経路検索サービスにおける経路検索数と交通系ICカードの利用履歴で計測される交通系ICカード利用数の関係性を2変量状態空間モデルによって定式化し,経路検索数の増減が実行動者数の増減に及ぼす影響を定量化する方法を構築した.具体的には,(1)2変量状態空間モデルによって経路検索数と交通系ICカード利用数の突発的需要を抽出し,(2)重み付き回帰モデルによって突発的需要間の関係性を定量化するという2段階分析方法を構築した. ここで,日々の交通系ICカード利用数を予測するために肝要となるのが,提案モデルの2段階目において推計される回帰係数である.データの収集期間や分析対象地域などによってモデル推計に用いるデータが変わることで,突発的経路検索数と突発的交通系ICカード利用数の関係性を表現する回帰係数が大きく変化する場合,分析システムの信頼性,妥当性があるとはいえない.最終年度は,重み付き回帰モデルの回帰係数,すなわち経路検索数から交通系ICカード利用数を予測するための拡大係数の時間的,空間的変動性の有無を検証し,分析対象期間および地域を変更した場合の提案モデルの適用可能性を検討する.その上で,事前予測のために,予測日のどのくらい前に収集した経路検索数を用いれば,どの程度の予測精度をもって,突発的な交通系ICカード利用数の変動を含む日々の交通系ICカード利用数が予測可能かを検証する.これにより,本研究の最終目的である経路検索数に基づいて突発的需要を含む日々の交通需要を予測するための方法論を提案する.
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Research Products
(20 results)