2021 Fiscal Year Annual Research Report
宿主特異的ウイルス遺伝子マーカー群の検出に基づく水環境中の糞便汚染評価法の構築
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20H02284
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
原本 英司 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (00401141)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北島 正章 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (30777967)
端 昭彦 富山県立大学, 工学部, 講師 (70726306)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ウイルス / ファージ / 糞便汚染源解析 / 公共用水域 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は,2020年度に引き続いて水環境中の糞便汚染源解析に有効となり得るウイルス遺伝子マーカーとして,体表面吸着大腸菌ファージに着目し,2021年4月~2022年3月に週1~2回の頻度で採水調査を実施すると共に,2019年10月~2021年3月に採取したアーカイブ試料も活用することで,水環境中における存在実態を調査した。 下水処理場の流入水と2次処理水,放流水,豚舎排水および河川水を対象に,大腸菌WG5を宿主に用いたプラック法によって体表面吸着大腸菌ファージを定量し,シャーレ上に形成したプラックを単離した。プラック単離株に対し,マイクロウイルス科に特異的なリアルタイムPCRに供した後,マイクロウイルス科陽性と判定された単離株について,PhiX174マイクロウイルス属に特異的な定性PCRとダイレクトシーケンシングを用いた系統解析を実施した。 体表面吸着大腸菌ファージは,放流水1試料を除くすべての下水と豚舎排水から検出され,河川水からの陽性率も95%(36/38)と高い値であった。下水処理工程での低減率は平均99.89%であった。プラック単離株を用いた解析では,マイクロウイルス科およびPhiX174マイクロウイルス属のいずれも下水と豚舎排水の両方から検出されており,これらの検出に基づくのみでは糞便汚染源は判別できないことが分かった。PhiX174マイクロウイルス属を対象とした系統解析では,体表面吸着大腸菌ファージは高い遺伝的多様性を有しており,今回対象とした塩基配列領域では糞便汚染源解析が困難であると判断された。 また,新たな糞便汚染源解析手法として,マイクロ流体工学に基づくハイスループットリアルタイムPCRを用いた手法を構築するため,ヒト,ブタ,反芻動物等の宿主特異的な微生物遺伝子マーカー検出系11種類を対象に検出条件を検討し,8種類について測定可能であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
下水,豚舎排水および河川水における体表面吸着大腸菌ファージの定量的な存在実態に加え,細分化したマイクロウイルス科,Phix174マイクロウイルス属およびその遺伝子群の存在実態に関する知見を得ることができ,宿主特異的ウイルス遺伝子マーカーとしての体表面吸着大腸菌ファージの有効性を評価するために必要となる知見を得ることができたため。また,次世代の糞便汚染源解析技術として,ハイスループットリアルタイムPCRを用いた測定法の検出条件を検討し,本手法において使用可能な微生物遺伝子マーカー検出系を決定することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では,体表面吸着大腸菌ファージに加え,他のウイルス遺伝子マーカーに関する検討に取り組む予定である。また,ハイスループットリアルタイムPCRを用いた微生物遺伝子マーカーの一斉検出系を構築することで,多数の環境水試料中の糞便汚染源を迅速かつ高感度で同定可能とすることを試みる。
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