2020 Fiscal Year Annual Research Report
好気性脱窒反応を促進した下水処理場エアレーションタンク単槽での窒素除去技術の開発
Project/Area Number |
20H02290
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Research Institution | Nagaoka National College of Technology |
Principal Investigator |
荒木 信夫 長岡工業高等専門学校, 環境都市工学科, 教授 (30193072)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川上 周司 阿南工業高等専門学校, 創造技術工学科, 准教授 (00610461)
青木 仁孝 和歌山工業高等専門学校, 環境都市工学科, 准教授 (80775809)
押木 守 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (90540865)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 好気性脱窒素細菌 / 都市下水処理 / エアレーションタンク / 窒素除去 |
Outline of Annual Research Achievements |
エアレーションタンク内で80%程度の高い窒素除去率を示した都市下水処理場から採取した活性汚泥をサンプルとして、嫌気条件と好気条件(溶存酸素濃度0.5-1.0mg/L)で炭素源として酢酸塩を用いて硝酸除去試験を実施したところ、どちらの条件においても2~3時間の間で硝酸濃度が低下し始め、9時間の時点で全てのサンプルにおいて完全に除去された。この活性汚泥からDNAを回収し、好気性脱窒素反応の鍵となるペリプラズム硝酸還元酵素をコードしたnapA遺伝子を標的としたPCRを行ったところ、増幅が認められ、活性汚泥内にnapA遺伝子を保有する細菌種の存在が明らかになった。 この活性汚泥を供して酢酸塩を炭素源とした硝酸培地で最初は嫌気条件、次に好気条件に推移させた集積培養を行い、その集積汚泥から寒天培地をもちいて単離操作を行った。得られたコロニーから純粋培養した5種の菌体を単離した菌を用いて好気性の脱窒試験(15Nトレーサー試験)を行ったところ、5株に脱窒能(NO3→N2O)が確認された。そのうち、硝酸を窒素ガスまで転換するのは2株であった。5株のサンガーシーケンスによって得られた塩基配列をBLASTで検索したところ、NO3→N2O株はBordetella sp., Achromobacter sp.,であり、N2生成能を示したものはParacoccus sp.,であることを確認した。 当該活性汚泥からDNAを抽出し、16SrRNA遺伝子を標的としたPCRを行った後NGSシーケンス(MiSeq)によって遺伝子解析を行い細菌叢を調査した。好気性脱窒素細菌の単離で特定した細菌種を含む属レベルで、その遺伝子の占める割合は全細菌の16SrRNA遺伝子の0.05%程度であった。この値は今回の単離操作で検出できなかった好気性脱窒素細菌の存在を示唆するものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
都市下水処理場のエアレーションタンク内での窒素除去が卓越している好気槽から採取した活性汚泥サンプル内から好気性脱窒素能を有する複数の細菌種を特定できた。また、次世代シーケンサーMiseqによる解析からその細菌種の活性汚泥内での存在割合も確認した。ただし、その存在割合は小さく、単離できなかった菌種が存在する可能性が考えられる。また、調査したのは一つの都市下水下水処理場から採取したサンプルだけであり、特定した好気性脱窒素種が広く普遍的に都市下水処理場の活性汚泥内に存在するかについては不明である。本年度は1年目でありほぼ予定した工程を実施できた。in-situでの好気性脱窒素能をモニターする技術は装置の作成を終わったが性能評価を行っている最中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は主として以下の3つのアプローチから好気性脱窒素細菌群を活性化させたエアタン内での窒素除去技術を開発する。 ①活性汚泥から単離した好気性脱窒素細菌の培養を行い、好気性脱窒素速度の測定から炭素源、C/N比、DO濃度、水温、pHなどの環境条件の影響を明らかにする。また、最大好気性脱窒素速度を評価する。 ②活性汚泥内に生息する好気性脱窒素細菌が実際にin-situで好気性脱窒反応を進行させているかを評価する手法を開発する。単離された細菌を好気条件と嫌気条件を繰り返して培養を行い、脱窒能の変化と硝酸呼吸速度(aNUR)/酸素呼吸速度(OUR)の比を連続でモニターし、好気性脱窒速度を評価する技術を開発する。これを活性汚泥内の好気性脱窒能の評価が可能であるかを検証する。 ③下水処理場にモデルリアクターを設置し、初沈越流水(場合によってはアンモニアや硝酸塩を添加)を用いてモデル処理実験を実施する。リアクター流下方向でのDO濃度(通風量)、ステップ流入方式、汚泥滞留時間の制御からエアレーションタンク単槽窒素除去の最適運転条件を確立する。
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