2022 Fiscal Year Annual Research Report
高耐震性を有する直接基礎建物を可能とする既存杭を活用した複合地盤の開発
Project/Area Number |
20H02306
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
柏 尚稔 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (40550132)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 直 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (50370747)
中川 博人 国立研究開発法人建築研究所, 国際地震工学センター, 主任研究員 (80713007)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 建築構造 / 地盤工学 / 基礎構造 / 既存杭 |
Outline of Annual Research Achievements |
都市の再生の機運が高まっている中において、建物の建替えを計画する際には既存杭の処理が大きな問題となる。しかし、既存杭を有用物として捉えて再利用することができれば、環境負荷の問題に対して多大な貢献が可能となる。さらに、既存杭を含む敷地地盤に対する適切な補強により地盤の支持力を高めて、新築建物の基礎形式を直接基礎として設計できれば、浮き上がり挙動など建物の損傷低減に繋がる現象を利用して、極大地震に対してレジリエントな建物の設計機構を実現することも可能と考えられる。本研究課題では、既存杭と地盤の両方が安定的な支持力を発揮できる複合地盤の設計法を示すとともに、複合地盤上の建物の巨大地震に対するレジリエンスの評価手法を提案することを目的としている。2022年度の成果は次の通りである。 ・既存杭に建物の鉛直荷重を効率的に伝達させつつ、地震時の建物応答の低減を両立させる工法として、既存杭の杭頭部を地盤改良する新しい基礎形式(地盤改良併用絶縁基礎形式)を提案した。 ・重力場の振動台とせん断土槽を用いて、地盤改良併用絶縁基礎形式を採用した建物模型の振動台実験を実施した。模型地盤としては砂質土を用い、改良地盤の剛性をパラメータとした杭頭絶縁基礎、および杭基礎の実験を実施した。 ・杭頭と改良地盤を剛接合していないことから、杭の最大曲げモーメントの発生個所は地中になること、さらに、杭の最大曲げモーメントは改良体の剛性が小さくなるほど低減することが分かった。 ・実験においては、絶縁基礎もしくは新機構基礎形式の建物には、地震応答に伴う残留傾斜が生じるが、新機構基礎において改良地盤の剛性を小さくすると残留傾斜量は大きくなることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、模型振動実験と有限要素法を用いたシミュレーション解析を通じて、(課題①)建物の浮き上がり挙動など大地震時特有の非線形挙動を含めて直接基礎建物の地震応答性状を把握すると共に、地盤-建物連成系の地震応答評価するに当たって考慮すべき影響因子を抽出すること、(課題②)直接基礎建物の機能継続性を担保するために必要な複合地盤の耐震性能を明確にし、設計での評価指標とモデル化手法を明らかにすること、の2段階で推進することを計画している。 2021年度までは、杭頭絶縁基礎形式の建物の地震応答に着目した重力場での模型振動実験、2021年度は、埋め込みを有する場合における杭頭絶縁基礎形式の建物の地震応答に着目した遠心場での模型実験を実施してきた。その中で、建物重量をより効率的に既存杭に伝達する機構を実現するために、2022年度は杭頭部に改良地盤を併用する新しい基礎形式を検討した。課題①では、基礎的な模型実験により、建物および杭の模型実験を明らかにした。ただし、乾燥砂地盤特有の揺すり込み沈下が生じたため、課題②における建物の地震後機能継続性に関するクライテリアの検討には、模型地盤の工夫の必要性が認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は以下のA)~C)を実施する予定である。 A) 今年度の実験では、地盤の製作方法として難しい部分があるが、せん断土槽を用いて、軟弱粘性土を模型地盤とする振動実験を実施する。軟弱粘性土は今年度までに実施した乾燥砂とは異なり、揺すり込み沈下が生じにくい。すなわち、既存杭の活用を検討する際に重要となる、既存杭と周辺地盤の荷重分担の検討が可能になると考えられる。 B) 今年度までに実施した遠心場および重力場の模型実験に対して、シミュレーション解析を実施する。解析方法は3次元FEM解析とし、地盤の材料非線形性や建物-地盤間の幾何学的非線形性等を詳細にモデル化することにより、実験で生じた基礎の浮き上がり挙動等の現象をシミュレーションできる解析モデルを構築する。また、簡易な設計法の検討として、梁ばねモデルを利用したシミュレーション解析が可能かどうかについても検討する。 C) 今年度までに実施した模型実験を参考に、実大建物を対象として、既存杭の活用方法の実現性を検討する。建物規模としては、①戸建て住宅、②中低層鉄骨造建物とし、杭頭絶縁基礎および地盤改良併用杭基礎における建物支持性能および地震時応答性状を検討する。
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