2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of control and management methods for odors in the elderly care environment
Project/Area Number |
20H02316
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Research Institution | Daido University |
Principal Investigator |
光田 恵 大同大学, 工学部, 教授 (40308812)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 建築環境・設備 / 臭気 / 高齢者介護 / 室内空気質 / 空気環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高齢者介護環境における臭気の適切な管理方法を構築することを目的としており、本年度は、基準値設定に関する調査とガスセンサーを用いた臭気の挙動の検討を行った。 臭気の基準値設定のための対象臭気を探るため、高齢者介護環境臭の構成成分だけでなく、一般の生活環境に存在する12種類のにおいを対象として、90人の被験者に、臭気強度、快不快度、容認性、臭気対策の要否を評価してもらった。その結果、一般に、良いイメージのある香りであっても臭気強度によっては臭気対策の対象となること、硫化水素、メチルメルカプタン、イソ吉草酸などの高齢者介護環境臭の成分が含まれるにおいの不快度が総じて高いこと、特に、イソ吉草酸は、8割以上が対策を必要とすることなどが把握された。 高齢者介護環境臭の成分とされる硫化水素、メチルメルカプタン、アセトアルデヒドの単一成分と混合した複合臭、一般的な芳香剤に用いられる香料に対する半導体ガスセンサーの応答を調査した。その結果、アミン系、硫黄系等の悪臭物質に高感度とされているセンサー(悪臭物質用センサー)が、高齢者介護環境臭において、人の感覚量である臭気強度と対応がみられる一方で、香料にはほとんど応答しないことが明らかとなった。このことから、芳香剤等の香りが同時に存在する室内環境でも、高齢者介護環境臭の測定に悪臭物質用センサーを使用できることが把握された。 似た性質を持つが分子量が異なるエタノールと1-ブタノールの2種類の物質の室内挙動を、1m3チャンバーを用いて検討した。エタノールと1-ブタノールの濃度とガスセンサーの抵抗値比の関係を求めた結果、両物質の応答特性は同程度であった。物質の挙動では、どの測定点も1-ブタノールの方が安定するまでの時間が短かく、におい物質の分子量や蒸気密度の影響が示唆された。また、空間の給排気の位置と臭気の挙動の関連を把握した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、「臭気の基準値設定」では、実際の高齢者介護環境の臭気と感覚的に類似性の高い模擬臭を用いて、臭気濃度や臭気強度といった量的指標と非容認率(受け入れられない割合)の関係を求めることを目指していたが、コロナ禍にあり、様々な濃度の臭気試料を用いて複数の被験者を同時に集めて実験を実施することができず、「臭気の基準値設定」に関しては、高齢者介護環境臭のどの成分を低減・除去すると質が改善されるのかに着目し、「不快感に影響する成分の解明」に専念した。 一方、「センサーによる臭気管理方法の検討」については、高齢者介護環境臭に応答があり、他の臭気の影響を受けにくいセンサーを選定し、介護環境臭に対する感覚量との対応関係を確認するだけの計画であったが、物質による挙動の違いや、室内の給排気の位置による臭気物質の挙動の違いについても検討を進めることができた。 以上より、概ね順調に進展していると判断する。今後も、当初予期していないことが起きた場合にも、検討を進めるべき内容の順番を入れ替えるなど柔軟に対応し、当初の研究目的を達成できるように取り組む計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
「臭気の基準値設定」では、実際の高齢者介護環境の臭気と感覚的に類似性の高い模擬臭を用いて、臭気濃度や臭気強度といった量的指標と非容認率(受け入れられない割合)の関係に関するデータを蓄積し、各施設で適切な基準値が選択できるように、日本建築学会環境基準を参考に、非容認率15%、20%、30%の臭気濃度、臭気強度を求める計画である。コロナ禍であるため、感染予防対策に努め、臭気試料の作成、提示方法、被験者の評価方法等を工夫し、データを収集できるように実施する予定であるが、被験者による評価が困難な場合には、「センサーによる臭気管理方法の提案」に関する検討を先行して進めるといった対応を取る。
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