2020 Fiscal Year Annual Research Report
An international comparison study on modern library planning from the view point of spatial implementation strategies
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20H02319
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小野田 泰明 東北大学, 工学研究科, 教授 (00185654)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
垣野 義典 東京理科大学, 理工学部建築学科, 准教授 (60385523)
松田 雄二 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (70516210)
佃 悠 東北大学, 工学研究科, 准教授 (90636002)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 図書館 / 空間認知 / 公共施設 / 空間戦略 / 注視行動 / 自由歩行 / 探索歩行 |
Outline of Annual Research Achievements |
海外実態調査が困難であった今年度は、調査計画を変更し、後半に行う予定であった利用者の眼前に空間として何が生起したかを探る空間認知調査を先行して実施した。 具体的には、A)建築家による特徴的な空間を持つ図書館(ぎふメディアコスモス)、B)民間事業者による新しい図書分類を用いた図書館(多賀城市図書館)、C)従来型の図書館(仙台市泉図書館)に対してアイマークレコーダーによる空間認知調査を行った。 調査では、自由歩行時と実際に本を探す探索歩行時で空間認知の仕方に差が見られた。低い独立書架を配置し、視覚的な広がりを持ったA図書館では、自由歩行と探索歩行で空間認知の仕方が大きく変化していたが、高い壁式書架に囲まれたB図書館や、グリッド状に規則的に独立書架が配置されたC図書館では、自由歩行と探索歩行、両者の注視対象の変化は少なかった。探索歩行で、A図書館では、探索歩行開始時は空間やサインから情報を得ていたが、書架周囲では配架表示を注視することで記号から情報を得ていた。一方、B図書館では記号による情報の取得は少なく、探索歩行開始時と書架周辺の両方で、高さや配置の異なる書架のまとまりから情報を得るための注視がみられた。対照的に、C図書館では探索歩行開始時は案内図から、書架周辺では配架表示や著者名表示からと、常に記号から情報を読み取っていた。 空間の構造によって、空間認知行動に大きな差が生まれることを確認出来たという事実から、一般図書館では記号的に扱われている行動が、新しい空間構造を持つ図書館では、異なる認識の下で展開されていることを具体的に把握した。設計側の空間戦略と利用側の空間認知相互の関係性を理解するための基本項目を絞り込むなど、今後の展開のために有用な知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、共有知の涵養や情報リテラシーの向上、多様性の担保といった公的価値を実現する拠点を社会に実装する方法論を論理化することを目的として、優れた公共図書館がどのようなプロセスを経てデザインされたか(①時間)、実際の空間や運営といった手段がどう整えられ働いているか(②型)、利用者の眼前に空間として何が生起したか(③景)を連携させつつ評価する。通常別領域にあるこれらの関係を読み解きつつ、社会を分断する圧力を調停する空間実装の戦略を解明することにある。 2020年度は、Covid-19の世界的蔓延の影響で、予定していた海外図書館の調査を行うことが出来なかったために、国内の図書館の調査に振り替え、空間認知調査(上述③景)の調査を中心的に展開し、空間認知調査方法の確立に焦点を当てることとした。 Covid-19の影響はあったが、関係各位の理解を得て国内の空間構造の異なる3つの図書館で、アイマークレコーダーを用いた空間認知に関わる行動実験を行った。空間を自由に散策する自由歩行とある特定の本を探索する探索歩行とでは、注視特性に大きな違いが表れ、その状況によって、図書館閲覧空間における空間戦略を整理することが出来ることが分かってきた。また、被験者相互での個人差はあるもののその調整の方法についてもある程度の目途を立てることが出来た。これらは、海外の図書館で実験を展開する時にも活用できる重要な手法と言える。その一方で、文字の理解が認知に大きく影響することが明らかになったことで、空間認知調査のためにはあるレベルの教養を持つ調査員の現地での調達が不可欠であることが確認できるなど、調査の制約条件などについても事前に明らかにすることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度海外調査を予定しているが、依然Covid-19の影響が顕著でもあり、その実施には難しい部分もある。そこで、IFLA、各国の図書館関連協会、各国の建築家団体についての情報収集を中心とする背景調査、並びに、予定対象図書館の平面図の入手、建設に関わるプロセスなどの時間データの入手などを行う。具体的には2021年前半は、以下の2つの調査を展開した上で、2021年度後半、もしくは2022年度から、海外の対象に対する訪問調査を行い、本研究の目的として掲げた、①時間・②型・③景の評価により、社会を分断する圧力を調停する空間実装の戦略を解明する。 2021年度前半1(国際的な文脈における図書館施設の在り様)関係団体に関する情報整理、最近の動向の調査、さらには専門家へのヒアリングなどを通して、その背景を再度理解する。 2021年度前半2(空間型の整理)設計図書を元にして図書館内部の閲覧空間ならびに周辺の都市空間の関係を示す空間構成をモデル化することを通じて、各図書館の空間型を理解し、またその展開のあり様についても整理を行う。 2021年度後半から2022年度1(海外訪問調査)本計画の主眼である海外における優れた図書館の状況について、実際に訪問しながら、その詳細について調査・分析する。 2021年度後半から2022年度2(総括)2020年度の結果と合わせて全体を総括する。
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