2020 Fiscal Year Annual Research Report
Research on automatic vertical landing method using the flat spin of a fix-wing UAV
Project/Area Number |
20H02356
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
東野 伸一郎 九州大学, 工学研究院, 准教授 (40243901)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フラットスピン / UAV / 垂直着陸 / 自動着陸 |
Outline of Annual Research Achievements |
如何にしてフラットスピンに入った後の固定翼UAVの降下速度や経路を制御して,ピンポイントに所望の地点に安全に着陸させるのか,という課題についての研究を重点的に行った.しかしながら,これをすべて飛行実験によって進めることは効率的ではないと思われるため,風洞実験や飛行実験で得られた空気力データを利用して,フラットスピン中の空気力のモデル化を行い,シミュレータを開発することを目指した.ただし,風洞実験によるデータではシミュレータの空気力モデルとして,その精度に限界があり,飛行実験によって取得したものが最も信頼性が高い.一方では,飛行実験において運動データの取得は比較的容易であるものの,機体姿勢がほぼ水平のまま回転しながら鉛直下方に落下するフラットスピン中の降下対気速度や迎角・横滑り角を測定することは容易ではないという問題があった.このため,RADS(Retractable Air Data Sensor)と呼ぶ装置を新たに開発し,フラットスピン降下中の対気速度および迎角・横滑り角を測定することに成功した.RADSは,ピトー静圧菅や迎角・横滑り角測定用のベーンと超小型ロータリーエンコーダを取り付けた長さ70cm程度のブームを,フラットスピン中は胴体下方に向け,それ以外の時は胴体後方に折りたたむ(Retractable)ことができるエアデータセンサシステムである.得られた結果から,定常スピンについてはシミュレータ用空気力モデルの構築が可能となった. なお,飛行試験の過程において,フラットスピンの回転速度が低下し,場合によってはホバリングに近い状態になることが確認された.これは機体の種類を変化させたことによって観察された新たな現象であり,回転速度に与えるパラメータの同定と,その寄与度についてさらに研究する必要性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
シミュレータの空力モデルを飛行試験結果から推定して構築する必要があるが,コロナ禍のため,飛行試験の開始が夏以降となったため,計画よりもやや遅れている.しかしながら,フラットスピン降下中の対気速度および迎角・横滑りを測定するためのRADS(Retractable Air Data Sensor)システムの開発に成功し,まだ数は少ないながらもフラットスピン中の対気速度および迎角・横滑り角を運動データとともに取得することに成功した.なお,飛行試験の過程において,おそらく機体の慣性能率の違いや,推力線方向のわずかな違いによってフラットスピン中の回転速度が低下することが観察された.これはこれまで観察されたことのないあらたな現象であり,場合によってはほぼホバリングに近い状態になることも観察された.もともと機体に装備されているモータの出力ではホバリングは不可能であるにもかかわらず,このような現象が確認されたことは,フラットスピン中の挙動を支配する未知の要因があることが明らかになった. RADSによって得られたエアデータと,運動データから定常フラットスピンについては空気力モデルの構築を行い,定量的な精度についてはまだ改善の余地があるものの,定性的にはかなりフラットスピンが再現できるシミュレータを構築した. さらに,フラットスピン中の降下速度低減のために,格納式ではない固定式のカナードについて検討を行い,風洞試験によってその効果を確認した.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,フラットスピン中の降下速度低減のためのデバイス開発と,効果的な利用法についての研究を進める.おもに風洞試験によってその効果を予備的に確認し,飛行試験によって実際の効果を確認する.風洞試験ではスピン回転を定常的に行わせることが困難であるため,予備的な確認となるが,通常飛行時の安全性を確認するためにも,省略することはできず,フラットスピン中の効果についても定性的には確認できると考えている. 同様に,降下経路の制御法について,RADSによるエアデータと運動データを非定常スピンについても飛行試験によって取得し,シミュレータの空気力モデルとして,昨年構築された定常フラットスピンに加え,非定常スピン中の空気力モデルについてはも構築する.飛行試験においては,定常スピンについても取得データを蓄積し,その精度向上を目指す.定常スピンおよび非定常スピンの両方が含まれる空気力モデルによって構築されたシミュレータにおいて,効果的な降下経路の制御法の設計を行い,飛行試験によってその有効性の確認を行う. フラットスピン中のスピン速度の変化に及ぼす要因として,これまでわかっていたパラメータに加え,新たな別の要因があることが,この1年間の研究で明らかになったため,その影響についてもパラメトリックスタディを行い,現象の解明を行う.また,うまく制御することによって,フラットスピンだけではなく,ホバリングに近い状態で降下させられる可能性もあるため,ホバリングによる垂直着陸の可能性も視野に入れながら,研究を進める.
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Research Products
(3 results)