2020 Fiscal Year Annual Research Report
Long-distance-flow visualization with sub-millimeter resolution by using background-oriented schlieren
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20H02359
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
水書 稔治 東海大学, 工学部, 教授 (80433910)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 匡則 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (60436342)
大屋 真 国立天文台, TMTプロジェクト, 特任准教授 (80399287)
峰崎 岳夫 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (60292835)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 背景型シュリーレン法 / 補償光学 / 大気じょう乱 / 後方乱気流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は,野外における流体現象の望遠可視化計測時の大気じょう乱による空間分解能の低下を,補償光学を背景型シュリーレン光学系に導入することで,野外における計測であってもサブミリメートルの空間分解能を達成する新しい野外実験手法を創出することである.
当該研究課題は,4項目のサブテーマに分割される.各サブテーマは更に小項目の研究課題に細分され,研究計画が構成されている.その小項目のうち,上記の目的達成に向け,実施初年度である当該年度では,1)大強度大気じょう乱を定量的に評価するための微小気流温度変化計測装置の設計・製作,2)到来角安定化光学系の設計・製作,3)強い大気じょう乱下における光波の波面補償を可能とする複眼型波面センサの設計・製作,など当該研究の基盤となる実験装置および計測法の確立に取り組み,社会情勢の影響を受けたものの概ね計画通りの進捗を得た.また,これら要素機器の単独での室内での予備実験をすすめ,上記1)および2)については,良好な結果を得た.一方,複数の要素装置を連接させ,得られた波面情報から可変形鏡を高速制御する制御プログラムの作成と予備実験の着手に至っておらず,一部で計画からの遅延が発生している.この遅延を取り戻すための工夫が次年度に必要である.
本研究課題に関する成果の公開は,原著論文は0件であるものの,国内学会発表4件(うち,招待講演1件)となった.このことから順調に成果の輩出ができていると評価する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は,次の4項目のサブテーマによって構成され,研究期間3年の計画である.「Ⅰ.大強度大気じょう乱の計測・評価・制御」,「Ⅱ.複眼型波面センサの創製」,「Ⅲ.サブミリメートル解像度BOS法」,および「Ⅳ.サブスケール実験」である.このうち,今年度(1年目)では,Ⅰ.,およびⅡ.の一部,ならびにⅢ.の一部を実施する計画であった.以下,進捗状況を具体的に述べる.
「Ⅰ.大強度大気じょう乱の計測・評価・制御」では,本課題の主たる対象となる大強度大気じょう乱を定量的に評価するため,大気じょう乱の指標である屈折率構造定数を計測する新たな手法と測定に取り組んだ.レーザシンチレーション法と極細熱電対を利用した温度構造定数の測定から接地境界層(地表に近い大気領域)で発生する大強度大気じょう乱の屈折率構造定数傾向の把握を達成した. 「Ⅱ.複眼型波面センサの創製」では,上記Ⅰ.で把握した大強度大気じょう乱によって光波が受けた波面ゆがみを補償(復元)するための基礎情報となる波面ゆがみを判定する波面センサの設計・製作を行った.特に大強度大気じょう乱を通過した光波の波面ゆがみは大きく,従来の波面センサ(シャック・ハルトマン型)では,測定範囲を逸脱するため,新たに「複眼型波面センサ」を考案した. 今年度では,上記Ⅰ.の結果に基づき,重要要素部品であるマイクロレンズアレイを設計・製作し,要求仕様に合致するものが得られた. 「Ⅲ.サブミリメートル解像度BOS法」では,BOS法の画像解析を高速化するための並列計算による解析アルゴリズムの制作を進めた.BOS法は流体現象の検知を現象発生前後での背景画像の変位量で評価する.そのため,準リアルタイム計測の実現を目標とする本研究課題では,解析の高速化が不可欠となる.一方,アルゴリズムの変更など,解析プログラムの大幅変更が必要となる.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は,計画に準じた研究進捗となるよう研究分担者と連携して進める.具体的には,以下の項目に重点を置く. 「Ⅱ.複眼型波面センサの創製」では,今年度に設計・製作した複眼型波面センサでの要素実験をすすめる.まず,計画からやや遅延している解析プログラムを第2四半期での実装を目指す.複眼型波面センサの解析手法は従来型センサと全く異なるため,構成するモジュール毎の動作確認を確実に検証する.解析プログラム全体の動作検証は,「Ⅰ.大強度大気じょう乱の計測・評価・制御」で,設計・製作した室内での大気じょう乱模擬実験装置を用いる.室内実験による精度検証は,年度内に終了させ,3年目に計画している「Ⅳ.サブスケール実験」に向けた問題点の抽出実験にフェーズを進める. 「Ⅲ.サブミリメートル解像度BOS法」では,当初計画から遅れが出ている並列解析による高速解析の実現を第2四半期までに目途を付ける.並列解析にはパーソナルコンピュタにGPUを導入した計算機環境を構築して進める.並列計算速度の高速度化の達成程度を検証しつつ,準リアルタイム計測の実現を目指す.一方,並列計算の効果は,扱うデータ構造,およびプログラム中のアルゴリズムの最適化が当初予想と反して図れない場合は,その原因と改善策を明確にする.その際は,BOS計測は従前のオフ・サイト解析(事後解析)で,以降の研究を実施する. 「Ⅳ.サブスケール実験」では,研究3年目に実施する実機を使った計測実験の予備実験を,「Ⅱ.複眼型波面センサの創製」および「Ⅲ.サブミリメートル解像度BOS法」の進捗を見つつ,第3四半期から取り組む.具体的には,実機実験(3年目)は,100N級ジェットエンジンの排気噴流とグライダによる翼端渦可視化計測である.本年度では,野外での計測に際して問題となる耐環境性の改善を目的として実施する.
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Remarks |
研究代表者の研究室ホームページ
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