2021 Fiscal Year Annual Research Report
A Study on Turbulent Frictional Resistance Reduction Method by Suppressing Turbulent Fluctuation Using Acoustic Streaming Radiation
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20H02379
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Research Institution | National Institute of Maritime, Port and Aviation Technology |
Principal Investigator |
川島 英幹 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (20450679)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻 義之 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (00252255)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 乱流境界層 / 流場制御 / 音響流 / 電極型剪断力計 / 乱流抑制 / 抵抗低減 |
Outline of Annual Research Achievements |
圧電材料基盤上に設置された振動子に高周波電力を入力することにより、圧電材料基板上に弾性表面波を発生させると、基板上に隣接する液体中に音響流を放射できる。これまで良く用いられてきた水中での音響流の発生方法は、ニオブ酸リチウム製圧電材料基盤上に双方向型のIDT回路を形成したSAWデバイスを用いることである。この方法では、圧電基盤の表面波音速が、水の音速に比べて速すぎることが原因で、壁面に対して67.5度の角度で音響流が放射され、音響流の壁面に対する垂直成分が、水平の成分より大きくなるたこと、またIDTが双方向型であるため、音響流がV字型に生成され、流速の水平成分は前後に同速となることが、境界層内の流れを制御する流場制御デバイスには適さない理由であった。 そこで、圧電材料に水の音速に近い表面波音速を持つBGOを採用し、発生する音響流の壁面に対する角度を30度程度となるデバイスを開発した。また表面波を発生するための回路に、単方向型の回路を採用することにより、音響流をほぼ一方向に放射することができるようになった。 試作したBGO型流場制御デバイスを用いて小型水槽内で音響流放射実験を行い、PIVにより、その流場を計測した。音響流の放射角は壁面に対して29.9度、電圧40Vの電力入力時に、流速の最大値は31.6mm/sとなった。また入力電圧と最大流速は、概ね比例することが確認できた。入力電圧の上下にほぼ比例して、放射する音響流の速度が変化する特性は、流場制御に用いるのに適している。 さらに、海水など、導電性のある液中で、櫛歯電極間での通電を回避する方法として、櫛歯回路上にコーティングする手法を考案し、SIO2でコーティングしたBGO型流場制御デバイスを試作した。 矩形型電極を用いた電極式剪断力計を試作し、流れ方向に対して矩形電極の角度を変化させた場合の、剪断力計測の評価を行い、良好な結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、計画していた複合材料型圧電材料を用いた音響流放射デバイスは、現段階では耐久性の点で課題が有ることが判ったため、水の音速に近い表面波音速を持つBGOを圧電材料として選択し、単一の圧電材料を用いたデバイスの試作をすることになった。BGOは、音響流を放射するデバイスとしての研究例がなく、結晶の方向なども、理論面から検討する必要があり、試作デバイスの製作にも試行錯誤が必要となり、予定よりも時間がかかってしまったが、最終的には良好な基本特性のデバイスの製作に成功することができた。また弾性表面波を発生させる櫛歯回路についても、通常用いられている双方向型に対して、音響流を放射するデバイスでは、いままで使われていない単方向型を採用したが、PIVにより単方向性の強い音響流を放射できることを確認できた。また電翼型剪断力計についても試行錯誤はあるが進んでおり、流れに対する角度を変化させた計測を行い、予測と大変良い一致が得られた。このようなわけで、当初の申請書における計画に対しては、やや遅れているが、安定して作動する流場制御デバイスと電極型剪断力計測装置の開発に成功し、PIV計測のための準備も整っているため、先行研究例のほとんど無い未知の領域においてデバイスの開発をしていることを考えれば、順調に進んでいるという認識を持っている。
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Strategy for Future Research Activity |
塩水等の導電性のある液中で櫛歯回路間の通電を防ぐためことができるSiO2コーティングを行ったBGO音響流放射型流場制御デバイスを用いて小型水槽において流場制御実験を行い、流場をPIVにより計測し、流場制御デバイスとしての基本特性を調査する。小型高速流路において、試作したこの音響流放射型流場制御デバイスにより、乱流境界層中に音響流を放射させ、境界層内の流れと音響流の干渉現象をPIV計測により詳細に調査する。 乱流境界層内の乱流による速度変動により物体表面上に発生する剪断力の変動を計測できる電極型剪断力計測器の開発を進める。 能動型乱流場抑制制御システムとして、乱流による速度変動の抑制制御による抵抗低減を実現できる電極型剪断力計測器と音響流放射型流場制御デバイスの組み合わせ方法や位置関係、制御ロジックについて検討する。その検討結果を基に、電極型剪断力計測器と音響流放射型流場制御デバイスを組み合わせた乱流場抑制制御システムの試作システムを設計・製作する。 試作した電極型剪断力計測器により、乱流境界層内の剪断力の時間変動を計測する。続いて、流場制御デバイスから周期的に音響流を放射させ、壁面での剪断応力がどのように変動するか計測する。さらに乱流境界層内において、音響流放射型流場制御デバイスから音響流を周期的に放射させて、流路壁面での剪断力の変動と音響流放射型流場制御デバイスに加わる抵抗の変動を計測する。計測結果から剪断力の変動と音響流放射の関係を解析し、抵抗低減を図れる制御ロジックを検討する。試作システムに導き出された制御ロジックを適用し、抵抗低減を可能とする制御パラメータを探索する。 また剪断力を計測し、音響流により流場を制御する状態でのPIV計測を実施し、制御ロジックと流場の変化、抵抗の変化の関係を解明する。
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