2020 Fiscal Year Annual Research Report
Study on External Shocks and Response Dynamics on Large Economic Networks with Applications
Project/Area Number |
20H02391
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
藤原 義久 兵庫県立大学, シミュレーション学研究科, 教授 (50358892)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
家富 洋 新潟大学, 自然科学系, 教授 (20168090)
吉川 洋 立正大学, 経済学部, 教授 (30158414)
相馬 亘 日本大学, 理工学部, 准教授 (50395117)
井上 寛康 兵庫県立大学, シミュレーション学研究科, 准教授 (60418499)
後藤 弘光 金沢学院大学, 経済情報学部, 講師 (60868610)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 社会システム / 経済ネットワーク / システミックリスク / 富岳コンピュータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では経済システムのネットワーク的な脆弱性に関する理論的なモデル化とその実証的な評価手法の確立を行う。現代では経済システムが接続を強めた結果、連鎖的な危機的状況が頻発しているため、その脆弱性は大きな研究課題である。一方、国内の企業とその間の生産に関わる関係性、すなわち生産ネットワークを含めた大規模な経済ネットワークを実データとして利用することが可能である。また、膨大な組み合わせにのぼるさまざまなシナリオにシミュレーションには富岳スパコンを含めた並列計算を行う環境が整っている。そこで、災害や疫病などの経済への波及効果、特に新型コロナウィルスの感染拡大にともなうロックダウンなどのマクロ経済への波及効果を評価する。また、生産ネットワークの背後にある資金の流れに内在する上流・下流・循環を定量化する数理的な手法を開発する。 具体的には、新型コロナウィルスCOVID-19がマクロ経済に及ぼす影響について、大規模経済ネットワークの実データならびに並列計算を用いてシミュレーションを行い、都市や地域のロックダウンがどのようにサプライチェーンを通じて相互に作用するのかを、生産ネットワークのモデルに国内約160万社のサプライチェーンのデータを用いて検証することに成功した。また、経済ネットワーク上でのものやお金の流れに内在する上流・下流・循環を定量化する数理的な手法を開発して、それを上の生産ネットワークや、近隣の地方銀行の入手金ネットワークに応用することを可能とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の研究成果を含めておおむね順調に進展している。 (1)新型コロナウイルスの感染拡大のため、多くの都市、地域、国が必需産業以外での経済活動を規制する「ロックダウン」を実施した。このようなロックダウンによって、多くの国において生産が著しく減少した。本研究は、複数地域におけるロックダウンがどのようにサプライチェーンを通じて相互に作用しあうのかを、生産モデルに日本の約160万社のサプライチェーンのデータを適用してシミュレーションすることで検証した。さらに、サプライチェーンの複雑なネットワーク構造がどのようにロックダウンの相互作用に影響するのかを分析した。その結果、ある地域におけるロックダウンの経済的影響は、その地域の上流性、域内循環の強さ、および他地域とのサプライヤーの代替性によって大きく左右されることを明らかにした。 (2)国内の地方銀行における網羅的な企業の全銀行口座間送金データを用いて、企業活動の背後にある送金の流れを世界で初めて解析した。送金ネットワークの構造が生産ネットワークの構造と似ていることを示した。特に、蝶ネクタイ構造とよばれる有向グラフの解析とホッジ分解という数理的手法により、蝶ネクタイ構造における送金の流れの上流・下流の位置ならびに、口座の正味の入出金の量と数と強い相関をもつことを発見した。さらに地域間の送金データを構成して、その非負値行列因子分解により、送金の流れ全体にはいくつかの主要な成分が地方内の複数の地域固有の送金・入金のパターンに対応していると解釈できることを示した。 (3)実体経済のエンジンともいえる生産には、くわえて労働と金融という重要な要素がある。労働については二重労働市場と賃金に関するフィリップス曲線の謎を解くモデルを構築した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度には、喫緊の課題である新型コロナウィルスCOVID-19がマクロ経済に及ぼす影響について焦点を一つ当てた。同様な研究は災害など他の外的なショック下にも非常に有用であることと考えている。今後はそのような外的ショック大規模経済ネットワークの応答ダイナミクスへの応用も行う。また、実体経済のエンジンともいえる生産には、くわえて労働と金融という重要な要素がある。労働については二重労働市場とフィリップス曲線の問題、金融については企業と銀行との信用ネットワークを対象として、それらについても、外生的ショックに対する大規模経済ネットワークの応答ダイナミクスの研究へ展開を行う。さらに、国内だけでなく、国際的な経済ネットワークへ研究を進展させる。
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Research Products
(44 results)