2021 Fiscal Year Annual Research Report
マルテンサイト変態の原子変位機構に着目した高温形状記憶合金の機能予測と創製
Project/Area Number |
20H02427
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松田 光弘 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (80332865)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤嶺 大志 九州大学, 総合理工学研究院, 助教 (40804737)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | マルテンサイト変態 / ハフニウム基合金 / バリアント / 自己調整構造 / 変態温度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では新規高温型形状記憶合金の開発を目指しており,本年度は以下の3項目について重点的に調査した。(1)Ti-Pd-Hf合金の微細構造とマルテンサイト変態挙動に及ぼすHf置換の影響: Ti50-xPd50Hfx(X=10~45at%)合金を作製した結果,Hf置換量の増加に伴いマルテンサイト変態温度が低下した。10~20Hf合金はB19構造を呈しており内部欠陥として,格子不変変形:{111}TypeI双晶,自己調整構造;{111}TypeI,<121>TypeII,(101)Comp. 組織が観察された。25Hf,40Hf合金ではそれぞれ室温にてB2構造を呈しており,これは微細なH相析出物および短範囲規則相の生成に起因したものといえる。(2)Ti-Ni-Hf合金マルテンサイト相の自己調整構造と結晶学的特徴: Ti50-xNi50Hfx(X=10~45at%)合金を作製した結果,Hf置換量の増加に伴い変態点は上昇した。25Hf合金組成まではB19’構造を呈し,格子不変変形:(001)Comp.双晶+積層欠陥であり,35Hf合金組成以上ではB33構造を有していた。特に25Hf合金組成以上では,モザイク状の組織を呈しており,自己調整の最小単位は1組の晶癖面バリアント同士がペアとなった形状であった。(3)2元系Ti-Hf合金の微細構造解析と組織形成機構の検討 Ti50Hf50合金およびTi75Hf25合金を作製し組織観察を行った結果,室温にてhcp構造にて数百nmの幅を有するプレート状バリアント組織を呈しており,さらにfcc相の存在も確認できた。これは加工誘起変態相と考えられ,今後詳細な解析を実施する。上記一連の研究成果について,研究論文1本(投稿中),国内学会発表:8件,学生発表受賞:2件など十分な結果を出すことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究2年目となる2021年度では,Hf元素に着目し,Ti-Ni合金,Ti-Pd合金および純Ti材に対してHfを置換した,Ti50-xPd50Hfx合金,Ti50-xNi50Hfx合金およびTi-Hf2元合金を用い,それらマルテンサイト変態点,格子定数,内部組織のバリアント解析など数多くの実験結果が得られた。また研究代表者(松田)が作製した試料を用いて研究分担者(赤嶺)が最先端の収差補正電子顕微鏡を用い,原子レベルでの結晶構造解析をはじめ,GPA(Geometric phase analysis)解析などを駆使して,バリアント界面でのひずみ分布を測定するなどスムーズに連携がとれた。これら結果として,研究論文1件(投稿中),国内学会発表8件(内学生受賞2件)に纏めており,多大な成果を上げることができた。そのため,順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度末(2月末)にようやく申請備品となるIn-situ引張TEMホルダーが納品されたことから,2022年度ではこれを用いて,応力負荷に伴うマルテンサイトバリアント界面特性についてリアルタイムでの動的観察により評価する。さらに引張試験を実施し,それら試料の内部構造やバリアントの変化を調査するとともに,引張サイクル試験や熱サイクル試験も行うことで,形状記憶特性向上のための考察を深める。一連の結果を研究論文として投稿し,高温型形状記憶合金開発のための材料設計指針となるよう取り纏める。またコロナウィルスも収まり次第,研究分担者(赤嶺助教)とこれまで以上に密に連携し,研究課題に取り組む。
|