2020 Fiscal Year Annual Research Report
不規則性が加速する固体内高速イオン伝導機構の解明と革新的材料創製への展開
Project/Area Number |
20H02430
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
臼杵 毅 山形大学, 理学部, 教授 (70250909)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾原 幸治 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 回折・散乱推進室, 主幹研究員 (00625486)
安仁屋 勝 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (30221724)
笠松 秀輔 山形大学, 理学部, 助教 (60639160)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イオン伝導性ガラス / 固体イオニクス / 量子ビーム / X線異常散乱 / 中性子散乱 / 構造不規則性 / 大規模量子計算 / イオン伝導経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、量子ビームを最大限に活用した元素選択精密構造解析実験と大規模量子計算シミュレーションを駆使することにより、ガラスマトリックス構造及びイオン拡散経路の構築過程を原子・電子レベルで完全に可視化することを目指している。2020年度は、(1)対象試料に対するガラス化進行過程におけるイオン伝導性および熱物性変化の精密物性測定、(2)元素選択X線異常散乱実験環境の整備、(3)大規模量子計算シミュレーション環境の整備に着手した。(1)では、グローブボックス用酸素濃度計、温度変調測定への拡張可能な示差走査熱量計、電極形成用スパッタ装置を導入し、メカニカルミリングによる研究対象材料の作製、及び得られた試料の精密電気伝導度測定、イオン伝導・電子伝導の分離、熱物性測定を実施した。(2)では、X線スペクトル分離用シングルチャンネルアナライザーを導入し、SPring-8のBL05XUビームラインにおいてピンクビームを用いたX線異常散乱実験環境の整備を進めた。さらに、これらと並行して(3)では、並列計算ノードを導入し、第一原理分子動力学計算環境の整備を行って、対象系に対する大規模量子計算に着手した。いずれにおいても、ガラス化進行に伴う高イオン伝導性の発現とそれに伴うイオン伝導発現に直結する複雑系精密構造の知見が得られつつある。これと同時に、不規則性とイオン輸送に関する理論的解釈の検討を開始し、精密構造情報と伝導性を関連づける理論の構築に着手した。これらの結果は、国内外の学会等で発表を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を推進する上で要となる試料作成・物性測定環境の整備とX線異常散乱実験環境整備が順調に進んでいる。また、各種量子ビーム実験データを用いた精密三次元構造モデリングおよび大規模量子計算環境の構築に着手し、イオン伝導性物質系における可動イオン周囲の構造情報や、ガラスにおける可動イオンの動的構造情報の抽出において重要な進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度中に、輸送特性の精密評価を進めながら、研究対象系に対する本格的な精密構造解析研究を実施する。メカニカルミリングにより伝導性を制御した試料に対するX線異常散乱実験等を行う。さらに、それらの精密構造データを用いた進化型三次元構造モデリングおよび大規模第一原理分子動力学計算を実施し、イオン伝導経路および可動イオンの動的構造の可視化に有効な解析手法を確立する。これと並行して、不規則性とイオン輸送に関する理論再構築を本格的に進める。得られた結果を取りまとめ、学会発表や論文発表を行う。
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