2020 Fiscal Year Annual Research Report
マクロ孔内自己充填による欠陥フリー・ナノ多孔質セラミックスの創製と有機物膜分離
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20H02431
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鈴木 義和 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (40357281)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 達 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (50267407)
阿部 浩也 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (50346136)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マクロ孔内自己充填 / ナノ多孔質セラミックス / 限外ろ過 / 有機物膜分離 / メソポーラスギャップ / ナノ八面体結晶重合体 / ソルボサーマル法 / X線CT |
Outline of Annual Research Achievements |
化学・石油関連産業は、産業全体の約30%超のエネルギーを消費しており、うち約40%(産業分野全体の約12%)が分離精製を目的とする蒸留プロセスで消費されている(NEDO, 2016)。同産業分野では、省エネルギー化を格段に進歩させるために、膜分離技術の研究開発が進められている。一般に、無機膜は有機膜と比べ機械的強度が高く、耐熱性・化学的安定性に優れている一方で、マクロ欠陥フリーの大面積膜の製造が困難であり、分離性能が不十分(膜透過速度が遅い、目的成分の純度が低い)という大きな問題がある。本研究は、多孔質セラミックスプロセッシングにおける「メソポーラスギャップ」を克服すべく、大面積・欠陥フリーナノ多孔質セラミックスを創製し、有機物の高効率膜分離への適用を目指すものである。2019年、我々は「階層型マイクロ・ナノ構造を有する多孔質材料」をソルボサーマル法で合成することに成功した。この階層型マイクロ・ナノ構造体をミクロン径レベルの貫通孔を有する多孔質セラミックス基材中に自己充填させることができれば、目標とする大面積・欠陥フリーナノ多孔質セラミックスを実現できるのではないかという着想を得た。この着想を実証するため、以下の3項目について4年間の研究を実施した。 (1) マクロ孔内自己充填による大面積・欠陥フリーナノ多孔質セラミックスの創製、(2) ソルボサーマル過程の液中その場観察による自己充填プロセスの可視化・定量化、(3) 大面積・欠陥フリーナノ多孔質セラミックス膜での有機物膜分離の実証 2020年度は、多孔質アルミナ基材上にCo3O4ナノ八面体集合体をソルボサーマル法によってコーティングすることでマクロ孔中への充填を行い、実際に、分子量100万のポリエチレンオキシド水溶液が濃縮できることを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度では、多孔質アルミナ基材へのCo3O4ナノ八面体集合体の自己充填に取り組んだ。細孔径が制御された円盤状の多孔質アルミナ焼結体を自作し、この多孔質アルミナ基材をCoCl2・6H2Oと尿素を水/エタノール混合液中に溶解した溶液中に浸漬し、マグネットスターラーによる攪拌下でソルボサーマル処理を行うことで、Co3O4ナノ八面体集合体を析出させた。これを比較的低温で熱処理することで、アルミナのマクロ孔にCo3O4ナノ八面体集合体を部分充填した構造を実現することができた。この多層膜を用いることで、分子量100万のポリエチレンオキシド水溶液を、約20%濃縮することに成功した。この成果の一部は日本セラっミックス協会年会で発表済みであり、新型コロナ感染症対策の一環として、一部の研究項目で内容の変更・延期を行ったものの、おおむね順調な進展が見られた。また、SPring-8でのX線CT法を用いて、Co3O4ナノ八面体集合体の内部構造の可視化にも挑戦した。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目以降には、より耐熱性・化学的安定性に優れたMgAl2O4系で同様のナノ八面体を実現できるようにプロセスを改良する。また、ソルボサーマル法以外に、エアロゾルデポジション法等による大面積コーティングの可能性を検討する。これらにより、分子量20万級のよりサイズの小さな高分子溶液の膜分離を目指す。
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