2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of novel metal oxynitride inorganic pigments preparable by safe materials and processes
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20H02439
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
片桐 清文 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (30432248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増井 敏行 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (00304006)
樽谷 直紀 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (60806199)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 複合アニオン化合物 / 金属酸窒化物 / 無機顔料 / 色材 / 固体窒素源 |
Outline of Annual Research Achievements |
無機顔料において、有害元素を含むもの従来型の材料から、安全な物質とプロセスで合成された材料への転換を求める機運が高まっている。しかし、その有力な候補となる金属酸窒化物材料においても解決すべき課題がいまだ多く存在する。そこで本研究課題では、研究代表者が開発した固体窒素源による金属酸窒化物合成法を活用し、さらに、カチオンとアニオンの組成や欠陥サイトの生成を制御することで安全な物質とプロセスで多彩な色を発現する新規金属酸窒化物系無機顔料の開発を目的としている。 前年度は、尿素を用いた様々なペロブスカイト型酸窒化物系材料の合成を試み、これまでに合成に成功しているLaTiO2N、SrNbO2Nに加え、SrTaO2Nを単相で合成する方法を新たに開発した。さらに尿素の量を調整することでSrTaO2NとSr1.4Ta0.6O2.9の固溶体をそのO/N比を制御して合成できることも明らかにし、得られた固溶体の色彩がその含有窒素量に応じて変化することを見出している。 2021年度は、新たにペロブスカイト型酸窒化物のSrTaO2Nとペロブスカイト型酸化物SrTiO3の固溶体の合成法の探索とその色彩評価を行った。目的とする固溶体ではABX3型構造のうち、AサイトがSrで共通であり、Bサイトを占める遷移金属についてTaとTiを混合する形となっている。Bサイト成分の前駆体は従来からゾル-ゲル法によって調製した酸化物ゲルを用いてきた。酸化タンタルゲルと酸化チタンゲルを別々に合成して混合し用いた場合は得られる酸窒化物の組成ムラが大きくなるが、タンタルとチタンのアルコキシドを混合して共重合させることで得られる混合酸化物ゲルを用いることで組成ムラの無い固溶体が得られることが分かった。さらに、Ta/Ti比を調整することで固溶体のO/N比が変化し、結果として橙色~緑色の間で固溶体の色彩が変化することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度当初に設定した目標通り、尿素を用いた様々なペロブスカイト型酸窒化物系材料の合成とその固溶体の合成ができた。さらに窒素源として尿素以外にもシアヌル酸やC3N4を用いた合成も可能であることを明らかにできた。また、固体窒素源を用いた酸窒化物合成においては、固体窒素源が還元剤としてもはたらくことから、BサイトのTi4+やNb5+などが還元され、一部がTi3+やNb4+などになることが明らかになっているが、これまでの検討において、合成時の反応系を開放系とするかあるいは準閉鎖系とするかによって、還元の程度が変わることも明らかにできた。遷移金属イオンの還元の程度も得られる酸窒化物の色彩に影響するため、酸化物との固溶体形成によるO/N比の制御に加え、遷移金属イオンの酸化状態の制御も同時に行うことで、所望の色を再現性よく得る合成法が確立されつつある。 よって、本研究課題は、概ね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに様々なLaTiO2N、SrNbO2N、SrTaO2N、BaTaO2Nなどのペロブスカイト型酸窒化物を尿素やC3N4を固体窒素源として用いることで合成できること、さらにこれらとSrTiO3などのペロブスカイト型酸化物との固溶体を合成できることを明らかにしているが、その色彩値は既存の無機顔料と比べて鮮やかさの面では必ずしも同等レベルには達していない。 よって今後は、より鮮やかに発色する金属酸窒化物を固体窒素源を用いて合成することに重点をおく。 さらに、得られた酸窒化物の色材としての各種評価も進めていく。具体的には、耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性の試験などを実施していく。
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