2020 Fiscal Year Annual Research Report
高性能な酸化物熱電材料の開発に向けた複合カチオンエンジニアリングの構築
Project/Area Number |
20H02443
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
萩原 学 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (30706750)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 熱電変換 / セラミックス / 複合イオン / 熱伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、価数の異なる2種類のカチオンからなる“複合カチオン”を金属酸化物半導体に導入することで、フォノン散乱の増強によって熱伝導率を大幅に低減し、中温(300℃程度)から高温(900℃程度)までの幅広い温度範囲で優れた特性を示す熱電変換材料を創製することである。令和2年度はまず、空気中での焼成が可能なn型の酸化物半導体であるマンガン酸カルシウムCaMnO3(CMO)に着目し、CMOのCa2+カチオンをイオン半径の近い(La1/2Na1/2)2+の複合カチオンで置き換えた化合物の合成を検討した。第一段階としてCa2+の全てを(La1/2Na1/2)2+で置き換えた新規化合物(La1/2Na1/2)MnO3の合成を試みたところ、固相合成法によってペロブスカイト相は得られるものの、室温で大気下に放置すると容易に分解してセラミックスの表面に炭酸ナトリウムが生じることがわかった。そこでCMOのCa2+の一部のみを(La1/2Na1/2)2+で置き換えたCa1-x(La1/2Na1/2)xMnO3を合成した。その結果、ペロブスカイト単相のセラミックスの作製に成功し、少なくともx = 0.2までの組成では大気下で放置しても安定であることがわかった。一方、組成分析の結果からは高温での焼成中にNaの一部が揮発していることが明らかとなった。そこでセラミックスと同じ組成の犠牲粉体を合成し、セラミックスを犠牲粉体に包埋して焼成したところ、Naの揮発の抑制によって化学量論組成により近いセラミックスが得られた。今後はこれらの材料についてセラミックス作製プロセスのさらなる最適化と熱電変換特性の評価を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の拡大によってキャンパス閉鎖や入構規制が続き、研究の開始からしばらくのあいだ実験を行うことが困難であったために当初予定していた材料合成の実験に遅れを生じた。一方で年度の後半に熱電特性評価装置を導入するなど、熱電変換材料を研究するための十分な環境が整いつつあり、今後の研究の加速が見込まれる。これらの状況に鑑みて全体としては計画がやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度に計画していた材料の合成に遅れを生じたため、令和3年度も引き続き材料合成に力を入れて研究を進める。これまでに合成可能であることがわかっているチタン酸系とマンガン酸系のペロブスカイト型酸化物に目的物質を絞り、これらの物質についてAサイトの組成や作製プロセス、微細構造と熱電特性との関係性を重点的に調べる。材料の合成と熱電変換特性の評価を並行して進めることでこれまでの遅れを取り戻すことができると期待している。
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