2020 Fiscal Year Annual Research Report
セラミックスの高温変形及び接合に対する通電効果の原理解明
Project/Area Number |
20H02444
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
森田 孝治 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主席研究員 (20354186)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金 炳男 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (50254149)
北薗 幸一 東京都立大学, システムデザイン研究科, 教授 (20321573)
小林 純也 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 助教 (20735104)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 通電効果 / 焼結 / セラミックス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、セラミックスの高温現象に対する通電効果の原理解明を通じ、1)セラミックスの通電焼結による高緻密(透明)化と2)金属/セラミックス異種材料の通電接合、に向けた要素技術の構築を目的に実施した。 まず1)の「通電焼結」では、パルス通電焼結装置を用いたセラミックス粉末の緻密化における通電効果の検証を行った。導電性の焼結ダイスとBN粉末でコートした絶縁性の焼結ダイスを用い、パルス通電焼結中のセラミックス粉末の収縮挙動の評価を行った。その結果、同じ温度プロファイルにもかかわらず、酸化物粉末(Y2O3、MgO、ZnOなど)の焼結挙動はダイスの導電性の有無に依存し大きく異なることが確認された。例えば、マグネシア(MgO)は、導電性のダイスでは、絶縁性のダイスに比べ100℃以上低温の800℃程度で緻密化できることが確認できた。 次に2)の通電接合では、ジルコニア(ZrO2)をモデル材に、セラ/セラ、セラ/金属の接合処理における通電効果の検証を行った。パルス通電下において接合処理を行った結果、ZrO2/ZrO2およびZrO2/金属(Ti,Mo,Taなど)の接合体を得ることに成功した。また、ビッカース試験によるき裂伝播挙動を評価した結果、接合界面に沿ったき裂伝播が認められないことから、良好な接合処理が実現できていると考えられる。特に、通電接合処理にともない、カソード側に酸素空孔の形成に起因すると思われる黒色化が認められた。このことは、酸化物の場合でも、一定の通電が生じており、パルス通電処理による物質移動の促進が接合処理に影響を及ぼしていると考えられる。 パルス通電処理により得られた上記の結果は、セラミックスの焼結や接合挙動のいずれに対しも、一定の通電効果が存在していることを示唆しており、その事が緻密化や接合などの高温現象を促進していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、所属機関外の研究者との連携で実施予定であったが、コロナ禍の影響も有り、相互の研究機関を訪問しての研究が困難な状況が生じた。代表者及び分担研究が互いの内容を実施することで研究を実施したものの、これにともない、共同で研究を進める課題に関しては困難な部分もあったが、概ね目的を達していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の結果をもとに、次年度では、1)パルス通電処理によるセラミックスの低温・高緻密(透明)化と2)通電接合による金属/セラミックス異種接合体の高強度化を目的に実施する。 まず、1)の通電焼結では、蛍光体などの機能性粒子を分散させたセラミックスのパルス通電処理による低温緻密化プロセスの高度化を目指す。優れた発光機能を有する蛍光体粒子を合成しても、蛍光体粒子自体が熱的に不安定である場合も多く、ホスト材となるセラミックスに分散させて緻密化する過程で熱劣化する可能性が大きい。そこで、高輝度照明の実現に向けては、ホスト材となる透明セラミックスを焼結する過程で、分散した各種蛍光体がホスト材中で分解・反応し、蛍光特性が損なわれないよう、低温・短時間で緻密(透明)化するための通電緻密化処理技術の検討を行う。具体的には、通電効果が確認されたY2O3、MgO、ZnOなどをモデル材に、1000℃以下での低温緻密化プロセスの確立を目指す。 また、2)の通電接合では、金属/セラミックス異種材料の接合に対する有効性が確認された。通電効果を活用した接合法の高度化には、通電効果の支配因子の理解に基づいた接合界面における反応相の制御が不可欠である。そこで、次年度は、同じくジルコニアをモデル材に、一般的な直流電界条件に加え、通電効果の有効性の検討を交流電界条件にまで拡張させ、反応相形成に及ぼされる極性効果の解明を実施する。具体的には、基準材となるZrO2/ZrO2に加え、ZrO2/金属(Ti,Mo,Taなど)の接合体を対象に、異種界面における反応相、およびその形成速度の極性依存性、ビッカース試験による界面構造と強度特性の関係などについて検証し、最適化を行う。
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Research Products
(10 results)