2020 Fiscal Year Annual Research Report
世界最長ボトルブラシポリマーの基礎物性解明と革新的材料開発への応用
Project/Area Number |
20H02454
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
山内 祥弘 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 独立研究者 (60709343)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ボトルブラシポリマー / 精密重合 / 相分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、ボトルブラシポリマーと呼ばれる超巨大高分子の研究を継続してきた。その結実のひとつとして、最近「長さと直径の精密制御された、世界最長のボトルブラシポリマー」を合成する手法を確立した。本研究では、長さと直径を独立に制御可能なボトルブラシポリマーの特徴を活かし、その形状と基礎物性・材料強度を系統的に関連づける。これに加え、世界最長のボトルブラシポリマーを利用した革新的材料の創出に挑戦する。
本年度の研究では、まず、ボトルブラシポリマー合成の鍵となるポリノルボルネン骨格の主鎖の合成を最適化した。原子移動ラジカル重合開始点を有するノルボルネンの開環オレフィンメタセシス重合の条件検討の結果、超高分子量のポリノルボルネン類縁体の分子量を精密制御するためには、ノルボルネン骨格周辺の分子設計およびその結晶化を通じた精製による重合系の高純度化が極めて有効であることを見出した。得られたポリノルボルネン主鎖の原子移動ラジカル重合開始点から多様な側鎖を導入することができることを確認し、ボトルブラシポリマーのダイバージェント合成法として論文発表をした。この方法で、「世界最長のボトルブラシポリマー」の合成も達成した。
一方で、合成したボトルブラシポリマーを高分子材料に利用する研究も並行して進めた。本年度は、ガラス転移温度が室温よりも低いソフトなボトルブラシポリマーをフィラーとしてガラス性高分子母材に埋め込むことで、得られる相分離プラスチックを強靭化することに成功した。ボトルブラシポリマーの側鎖が目的に応じて、長さや化学組成を選択することができる点に着目して材料設計し、ボトルブラシポリマーが、ガラス転移点、屈折率、サイズを調整可能なテーラメードなフィラーとなることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度見出した原子移動ラジカル重合開始点を有するノルボルネンの分子骨格が当初の予想以上に、超高分子量ポリマーの精密重合に有効であることが判明した。様々な構造因子(長さ・直径)と化学的性質を有するボトルブラシポリマーの合成が可能になることを明らかにできたため、今後の研究に着実な進捗が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度、ボトルブラシポリマーの精密合成の技術基盤を確立した。次年度は、この合成法の適用範囲をさらに広げるモノマーの分子設計を検討する。加えて、精密重合したボトルブラシポリマーが形成する秩序構造に着目して研究を進める。ボトルブラシポリマーの化学的性質および構造因子(長さ・直径)に応じた秩序構造を小角X線散乱に基づき系統的に検証する。
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Research Products
(4 results)