2021 Fiscal Year Annual Research Report
微小き裂先端の転位運動その場観察および解析法確立:金属疲労を克服する
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20H02457
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小山 元道 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (20722705)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 大輔 久留米工業高等専門学校, 材料システム工学科, 助教 (50772498)
奥山 彫夢 木更津工業高等専門学校, 電子制御工学科, 助教 (50804655)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 金属疲労 / 水素脆化 / その場観察 / 結晶塑性有限要素法 / 元素移流拡散解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
微小疲労き裂進展の機構と支配因子を把握するため、以下の三点の課題解決を目的とした。(1) 疲労き裂進展は力学条件に敏感なため、「バルク試料」で負荷をかけながら、「転位運動をその場観察」する。(2) すべり面に沿うき裂進展の理解のため、転位組織形成に伴うき裂近傍の空孔量・分布を把握する。(3) き裂近傍の固溶元素拡散を力学計算を拡散と連成させて解析する。 本年度の実績としては、上記3課題に対して以下の実績を得た。 i)その場電子チャネリングコントラスト法の構築:昨年度に作製したマイクロCT試験片や治具を用いて、その場転位運動観察をすることに成功した。また、Ni合金を用いた変形中転位運動その場観察にも成功し、本手法の汎用性を確認した。さらに水素を導入した試料の変形中その場観察にも成功し、オーステナイト鋼の水素脆性き裂機構に関わる転位運動、変形を明らかとした。変形解析は想定していた。 ii) 結晶塑性有限要素法:昨年度に「空孔密度」の計算に成功した。本年度はき裂を模擬した鋭い切欠き先端近傍における疲労負荷中の空孔密度および転位密度、内部応力の計算をすることに成功した。 iii)元素移流拡散-有限要素法連成解析:昨年度は主に水素を対象に解析構築をした。炭素と転位の相互作用は一般に硬化現象を引き起こすが、炭素の硬化から外れて(デピニングされて)転位が動くと局所軟化する。これを模擬して、固溶原子による硬化およびデピニングによる軟化の効果を含む有限要素解析を行った。結果として”塑性域サイズの縮小”および”き裂先端の局所塑性ひずみの増加”が現れることを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記研究実績での記述通り、交付申請時に計画していた通りの研究進捗が得られた。これに関連する論文作成も進んでおり、順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、より複雑なラスマルテンサイト組織にその場観察を展開する。一般に、ラスマルテンサイトでは電子チャネリングコントラスト法による転位組織観察が容易ではないので、通常の二次電子線観察と、その後のEx-situによる電子チャネリングコントラスト法観察を合わせることで解析する。また、ここで得られた転位組織やき裂進展経路などの観察結果を、結晶塑性解析による空孔密度分布と対応付けて考察することで、空孔に由来する疲労き裂進展メカニズムに迫る。また、水素脆化についてもデピニングを考えることで従来知られる”塑性域の縮小”および”局所塑性ひずみの増大”を再現できることが明らかとなった。この成果を受けて、硬化およびその後のDepininngに基づく水素脆化機構機構提案の端緒を得るべく、有限要素法および元素拡散解析の錬成解析を継続する。
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Research Products
(17 results)