2021 Fiscal Year Annual Research Report
Research on nitrogen dissociation mechanism and atom dynamics for Lithium alloys
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20H02465
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
宮岡 裕樹 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 准教授 (80544882)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
圓谷 貴夫 熊本大学, 大学院先導機構, 助教 (00619869)
礒部 繁人 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (10564370)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 構造・機能材料 / 化学物理 / 物性実験 / 電子顕微鏡 / 理論計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,Li合金及びNa合金を用いた「活性窒素」生成/利用技術について,特に,窒素分子解離能とその発現メカニズム,アンモニア合成特性を実験的及び理論的アプローチにより理解することを目的とした。 Li或いはNaと14族元素の二元及び三元合金について,メカノケミカル法及び熱化学法を用いて単相試料を合成した。また,比較試料として市販の高純度水素化物も用意した。これら試料について,X線回折測定及び核磁気共鳴分光を用いたキャラクタリゼーションを行った。Li化合物について,熱重量分析及び質量数分析装置を用いた窒素解離及びアンモニア合成特性の評価を行った。Na合金については,水素-窒素混合ガスを用いたアンモニア合成触媒特性評価を行った。 Li-14族合金及びLiHの窒素解離能とLiの化学状態に明確な相関性が見いだされ,金属的なLiを有する合金ほど低温で窒素解離が可能であることが明らかになった。また,Li三元合金を用いることで,アンモニア合成における繰り返し特性が向上することがわかった。 Li-Sn合金表面における窒素分子の解離機構を解明するために,面心立方構造を有するLi22Sn5合金の(111)面のスラブモデルを構築し,分子動力学計算を実施する際に必要な原子相の膜圧と真空層の厚さに関する最適条件の探索を第一原理計算手法により実施した。 イオン的なLiを有するLiHは,窒素解離温度が合金に比べ高いものの,窒素と水素を順に反応させる二段階プロセスでアンモニア合成が可能である。本反応において,反応中間体の凝集を防ぐために化学的に安定な物質を混合することで,ほぼ100%の反応率を達成し且つ効率的にアンモニア合成が可能であることを明らかにした。 Na合金を触媒として用いたアンモニア合成が可能であることを明らかにし,その触媒能と合金の熱力学的安定性及びNaの化学状態の相関性について議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画に従い,種々のLi合金及びNa合金を合成し,熱分析,相同定,化学状態分析等を行うことで,窒素解離特性及びアンモニア合成特性の評価を行った。得られた系統的な結果を基に,Li化合物の窒素解離能の制御因子やNa合金のアンモニア合成触媒能と物性の相関性について議論を進めた。 Li-14族二元系合金におけるアンモニア合成特性の系統的研究により得られた知見を基に,Li-14族三元系合金へ展開し,窒素解離能やアンモニア合成特性の改善に着手した。試料合成,窒化,アンモニア合成,再生処理等は,広島大学及び北海道大学で分担して実施した。また,LiHを用いたアンモニア合成について,効率的な反応制御方法を見出し,この研究成果に関するプレスリリース,特許出願を行った。 Li-Sn合金の窒素解離能を理解することを目的とした理論計算について,具体的な計算に必要な最適条件の検討を進めた。また,実験的なアプローチとの比較を意識した具体的な研究手法や方向性について研究分担者らと議論した。 各研究分担者とは年に数回オンラインにて研究打合せ,報告会等を実施することで密に連携を取りながら研究内容の共有や今後の方針の決定を行った。また,得られた研究成果について,国内学会,国際会議等で発表を行った。 以上のことから,研究計画は概ね予定通り遂行され,且つ得られた成果を基に新たな関連研究にも着手しており,当初の計画以上に進展があったと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を基に,アルカリ金属(Li,Na)合金及びその他関連試料(Li-他元素合金,多元系Li合金等)の合成を行う。また,理論計算グループと連携し必要に応じて薄膜や単結晶試料の合成も試みる。得られた試料については,熱分析を用いた窒化特性等の評価を行うと共に,X線回折測定を用いた生成物の相同定を行う。また,走査電子顕微鏡(SEM)や透過電子顕微鏡(TEM)を用いた生成物の観察,核磁気共鳴(NMR)や光電子分光(XPS)を用いた試料中アルカリ元素の化学状態分析等を行う。バルク試料については,FIB(Focused ion beam)加工を用いた断面電子顕微鏡観察及びエネルギー分散型X線分光(EDS)を用いた元素分布の調査を行い,粉末で得られた結果と比較し,合金中のLi原子の拡散ダイナミクスについて議論を行う。また,Li化合物やNa化合物を用いたアンモニア合成特性の評価を行うと共に,その制御因子についての調査を行う。 理論計算については,これまでに準備を進めてきたLi-Sn合金表面と窒素分子の反応プロセスに関する分子動力学計算を実施する。得られた結果を実験データと比較し,窒素解離能発現メカニズムについて議論する。必要に応じて実験グループと連携して効率的且つ実質的な研究を進める。 効率的に研究を遂行するため,研究打合せ及び成果報告会を年に数回実施し,研究内容の共有や今後の方針について議論を行う。本研究期間で得られた成果をまとめ,学会発表を積極的に行うと共に,論文として科学系学術雑誌へ投稿する。また,知的財産としての価値が認められると判断される成果については特許出願を行う。
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Remarks |
・新聞発表:「水素化リチウムを利用した常圧アンモニア合成法を開発~貴金属触媒を利用しない高効率な反応制御技術を確立~」,2022年2月5日,https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/69059 ・学会発表における受賞:3件 (水素化物に関わる次世代学術・応用展開研究会,水素若手研究会)
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