2021 Fiscal Year Annual Research Report
Improving the corrosion resistance of carbide-reinforced martensitic steels via dealloying
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20H02472
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山中 謙太 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (30727061)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 鉄鋼材料 / マルテンサイト / 炭化物 / 腐食摩耗 / 組織制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、Fe-16Cr-3W-2Cu-1C (mass%)合金を基本組成として、さらなる高硬度化(耐摩耗性の改善)を目的に合金組成と熱処理条件の最適化について検討した。合金組成については、本合金において形成する炭化物がCrを多く含むM23C6タイプであること、マルテンサイトの強度はC添加量に大きく依存することを踏まえ、CrおよびCの添加量の影響を調査した。高周波誘導溶解炉を用いて組成を系統的に変化させた約1 kgの鋳塊を溶製し、均質化熱処理後、熱間溝ロール圧延により丸棒材を作製した。この丸棒材を供試材として、種々の条件にて焼入れ・焼戻し熱処理を行った。その結果、Cr添加量が高いほど硬度は低下する傾向を示したが、熱処理条件および添加元素量の最適化によりHV700を上回るVickers硬度が得られることを示し、高速度工具鋼の粉末冶金材と同等の高硬度が得られる合金組成・製造条件をラボレベルで特定した。また、走査透過電子顕微鏡(STEM)を用いた組織観察およびSTEM-EDSによる元素マッピングを行い、焼戻し熱処理において炭化物とともにCu粒子がマルテンサイト組織にナノ析出することを見出した。なお、2021年度は外注にて大型試料の作製を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により年度内の製造・納品が困難であることが判明したため、次年度への繰越を行った。 一方、焼入れ後のFe-16Cr-3W-2Cu-1C合金においてJ-PARCのiMATERIA (BL20)にて中性子回折測定を実施し、相分率とマルテンサイト相の転位密度をそれぞれRietveld Texture解析とConvolutional Multiple Whole Profile法によるラインプロファイル解析を用いて評価した。焼入れ温度が高い場合には残留オーステナイトが増加したもののマルテンサイト相の転位密度は高くなることを示し、焼入れ温度とVickers硬度の関係を中性子回折による定量的な組織評価を基に明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大の影響により当初予定していた大型試料の作製を年度内に実施できなかったが、基本組成の合金試料に関しては大型試料を用意でき、必要な評価を行うことができた。研究計画全体としては大きく遅れる事態とはなっておらず、予定した研究内容を実施できる見込みである。また、得られた成果について論文を発表することができたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2022年度は、前年度新たに特定した合金組成・熱処理条件における実機試作を行い、大型試験片が必要な耐摩耗性評価を中心に進める。その際、実機製造における課題を抽出し、製造条件をブラッシュアップする。また、得られた内容を整理し、論文投稿に繋げたい。
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